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名札にまつわるエトセトラ

「〇×¥*ほつけしまぅかぁ?」

思わず「エッ?」と聞き返してしまう私。

話題が話題なので具体的には書かないが
先日とあるお店で飲み物を購入したときに
レジの店員さんが口に出した言葉が
全く聞き取れなかったのである。

店員さんは言い直してくれたので
何とか「袋をお付けしましょうか?」と
言っていることが分かった。

町のコンビニに行くとよく外国人の方が
レジに立たれていることがあるので、
多少聞き取りにくいなと思った経験は過去にある。

なので、この人もそうなのだろうと思い、
店員さんの胸にかかっている名札を見た。

するとそこには明らかに日本人の苗字が
書かれているではないか。

だが、その名札を見た時私は他の点で
気になってしまった。

その名札に貼られていた写真は
明らかに男性の姿だったのである。

そして目の前で私に対応してくれているのは
明らかに女性の姿をした方なのだ。

あまり見比べるわけにもいかないが
恐らくこの店で働き始めた時には
普通の男性の姿だったのが
何かのきっかけで女性の姿で働くことに
なったということであろう。

そして、見た目は女性らしくなったものの
声を無理に高くしようとするがゆえに
発声が通常と異なってしまい
私は聞き取ることができなかったのだ。

今の時代別に珍しいことではないし、
年末年始に家族で行ったタイでは
化粧品売り場の店員さん数名が
トランスジェンダーの方だったりもした。

私自身このような方に対して何も思わないのだが、
店に対して名札に貼られた男性時代の写真を
更新してあげるぐらいの配慮は
あってもいいのではないかと思った。

パッと見た限りではあるが、
その方の髪の毛はカツラなどではなく
ご自身の髪の毛で方ぐらいの長さまであった。

だが、写真の中の男性は短髪。

この髪の毛が肩まで伸びる期間、
人の髪の毛はだいたい1か月で1㎝伸びると言われるので
短髪から肩まで20㎝必要とすれば
20か月(=1年8か月)もの期間が経っても
写真は更新されないままなのである。

もちろん、雇う店側としても
更新する手間がかかることは承知しているし
もしかすると会社の規定上、写真の変更は
できないことになっているのかもしれない。

だが、接客業である限り私の様にその方の名札を見て
驚いてしまう人も少なくないと思うのだ。

顧客の驚きは間違いなくこの方にも
伝わってしまうであろうし、
中には好機の視線を向けてくる方もいるだろう。

何でもかんでもマイノリティの方に
あわせていく必要はないと思ってはいるが、
マイノリティの方が自分のアイデンティティを
意識してしまう機会をなるべく少なくする配慮は
大切ではないかと思うのだ。

最近では見なくなったが、
一時よく行き来していた会社の社員さんは
社員証の裏に
「新型コロナワクチン接種済み」と書かれた
カードを入れていた。

対応する人に対して安心感を与えるために
このようなことを書いているのであろうが、
ワクチンを接種するかどうかなど
本来人に公言する必要のない情報である。

中にはワクチンを接種していないという
選択をした人がいるはずだが、
その人たちにとっては都度自分のアイデンティティを
意識させられる表示だと思う。

組織に所属すると融通が利かないことが
あるのはある程度仕方ないというのは
長年の社会人生活で理解しているつもりだったが、
私は何だかモヤモヤした気持ちになってしまった。

そんな想いを抱えて帰社したとき
私はおもむろに胸に社員証を付けた。

そこには10年前に入社した当時の私がいた。

今と別に変らないようにも見えるが、
何だか社員証の写真も今の自分に変えたい気がしてきた。

昔の自分も嫌いではない。
だが、いつでも
今の自分が一番好きであり続けたいものである。


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