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スタートアップとともに未来をデザインしていきたい──博報堂DYベンチャーズのビジョン

写真中:博報堂DYベンチャーズ 代表取締役社長 徳久昭彦
写真左:博報堂DYベンチャーズ 取締役COO/マネージングパートナー 武田紘典
写真右:博報堂DYホールディングス 戦略投資推進室 兼 「with Startups Topics」編集人 岸田泰幸

博報堂DYグループ(以下、HDYグループ)は、さまざまなベンチャー企業、スタートアップとの協業を積極的に推進しています。その取り組みをご紹介していくコンテンツとして「博報堂DYグループ with Startups Topics」を開設します。第一回となる今回は、設立から1年が経ったコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、博報堂DYベンチャーズの活動をご紹介します。

成長ステージに応じた最適な支援を

岸田 昨年5月に博報堂DYベンチャーズを設立し、7月にファンドを立ち上げました。「HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND」というファンド名にはどのような思いが込められているのでしょうか。

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徳久 ベンチャーキャピタル(VC)の第一の役割は、資金提供によってスタートアップのビジネスの成長を支援していくことですが、私たちはそれがすべてであるとは考えていません。テクノロジーの進化や新しいビジネスモデルは、私たちの生活や社会の未来をどう変えていくのか。スタートアップはそうした未来の創造に挑戦している企業であると思っています。私たちもパートナーとして一緒にチャレンジすることで、未来の創造を加速することができないか。ともに未来をデザインし、創造していくことがスタートアップを支援すること。それが私たちのミッションです。そんな思いをこのファンド名に込めました。

岸田 広告やマーケティングコミュニケーションを主な事業領域としてきているHDYグループにCVCを立ち上げることにはどのような意義があると考えていますか。

武田 社会や経済環境の変化にともなって、グループのビジネス領域は年々拡大しており、クライアントから求められるソリューションの幅も広がっています。そして、今後はさらに広がっていくと考えています。HDYグループでは、環境認識として、あらゆるものがデジタル化される「オールデジタル時代」が到来するとしていますが、このオールデジタル時代を乗り越えていくための新しい事業やソリューションは、必ずしも自社グループのみで生み出せるものではありません。オープンイノベーションの手法で、外部のパートナーとのコラボレーションによって新しい領域を切り拓いていくことが必要です。CVC設立はそのコラボレーション実現の一つの方法であると考えています。また、時間軸として短期ではなく中長期を意識しています。「明日」という時間軸ではなく、「5年後~10年後」といった少し先の未来の生活や社会を意識して活動したいと考えています。

岸田 博報堂DYベンチャーズの活動において、HDYグループらしさという観点で意識していることはなんですか。

徳久 博報堂DYベンチャーズというCVC単体で動くのではなく、HDYグループ全体と連携して動いていきたいと思っています。HDYグループには多様な専門性を有した人材が豊富にいますので、その知見やスキル、クリエイティビティを掛け算しながら活動していきたいと。ファンド名やロゴ作成は、HAKUHODO DESIGNやSIXといったグループ内のクリエイティブ会社に手伝ってもらっています。また、スタートアップとの連携のために「カタリスト」というグループ横断型の人材チームをつくりました。

武田 クリエイティブ、データマーケティング、メディアコンテンツ、事業開発の4領域の専門人材16人からなるチームがカタリストで、計10社のグループ企業から集まってもらいました。スタートアップの成長のステージは、会社によってまちまちです。ビジネスがある程度軌道に乗っているミドルステージ、レイターステージの会社もあれば、立ち上げからまだ日の浅いシードステージの会社もあります。そのそれぞれのステージに応じて、カタリストから最適な人材をアサインし、ともにスタートアップと向かい合っています。

投資対象は「未来にインパクトを与えられる会社」

岸田 投資対象領域や、検討の視点などはどのようにしていますか。

徳久 環境は変化し続けているので、どのようなテクノロジーやビジネスモデルが新しい価値創出に結びつくか誰にもわかりません。したがって、投資対象も領域を限定せず、幅広い分野に挑戦するスタートアップを支援していきたいと考えています。5年後、10年後の未来にインパクトを与えることのできるテクノロジー、ソリューション、ビジネスモデルをもったスタートアップであれば、基本的にすべて投資の検討対象となります。もちろん、投資の意思決定は厳格に行わせていただきます。

