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”コケにする”ってどういうこと?

昨日の記事では偶然会話の中で聞こえてきた
”ぶりっ子”という言葉について書いた。

また、先日は仕事の中で出てきた
”すり合わせ”という言葉についても
掘り下げてみた。

こうして言葉を掘り下げてみると
不思議なもので
言葉に対するアンテナの感度が上がるらしい。

昨日何気なく通勤中に見ていた映画で
とある言葉が耳に残った。

それは登場人物が発したこの言葉である。

「人のことコケにしやがって」

あまり日常で使う言葉ではないが、
アニメの世界ではしばしば目にするこの言葉。

意味合いとしてはコケという言葉が
バカであっても概ね意味は似たような
感じのニュアンスであろう。

だが、その登場人物は何らかの意図があって
「バカにしやがって」ではなく
「コケにしやがって」を選んだのだ。

きっと何か「コケ」に秘密があるに違いない。

今日はこの「コケ」について考察してみようと思う。

以前に「すり合わせ」について書いた記事では
候補として考えられる漢字と想像される意味合いを
いくつか挙げたが、
正直、この「コケ」については
頭の中に出てくる候補は「苔」しかない。

だが、仮に「苔」だとしても
別に苔に対してネガティブなイメージはない。

苔といえば、石や地面などの湿った暗い場所に
生えるようなイメージがある。

足元にあってそれを踏みつけられるという意味で
苔が使われたのも考えられなくないが、
それなら落ち葉でも土でもなんでもいい気がする。

むしろ山道を歩くときには苔が生えているような
場所を踏むことは滑って転倒したり
下手をすれば滑落の危険があるので
苔の生えたような地面には注意が必要なほどである。

しかも、苔自体は日本庭園などでは
風情を与えるものとして認識されているので
私達にとって苔は決してネガティブなイメージの
代表ではない。

なので、「コケにしやがって」の「コケ」が
どうにも「苔」というのはシックリこない気がする。

では一体何なのだろうか。

これ以上考えても候補が浮かばなさそうなので
今回はここで調べてみることにする。

すると一番上に出てきたgoo辞書には
このように書かれていた。

虚仮(こけ)に◦する
の解説
踏みつけにする。ばかにする。「人を—◦する」

goo辞書 より引用https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%99%9A%E4%BB%AE%E3%81%AB%E3%81%99%E3%82%8B/ 

なんと、全く想像していなかった字が
登場した。

虚仮と書いて”コケ”と読むらしい。

こんな言葉にはこれまで他に出会わなかったので
意味が分からないが、
虚構の虚に仮と言う字なので何かしら
ネガティブなイメージの言葉なのだろう。

せっかくなので上記のgoo辞書のリンクで
「虚仮」について調べてみると
このように書かれていた。

思慮の浅いこと。愚かなこと。また、その人。「—の一念
仏語。真実でないこと。外面と内心とが一致しないこと。
[接頭]名詞などに付く。
見せかけだけで中身のない意を表す。「—おどし」「—おどかし」
むやみやたらにすることや、そのような状態であることをけなしていうのに用いる。「—いそぎ」「—惜しみ」

goo辞書「虚仮」より引用https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%99%9A%E4%BB%AE/#jn-77657 

虚仮とは思慮が浅く愚かな様子を表す言葉で
字からも漂っているように仏教の用語から
来ている言葉らしい。

見かけばかり立派で中身がないことを
「こけおどし」などということがあるが、
この言葉の「こけ」はまさに「虚仮」なのである。

コケにしやがってという言葉は
人に対して反論するあまりきれいな言葉ではないが、
こういう何気ない言葉こそ
実は古くから使われる言葉が残ったり
する傾向にあるのかもしれない。

「ちくしょう!」なども仏教語であるし、
「業を煮やす」の業も仏教からきた言葉である。

私達が日常で使う言葉の中でも
何となく漢字が浮かびにくいものは
仏教語である可能性を一度疑ってみるのも
面白いだろう。

いかがだっただろうか。

「コケにする」という言葉について
考えてみるだけでも
案外色んなことが見えてくるものである。

これからも目に付いた言葉について
少し掘りさげて記事にしてみようと思うので
お付き合い頂けると嬉しい。

ちなみに、コケを考えたときに
「コケティッシュ」という言葉が
頭に浮かんできた。

昔兄が持っていたSPEEDのCDに
「コケティッシュDreamin'」という
曲のタイトルが載っていて、
「コケティッシュって何だ?」と
思った記憶が残っている。

その頃の私はどういうわけか
「苔ティッシュ」と頭の中で変換してしまい、
それ以降何度見聞きしても
「コケティッシュ」の正しい意味が
覚えられなくなってしまった。

改めて意味をおさらいすると
コケティッシュとは
”女性の動作、物腰に、男性をひきつけるような所があるさま。
動作、物腰が色っぽいさま”

を表す言葉らしい。
やはり、苔もティッシュも何も関係ない。

過去にAimerやAgnes bの読み方を間違ったたことで
フランス語にはいい思い出がないが、
今回もフランス語由来の言葉。

私はフランス語にはあまり縁がないらしい。

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