見出し画像

それは本当にあなたがすべきことなのか

昨日とある業者を訪問したときのこと、
ビジネスの話をしていると
ふと面白い話に出会った。

あなたはサッカーのワールドカップで
日本のサポーターが会場のゴミ拾いを
している姿を見たことがあるだろうか。

先日のカタールでの試合においても
日本人サポーターたちが会場のゴミ拾いをして
「来たときよりも美しく」している姿は
SNSをはじめ、色んなメディアでも
取り上げられ話題になった。

総じて私達はこの行動に対して
好意的な見方をしているし、
何となく世界的な世論もこの行動を
素晴らしいと賞賛してくれていると
私は思っていた。

だが、昨日訪問した業者の方曰く、
それは実は間違いだという。

その業者は東南アジアにも
工場を出されており、
私が今回お話していた方も
あちらでのビジネス経験も豊富な方だが、
一部の国ではあの行動を
「仕事を取る」行為と見ているというのだ。

どういうことかというと、
この行為は会場でゴミを拾うという仕事を
任命された人の仕事を取ることになり、
ある意味で越権行為の様に見えるそうである。

「すべてのゴミを取るわけじゃないから
作業員の方が楽になっていいじゃないか」

私達日本人はそんな風に思ってしまうが、
海外ではそうは捉えないらしい。

むしろ、作業する人に任命された仕事を
勝手に奪うことに憤りを感じる人も
一定数いるというのだ。

確かに、私が初めて東南アジアに行ったとき
最初に驚いたのが
ファーストフード店での対応であった。

空港でバーガーキングか何かを食べて
食べ終わった後にゴミを捨てて帰ろうとすると
店の中にいた店員が慌てて私のところに来て
そのトレーを奪っていった。

私はThank youと言いながら
その場を離れたのだが、
よく見てみると他の人は食べ終わったら
そのトレーをテーブルの上に置きっぱなしに
しているではないか。

むしろ、こうすることが彼らにとって
スタンダードであり、
ある意味でマナーなのである。

私はその初めての訪問からほどなくして
東南アジアのマレーシアに3年間
赴任することになったので
すぐにその習慣にも慣れたし、
”郷に入っては郷に従え”で
私自身も食べ終わったらそのまま置いておくように
あえて心掛けていた。

だが、日本から来る出張者の方を
同じような店に連れて行くと
頑なにそれを自分で片付けようとするのである。

子供のころから身に付けてきた感覚が
自然とそうさせるのであろう。

だが、彼らの行動の裏には
「自分で食べたものぐらい自分で片付けないのは
とても野蛮な行為だから日本人として手本を見せてやろう」

そんな心が透けているように
私には見えたのである。

前職を退職してから10年近くになり
今では雰囲気は多少変わったのであろうが、
前職ではどこか東南アジアの工場の方々を
少し見下すような風潮があった。

露骨に態度に出したりはしないが、
出張に来る人も「指導しに来ている」という
スタンスの人が多く、
お互いにグループ会社の社員として
対等な立場で話をしていたかと言われれば
必ずしもそうではなかった。

当時は今ほどグローバル化が進んでいなかったので
今はそんなことはないと願っているが
間違いなく当時はそんな風潮があった気がする。

行動の大小の差はあるものの、
これは例のゴミ拾いと同じ事象ではないだろうか。

ゴミ拾いをすること自体はとても素晴らしいし、
いかにも日本的な精神であると思う。

だが、それをすることが逆にその地域の
マナー違反になっていないかを
考えることも大切なのではないだろうか。

最近よく思うが、私達日本人は色んなことを
何でも自分でやろうと思いすぎている。

もちろんその精神を否定しているわけではない。

だが、その精神故に苦しい思いをしている人は
案外多いのではないかと思うのだ。

仕事でも自分のタスク以外に色んなことを
して周りに影響を与えることは素晴らしいが、
それがスタンダードになってしまうと
間違いなく苦しくなってしまう。

働き方改革でむやみな残業ができなくなり
仕事が追い付かないという人は多いが、
自分がしなくてはならない仕事に
どこまで時間を費やせているか
検証してみると、
案外余計なことに使っている時間が
多いことに気が付くであろう。

なんでもやってみる母さんが
QOLを上げるためには8時間労働は
過剰だとうったえられているが、
私も全く同感である。

ではそれを実現するためには
何が必要かというと、
まさに自分のタスクではない業務を
手放すということなのではないだろうか。

「そんなこと言っても人が足りないし、
人件費的が上がるから人も雇えないんだよ」

そんな声も出てくるであろう。

私が働く会社もまさにそんな状態である。

だが、こんな時こそその仕事が
そもそも必要なのかを見直すべきなのだ。

私達は過剰なサービスをしすぎだし、
顧客としてそれに慣れすぎている。

しかし、やめてみてもそんなに困らないものは
思い切ってやめてみると
驚くほど時間が作れるものでもあるのだ。

サッカーの試合会場でのゴミ拾いも
まさにその一つではないだろうか。

とても日本人らしい行動で素晴らしいし、
決して私自身この行動を否定したいわけではないが、
まさにこの行動に私達が今直面している
課題点のエッセンスが含まれている気がする。

自分のイシューは何か、
それを今一度考えなくてはならない時期は
間違いなく今だと私は思う。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?