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武田 グループ連携の視点としては、大きく3つあります。1つめは、HDYグループが取引をしているクライアントやメディアに共同でテクノロジーやソリューションを提案できる会社。2つめは、HDYグループ自体のデジタルトランスフォーメーションやサービスの価値向上につながる会社。3つめは、ともに新しい事業をつくっていくことができる会社です。
加えて、時間軸としては先ほども申し上げた通り中長期的視点ですが、HDYグループにとっての意義とともに、我々がスタートアップの成長にどの様な貢献ができるのかについても大切な視点としてスタートアップの皆さんと対話することを大事にしています。
次に、ファイナンスの視点としては、ターゲット市場のサイズや競合の状況、市場における戦略や戦術に加え、それを実行するためのチーム体制や運営方針を重視しています。今回の新型コロナウィルスなどはまさにそうですが、ビジネスの前提が変わってしまうと、従前の戦略仮説が意味を成さなくなることは往々にしてあります。その際、経営者のビジョンがチーム全体に共有され一体感があれば、環境の変化への迅速な対応が可能となります。このため、ビジョンやミッションをチームに共有しながら組織を運営しているかなども視点として大事にしています。

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幅広い業種の企業に投資を実行

岸田 この1年間の投資実績をお聞かせください。

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武田 ほぼ月に1社のペースで、計8社への投資を決定してきました。エッジコンピューティングの技術を駆使してIoTインフラの社会実装を進める「Idein」、ドローンを活用したリモートセンシングを農業や建設業界に提供する「Skymatix」、リアル店舗向けのリテールソリューションを提供している「FlowSolutions」、マーケティングオートメーションやCRMツールの導入支援を行っている「toBeマーケティング」、金融機関向けのAI開発を手掛ける「milize」。以上の5社は、BtoB領域のスタートアップ企業です。

一方、BtoC領域の企業としては、大学受験生に広く活用されている学習管理アプリを手がける「Studyplus」、VTuberプロダクション事業を展開する「COVER」、アバターによるカラオケライブ配信アプリを提供する「UNBEREAL」の3社があります。

中長期的視点で、ともに未来をデザインしていくというコンセプトのもと、広告マーケティング領域に加え、幅広いビジネス領域に投資しています。

岸田 投資決定まではどのようなプロセスですか。

武田 まずはお会いしてお話をうかがい、初期の検討を経て、Q&Aセッションをさせていただきます。さらに、4名の当社マネジメントとの面談を経て、投資委員会で最終的な決定を行います。意思決定のスピードはおおむね2カ月くらいです。

徳久 重視しているのは、スタートアップの経営チームの皆さんとの対話です。ビジネスの成功は一朝一夕で実現できるものではないので、ともに中長期的な信頼関係をつくっていけるかどうかが重要なポイントとなります。また、スタートアップの経営者には胆力や苦難を乗り越える力が求められます。強い意志や思いがないと、新しい市場で勝ち残っていくことはできないからです。一方で、周囲の意見に耳を傾ける姿勢や、そのつど最適な戦略を選ぶ柔軟性も必要です。それらの要素を、対話を通じて確認させていただきながら、判断させていただくことになります。

武田 もちろん、私たちが見極めるだけでなく、私たち自身もスタートアップの皆さんから選んでいただける努力をする必要があります。

徳久 HDYグループは、日々の生活を営む一人ひとりの立場に立った「生活者発想」と並んで、「パートナー主義」をビジネスの理念としてきました。クライアントやメディアに選んでいただき、強いパートナーシップをつくっていくということです。その経験が、スタートアップの皆さんとの関係づくりにもいかされると考えています。

出資先企業とHDYグループの連携も進める

岸田 博報堂DYベンチャーズの出資先企業と、HDYグループ各社との連携の窓口を博報堂DYホールディングスの戦略投資推進室で担っています。連携を検討する際には、まずはスタートアップの状況を確認することが大切だと思っています。スタートアップは人や時間といったリソースが限られていますから、大企業側からあれやこれやと投げかけても対応できない場合があるかと思います。しかも、面と向かって出来ないとは言い辛かったりもするかと。ですので、まず我々がスタートアップの状況やニーズ、足りないものを把握させていただいたうえで、HDYグループのソリューションやリソースと掛け算することでお互いのビジネスが前に進む、そうしたアクションを探していきたいと思っています。具体的には、グループ社員の関連しそうな人たち向けに出資先に関する説明会を開いたり、個別のミーティングを行ったりしています。HDYグループ各社から、出資先企業に関する問い合わせも多数いただいているので、皆の関心の高さを感じながら活動しています。

