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「ぼん」という呼ばれ方

先日兄とLINEでやり取りをしていたときのこと、
兄から来たメッセージにふと懐かしい言葉を
見つけた。

「自分とこのぼんはまだサッカーに夢中なん?」

え?「ぼん」って何?と
思われた方もいるかもしれないが
私が子供の頃、父からよく「ぼん」と呼ばれた。

最初は父だけが言う独特の呼称なのかと思っていたが
父親の仕事仲間などが集まる場に行くと
どういうわけか「ぼん」という呼ばれ方が
デフォルトになっており、
彼らに呼ばれるときには「おい、ぼん」であった。

※ちなみに調べてみて初めて知ったのだが
これは京都・大阪独特の文化らしい。

このような呼ばれ方をしていたのは恐らく10歳ぐらいまでで
中学生になってからは名前で呼ばれることが
多くなったのだが、
兄とのやりとりで久々に「ぼん」という言葉に出会い
私はとても懐かしいと感じた。

そして、この言葉を自分の中で反芻していたとき
ふとある記事のことを思い出した。

半年ほど前にようこさんが書かれたこの記事である。

この記事でようこさんは「うちのチビ」という子供の
呼び方に対して書かれていた。

私も以前からこの言葉にしばしば出会い、
疑問を感じていた言葉だったので
とても面白くこの記事を読ませて頂いたのだが
私の中で「なぜ子供のことをチビというのか」
という疑問が魚の小骨のように引っかかっていた。

そこで今回出会ったのが「ぼん」というワードである。

前述したように私は子供の頃
父親やその周りの人たちからこの呼ばれ方を
日常的にしていた。

しかし、今の私は自分の子供に対して
そのような呼び方をしたことはない。

では一体なぜ私の兄は息子たちのことを
「ぼん」と呼ぶのであろうか。

それは彼らを呼ぶことに”照れ”のような感情が
あるからではないかと思うのだ。

私の兄は結婚はしているが、子供はいない。

それ故に、子供に接する時にはどうしても
”照れ”が出てしまうようなのだ。

子供と日ごろ沢山接している人なら
その子供に対してどのような呼び方をするのが
適切なのかを瞬時に判断できるだろう。

例えば、私の息子はサッカーをしているが
サッカーのチームで同級生の親と話していると
相手の子供をどう呼んでいいのか悩むことがある。

人によってはどの子の名前も呼び捨てで
気軽に呼ぶ人もいるが、
いくら親が呼び捨てで読んでいるからといって
第三者がその子を呼び捨てにするのは
何だか距離感が近すぎる気がするし
かといって〇〇君などと呼ぶのは
同じチームでプレイする同級生なのに
少し他人行儀過ぎる気もする。

これは”照れ”とは少し違うが、
このように案外私達は子供の呼び方に対して
気を使うものなのである。

そこで活躍するのが「ぼん」のような
呼び方なのではないだろうか。

「うちのチビ」と言う人が
自分の子供たちを「おい、チビ」と呼んでいるかは
あまりピンとこないが、
親がこのように呼んでいると
第三者からすれば「おたくのチビちゃんら」などと
呼びやすくなるはずである。

父親の仕事の人たちが集まる場所に行くと
私達が必ず「ぼん」と呼ばれたのは
その呼び方が最も気を遣わず気楽に
呼ぶことができる呼び方だったからである。

「うちのチビ」問題がこれで完全解消したわけではないが
少なくとも私ののどに引っかかっていた
小骨はこの気づきでスルリと落ちて行った気がする。

兄からのLINEを何気なく見過ごしていれば
このスッキリ感は得られなかったであろう。

やはり何事からも学ぶにはアンテナの感度調整が
大切らしい。

ちなみに書きながら気づいたのだが
私達は一卵性双生児であまりに見た目が似ていたので
どちらか区別がつかなくて「ぼん」と呼ばれていたのも
あるのかもしれない。

確かに「ぼん」ならどちらにも当てはまる。

子供の呼び方には人の色んな心情が隠れていると思うと
何だか面白いものである。





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