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第5回:ヴィパッサナー瞑想とは

“ストレスを手放し、心を解放しよう!”シリーズの第5回です。
いままでは、“なぜ苦しみは生まれるのか”、“その苦しみから脱するためにはどうすればよいのか“。
その苦しみから脱することができるようになるのが「ヴィパッサナー瞑想」であるとご説明しました。

今回は、ヴィパッサナー瞑想とはどんなものなのか、どのようなことをするのか。
これをコップに入った濁った水を例にわかりやすくお話したいと思います。

心を浄化するためには

ストレスが高まったり、苦しんでいたりするときは、コップに泥水がいっぱい入った状態のようなものです。
私たちの心の中は、このコップの泥水と同じように、心の汚濁(不純物)で一杯になっています。

それも、コップの中の黒く濁った水が激しく渦を巻いて、動き回っているようなものです。
私たちの心は、汚濁で一杯になっていて、日々すごい勢いで動き回っています。

このような状態のコップの泥水を浄化するには、どうすればいいでしょう。

【浄化のステップ1】まずは鎮めること

コップを安定した場所にそっと置いて、揺らしたりせず、刺激しないように、そっと置いておくしかないですよね。
何もせずに、ただ注意深く、客観的に、泥が渦巻いている様子をただ観ているだけです。なにもしてはいけません。
しばらく静かに置いておくと、泥は下に沈み、上の水は少しずつ透き通ってきます。

そして、沈んだ泥が集まり出し、大きな塊になって、どんどん蓄積されていきます。

ただ、泥は沈んだだけで、泥の塊自体がなくなったわけではありません。
刺激されたり、揺らされたりすると、下に沈んでいた泥と上澄みとが混ざり合い、また濁り始めてしまいます。

心はすぐに、あちらこちらへとさまよい出します。
コップの水をすぐにかき混ぜられてしまいます。
とにかく、心を落ち着かせ、鎮めることが必要です。

【浄化のステップ2】新しい泥を生み出さないこと

せっかくコップを鎮めて、静かに置いておいても、新たに泥が入ってきたら、また濁ってしまいますよね。

新しい泥が入らないように、新しい泥を生み出さないように、常に注意していなければなりません。

私たちは、日々の出来事を通じて、心の中に新しい汚濁を作り続けています。毎日、毎日、新しい汚濁を作り続けているのです。
透明で濁りのない状態でいたいのに、現実はそうさせてくれません。
いろいろなことが起こり、いろいろな想いが発生し、心の中に汚濁を生み出し続けています。

常に、心の中に新しい汚濁を作り出さないことが重要です。

心の汚濁を作り出さないためには、「苦の車輪」が回り出すのを止めることです。

反応しないこと
新しい渇望や嫌悪・執着をつくらないこと


【浄化のステップ3】泥の塊を取り除くこと

コップが少しでも鎮まってくれば、泥は集まり、沈み始めます。
上の方の水は、透き通ってきます。

このコップの水を透明にするためには、泥が渦巻いている様子を静かに、なにもせずにただ待つだけです。
徐々に水が澄んできたら、コップの中が撹拌されないように、意識を集中し、泥の粒にフォーカスし、心を平静に保ちながら、客観的に観察し、泥の塊を取り除くことです。

この泥の塊を一つ一つを観察して見つけ出し、取り除くことができれば、徐々に泥はなくなっていきますよね。

心の汚濁を取り除くためには、反応しないことです。

・身体のどこかに必ず現れる感覚に気づくこと
・心は平静なままで、快・不快の反応をしないこと
・感覚が生まれては消えていくことを、客観的に観察すること

苦の車輪を止める


コップの中の泥を上から取り除いていくと、下に蓄積されて、凝り固まった泥の塊がどんどん浮かび出してきます。
凝り固まった大きな塊は、撹拌せずに、静かに取り除くのがだんだん困難になってきます。

大きな塊を取り出そうとすると、コップの中は撹拌され、水がかき乱されてしまいます。この時、心は大きく反応して、苦の輪廻が回り出してしまいます。心はかき乱され、嵐になることもあります。

かき乱されることを恐れると、大きな塊は取り出せません。
せっかく鎮めて透明になってきたのに、また大きくかき回されてしまいますが、これは浄化のステップを進める上で避けようがありません。

しかし、私たちは体験を通じて智慧としてしっています。
これは一時的なものであるとしっています。どうすれば取り除けるのかをしっていますので、恐れることはありません。
また鎮め、浮かび上がらして、取り除く。
徐々に泥の塊を減らながら、また浮かび上がらせ、取り除く。
この繰り返しをするだけです。

これを、コップの水が透明になるまで続けることができれば、コップの水は浄化されます。

このコップを横から覗いたり、上から覗いたりできれば、下に沈んだ大きな塊を見つけ、それを先に取り出すことができます。
そうすれば、早く簡単に透明にすることができます。

しかし、私たちの心のコップは、残念ながら横からは覗けないようです。
上から覗くだけしかできません。

上から覗きながら、一つ一つ順番に汚濁を取り除き、その下にある汚濁を、そして深く蓄積した固まった汚濁を浮かび上がらせながら、徐々に取り除くしかありません。

この固まった汚濁が渇望や嫌悪であり、固く凝り固まった汚濁が執着になります。心を強く結びつけている「心の縛り目」であり、これを広義での「サンカーラ」とも言います。

そして、目に見えないぐらい、細かで微細な汚濁や不純物も取り除いていかなければ、透明な純粋な水にはなりません。

そのためには、より透明になるように鎮めて、より集中力を高めることが必要になります。
一つの小さな対象物に心の焦点を合わせ、心がブレないようにしっかり固定できるようにならなければなりません。

より微細で繊細な感覚を感じられる観察力(気づき)を深め、反応しない、生み出さないことができるようになけばなりません。

これを繰り返し、奥深くに沈んでいる、目に見えない微細で繊細な汚濁や不純物であるサンカーラをすべて取り除くことができれば、心は完全に浄化されたことになります。

この浄化のステップを行うのが「ヴィパッサナー瞑想」になります。

透明な水

今回は、コップの濁った水を浄化することを通じて、ヴィパッサナー瞑想とはどのようなことをするのかを分かりやすく説明したつもりです。

実際に心を浄化するためには、ブッダの教えは深く、いろいろ学び実践しなければならない要素が多々あります。

次回は、心を浄化するために必要な3つの瞑想とヴィパッサナー瞑想を通じて、顕在意識と潜在意識への働きかけをご説明したいと思います。


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