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具体事例も出てきています。HDYグループの次世代型デジタルエージェンシーであるアイレップとtoBeマーケティングの協業については、ニュースリリースも出ています。今後もこのような連携を推進していきたいと思います。

アイレップ、toBeマーケティングと協業開始 ~Google マーケティング プラットフォームとSalesforce Marketing Cloudの連携によりOne to Oneマーケティングを推進~


徳久 テクノロジーを軸とした連携、データを軸とした連携、あるいはビジネスモデルの組み合わせなど、いろいろなやり方があるはずです。あらゆる可能性を追求していきたいですね。

岸田 最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

徳久 新型コロナウイルスのショックはまだ続いています。まずは、この状況をスタートアップの皆さんとともに乗り切っていきたいと思います。このコロナショックによって、デジタルテクノロジーの重要性と未来を切り拓く可能性があらためて認識されました。また、「FUTURE DESIGN FUND」というファンド名が期せずして大きな意味をもつようになりました。社会全体のデジタルトランスフォーメーションをともに推進し、ともに未来をデザインできるスタートアップ企業の皆さんとの出会いを引き続き求めていきたいと思います。

武田 マーケット環境だけではなく、生活者の暮らしや価値観が大きく変化しています。様々なサービスのオンライン化の進展やEC化率の向上、企業のデジタルトランスフォーメーションの加速、SDGsの中でもヘルスケア領域に関する生活者の意識の高まり、エンタメやコンテンツの新たな体験価値などに注目しています。厳しい環境下ではありますが、新たなビジネスの芽が生まれる局面でもあると言えます。博報堂DYベンチャーズとして、しっかり投資を継続していくことで、変化の兆しを適切に捉え、スタートアップ企業の皆さんとともに、未来の市場を創出できればと思います。

岸田 HDYグループでは、博報堂DYベンチャーズのように出資という形でスタートアップと連携している企業もあれば、R&D(研究開発)や新規事業などの領域でスタートアップと連携している組織もあります。今後も、HDYグループとスタートアップとのコラボレーションの取り組みをwith Startups Topicsでご紹介していきたいと思います。

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徳久 昭彦
博報堂DYホールディングス執行役員 兼 博報堂DYベンチャーズ代表取締役社長 兼 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム専務取締役執行役員CMO 兼 イノベーション統括 兼 イノベーション統括本部長

07.プロフィール_徳さんプロフィール画像_スクエア2

DACに2001年より参画し、CTOとしてアドテクノロジー開発や新規事業開発をリードし、ベンチャー投資を推進。現在は専務取締役CMOとして、研究開発とオープンイノベーション推進を担当。2011年に戦略子会社プラットフォーム・ワンを設立し初代社長に就任。東証一部企業メンバーズ等の社外取締役も歴任。博報堂DYホールディングスでは執行役員として、戦略投資領域とテクノロジー領域を担当。


武田 紘典
博報堂DYベンチャーズ取締役COO/マネージングパートナー 兼 博報堂DYホールディングス戦略投資推進室戦略投資グループGM 兼 経営企画局 兼 経理財務局

08.プロフィール_武田さんプロフィール画像_スクエア

博報堂DYホールディングス経営企画局にて、投資戦略立案、ベンチャー投資、M&Aを担当。また先端テクノロジー企業とのアライアンス及び新規事業開発を推進。当社グループ参画以前は、証券会社にてM&Aアドバイザリー業務に従事し、製造業・流通/小売・IT・人材サービスなど幅広い業種を担当。また監査法人にて法定監査を中心にデューデリジェンス・IPO支援業務を担当。2019年5月に博報堂DYベンチャーズを設立し現職に。


岸田 泰幸
博報堂DYホールディングス経営企画局事業開発グループGM 兼 戦略投資推進室 兼 博報堂経営企画局 兼 事業投資戦略室
with Startups Topics編集人

09.プロフィール_岸田さんプロフィール画像_スクエア

1998年博報堂入社。飲料メーカー・製薬企業などの広告・マーケティングを担当。その後、人事、秘書役を経てquantumに参画。quantumでは大企業とベンチャー企業によるオープンイノベーションの推進などを担当。2017年より博報堂DYホールディングス経営企画局。昨年より博報堂DYグループとCVC出資先企業との連携の窓口を担当。

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