日本国憲法とMMT その3

今回は, https://note.com/headphone/n/n7e01be18a064?magazine_key=mc882bb098e33 の続きとして, MMTについて論じていきますね.

1 日本国憲法の前文

まずはこれを正確に引用します.

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの 子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢 を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意 し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国 民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者 がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この 憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅 を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚す るのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持 しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に 除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、 全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有するこ とを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないので あつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を 維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを 誓ふ。」

以上になります. ここではいくつか大切なキーワードがあるのですが, 一つだけ先取りすると「諸国民」という言葉になります.

2 MMTはグローバリズムもナショナリズムの肯定する

日本版MMTなる「殺人兵器」(なぜ私がこのような表現をするかは, 今後の投稿で書かれるかもしれないが, 少なくとも, 日本版MMTは排外主義的ナショナリズムを助長する考え方が強い上に, 資本家優遇措置なのです, とだけ述べておきますね)のせいで, このタイトルに忌避感を覚える人もいるかもしれませんが, 少なくとも, 学術論文的な正確さをMMTに求めるのならば, このタイトルは肯定的に捉えられる必要があります. どういうことか説明しますね.

「我々は, 貨幣制度を公共目的追求のために使わなければならず, その結果として誰もが個々の私的な目的をある程度追求できるようになる. 我々は, 互いに助け合うために, 共に貨幣を使うことができる.

我々は, 自立すべきだと言っても, それは対外強硬主義的な意味で言っているわけではない. 主権通貨は国家的なものである. 裕福な国は(他国を支援するために)国境を越えていく能力がある. 貧しい国には, それは無理かもしれない. しかし, それらの国も主権通貨を有していれば, (その能力の限りにおいて)自立した国家運営を行うために, 自らの貨幣制度を利用することができる.

裕福な国, とりわけ国際準備通貨を発行する米国のような国は, それ以上のことをしなければならない. 他国を支援することは, 我々の責任である. そのことが, 我々をよりよき人間にする. そのことが, 我々の国をよりよき国にする. 我々は, 共によりよき世界を作ることができるのだ」Wray, L. Randall(2015), Modern Monetary Theory; A Primer on Macroeconomics for Sovereign Monetary Systems 2nd edition, Basingstoke : Palgrave Macmillan. p.292(島倉原監訳・鈴木生徳訳『MMT 現代貨幣理論入門』, 東洋経済新報社, 2019年. 邦訳523ページ.)

3 やはり日本国憲法とMMTの世界観は一致している

察しの良い方は, この引用を二つ見比べるだけで理解していただけるだろうが, 念のために解説を試みますね.

まずはこの文章です.

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚す るのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持 しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に 除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、 全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有するこ とを確認する。」

キーワードは, 諸国民という言葉にあります. これは少なくとも二つの意味で取れると言うことに気づいていますか?一つは, 日本国民の様々な国民という意味です. つまり様々な日本人ということですな. もう一つの意味が決定的に重要なのですが, 諸国の国民という意味であります. つまり, 世界における国家の国民ということです. 要するに諸国民という言葉は, 人間全体を, 国家というレンズで表現していることになるのですね.

またこの段落も決定的に重要なことを述べています.

「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないので あつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を 維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを 誓ふ。」

どうですかこの表現!どうしてここからナショナリズム(排外主義的要素を持たざるを得ないもの)が勃興しようか?それはあり得ないのである. この表現の精神はインターナショナリズムであって, 断固としてナショナリズムではないのですね.

この二つに対応するMMTの記述がどこにあるか...引用を再掲しましょうか!

一つ目の精神は...

「我々は, 自立すべきだと言っても, それは対外強硬主義的な意味で言っているわけではない. 主権通貨は国家的なものである. 裕福な国は(他国を支援するために)国境を越えていく能力がある. 貧しい国には, それは無理かもしれない. しかし, それらの国も主権通貨を有していれば, (その能力の限りにおいて)自立した国家運営を行うために, 自らの貨幣制度を利用することができる.」

ここでいう主権通貨とは, 国家の意思として, 政府によって設定された貨幣を, 納税のための唯一の貨幣として認定することで, その国家において流通させるように仕向けた貨幣です. それはともかくとしても, 似てますでしょこれ!対外強硬主義的な意味ではないのです, 真なる自立というものは!

二つ目の精神は...

「裕福な国, とりわけ国際準備通貨を発行する米国のような国は, それ以上のことをしなければならない. 他国を支援することは, 我々の責任である. そのことが, 我々をよりよき人間にする. そのことが, 我々の国をよりよき国にする. 我々は, 共によりよき世界を作ることができるのだ」

これは, 他国を支援できないような国は貧しい国であるという主張を演繹する. 日本国家はこのような貧しい国であって良いのでしょうかね?

4 結論...大切なのは諸国民

我々人間は, 日本人であるとか, 何何人であるとかいう以前に, 人間なのです. ということは, 仮に国家が立派なものであったとしても, 人間であるという共通点を諸国民は忘れてはならないのですね.

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