見出し画像

ダブルスタンダードもいいじゃない

先週土曜日は節分であった。

子供の頃には節分の日に母が炊いた
イワシの煮物がたまらなく嫌だった。

ショウガと一緒に甘辛く似たイワシは
イワシ独特のクセがあり
とてもご飯と合うように思えなかったからである。

子供の頃はご飯に合うかどうかが
おかずの価値を決める絶対的な指標である。

そのモノサシで言うとイワシの煮物は
価値が極めて低くなってしまうのだ。

だが、大人になった今ではイワシの煮物が
とても好きになった。

節分の土曜日にスーパーに行くと
沢山のイワシが並んでいたので
ついつい手に取りそうになってしまった。

だが、私のミッションはイワシを買うことではない。

恵方巻を買わなくてはならないのだ。

あなたは家で恵方巻を食べるだろうか。

正直言うと、私は結婚してから
恵方巻を食べるようになった。

私が子供の頃にはほとんど恵方巻などという
言葉は聞いたことがなかったし、
大学生の頃に当時の彼女と
節分の日に奈良でデートをしていたときに
奈良駅前で恵方巻が売られていて
「なんじゃこりゃ?」と思った記憶がある。

とはいえ、それももはや20年前なのだが
少なくとも20年前には恵方巻というのは
ポピュラーでなかったことになる。

ところが、この10年ほどで恵方巻は
市民権を獲得していった。

ちょうど同じようなタイミングで市民権を
勝ち取っていった仲間にハロウィンがある。

恐らくこれらのイベントは昔から細々と
日本の文化の中には溶けていたのだろうが、
商品を売る絶好のきっかけだということで
大々的に宣伝され、結果として知名度が上がったのであろう。

そんな流れに乗って、先週土曜日私は午前から
地元のスーパーに行き、
恵方巻を買いに行った。

この店では毎年恵方巻が売られている。

しかし、夕方になると人気の具材は
どれも品切れになってしまい、
残っているのはオーソドックスな巻きずしだけになる。

ここ数年はずっと平日の節分だったので
夕方以降にしか買いに行くことできず
オーソドックスな巻きずしを食べたが
今年は土曜日なので、買いに行くことができる。

見慣れたスーパーをいつもとは逆の入り口から入り
恵方巻が置かれているコーナーに向かうと
既に沢山の人が群がっていた。

そして、その中にお目当ての具を見つけた。

ヒレカツとエビカツである。

恐らく全国的にあると思うが
巻きずしの中にとんかつ(ヒレかつ)が入ったものと
長いエビカツが入ったものがあるのだ。

巻きずし界からすると邪道の様に見えるが
実際食べてみるとこれが美味しいのである。

正直言うと、私は今年の恵方がどの方角だとか
食べ終わるまで喋ってはならないというルールは
どうでもいいと思っている。

節分という歴史があるイベントを実感し
味わえればそれで充分だと思うからである。

だが、毎年節分の時だけ現れる
このヒレカツとエビカツの巻きずしは
私の密かな楽しみなのだ。

不思議なことにこんなにおいしいのに
節分の時以外にはお目にかかったことがない
このヒレカツ巻きとエビカツ巻き。

日ごろ巻きずしを食べることのない人も
恵方巻を楽しめるように開発されたものなので
もしかすると平常時にはあまり出てこないのかもしれない。

今年は無事これらの巻きずしをゲットして
妻の指示のもと
携帯アプリで方角を確認して
黙ってそれを味わった。

そうして食べ終わるとほどなくして
サッカーの試合に行っている息子を
迎えに行く時間となった。

私と同じくヒレカツ巻きを毎年楽しみにしている息子は
車に乗り込むなりそれを見つけて
早速食べ始めた。

「やっぱりコレ美味しいよな」と
ヒレカツ巻きを頬張りながら話す息子。

車を走らせながらなので方角など
コロコロ変わるし、
食べながらその日の試合の話を色々と
息子は話していたが、
何だかこれでいいような気がした。

とりとめのない記事なってしまったが、
何が言いたかったかというと
恵方巻のルールなどどうでもいいではないかと
いうことである。

純粋にヒレカツ巻きを楽しみにする節分も
それはそれでいいではないか。

ちなみに先日家族で神社に行った際に
娘に神社の参拝の仕方を教えると
「なんでそんな決まりがあるの?」と聞かれてしまった。

気になって調べてみると二礼二拍手一礼のやり方は
比較的最近になって定着したものらしい。

恵方巻の方向や食べ方はどうでもいいと思うが
神社の参拝はルール通りにしないと思ってしまう私は
ある意味ダブルスタンダードなのだろう。

だが、そんな矛盾も人間らしくていいではないか。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?