お寺のサステイナビリティ
昨日は家族で実家帰省の2日目であった。
初日に泊まって翌日帰るスタイルで
今回は特にイベントを入れていなかったのだが、
母から事前に「15日は午前中にお坊さんが来る」と
聞いていたので、
日ごろあまり聞く機会のない子供たちには
これもいい経験になるだろうと
お盆のお参りを一緒にすることにした。
私の実家には仏壇がある。
母方の祖父母があるお寺の檀家だったので、
その流れでいまだにそのお寺の方が
年に1~2回家に来てお参りをしてくれるのだ。
私にとっては子供のころからお坊さんが
時々家に来ることは比較的自然だったし、
お坊さんのお経もよく聞いてみると
何だか面白いので個人的には好きだった。
だが、家族を持った頃から
私の中でお坊さんのお経を聞くことは
殆どなくなった。
妻や子供たちの都合に合わせて帰省すると
どうしてもお坊さんが来るタイミングと合わないし、
小さい子供がいると読経の邪魔に
なりかねないからである。
なので、私にとっては数年前に父の17回忌を
行って以来のお経となった。
朝8時半~10時の間に来るという
事前情報に合わせて準備をして
まだかまだかと待っていると、
10時の少し前にお坊さんが来られた。
お盆の時期には毎回助っ人のお坊さんが
来られているので、
今回もそうだろうと思っていると
案の定、見たことのないお坊さんであった。
早速仏間に案内し、読経がスタートした。
間近で見るお坊さんに少し緊張気味の子供たち。
読経の違いはイマイチわからないが、
人によってはお焼香を回すようなスタイルもあるので
今回はどうなのかと構えていたが、
今回は特に何もなくシンプルな方式らしい。
10分少しで読経が終了し、母がお布施とお茶を
お出しした。
ここで少し話を聞いてみると、
このお坊さんは隣県から来られているらしく、
我が家がお願いしているお寺の住職とは
修業時代からの仲間らしい。
お盆のような繁忙期は助っ人として
8月1日から回っているらしく、
お盆最終日となる昨日は8軒もの家を
回ると仰っていた。
しかも、同じような助っ人は他にも3人いらして
4人で同じようなペースで回っているらしい。
この話を聞きながら私の頭は勝手に
電卓を弾き始めた。
8月1日~9日は1日8軒ほどはなく5軒と仮定し、
8月10日~15日が1日8軒とすると、
合計は93軒となり、これの4人分となると372軒となる。
お盆のお参りの場合、お布施の相場は
5,000~10,000円だそうなので、
間を取って7,500円/軒と仮定すると、
7,500円×372軒=2,790,000円
実際に読経されるお坊さんの取り分が
どの程度なのかはあくまで予想ではあるが、
檀家宅を訪問まですることを考えると
5000円/軒程度もらっていてもおかしくない。
そう思うと、お盆でのお寺の収益は
上記の金額の1/3で930,000円となる。
核家族化や若い人の宗教離れの影響で
経営が成り立たず廃止をやむなくされるお寺が多いと
聞くようになって久しいが、
このお寺の場合、年に2回のお彼岸とお盆で
同じような収益が入ると仮定すると、
約270万円となる。
もちろん、それ以外にも突然の不幸事などの
対応もされているので、
その収益がプラスで100万円と仮定しても
合計で370万円となる。
一見するとそれなりに収益があるように見えるが、
あくまでこれは売上額である。
現実的にはここから設備費や事務員の方の給与などの
固定費がかかるし、
光熱費などの変動費もかかってくる。
昔に父の法要でそのお寺には行ったことがあるが、
建物も昔ながらの日本家屋という感じで
メンテナンスが大変そうな印象があった。
そう考えると、1日8軒もの檀家を回っても
収益としてはとても限られたものだと
推測される。
今回来られた助っ人の方も恐らく年齢は
70歳になられるかどうかという感じだったが、
住職はもう80歳を超えられている方である。
体調に不具合がいつでもておかしくない年齢で
毎日読経や檀家周りをつづけ、
そしてお寺のメンテナンスまでされるのは
現実的に厳しくなってきているのでは
ないだろうか。
先ほど計算で372軒を回ると書いたが、
1割ほど+して仮に400軒の檀家がいるとしても
その数は恐らく年々減少していくであろう。
そう考えると、お寺の運営というのは
持続可能性の低いビジネスと言えるのでは
ないだろうか。
今回久々に私もお坊さんの読経を生で聞いて
その響きに新鮮さを感じたし、
子供たちにとってもいい経験であったと思う。
だが、このような経験も彼らが大人になるころには
なかなかできなくなるのかもしれない。
少なくとも彼らの生涯で何十回も経験するような
ことではもはやないだろう。
そう考えるととても貴重な体験を
彼らに提供できた気がした。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?