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夏休みの思い出

昨日から息子が友達の家に泊まりに行った。

同じ小学校に通うK君の家で
仲のいい友人3人とお泊り会をするらしい。

妻曰く、昨日塾から帰ってきて
意気揚々とK君の家に向かったそうである。

どうやらホラー映画を皆で見て肝試しをしたり
花火などをしたりするらしい。

教科書に書いた夏休みの過ごし方のような
そんな思い出を息子は作っているのであろう。

夏休みとはいえ、我が家の子供たちは基本的に
ずっと学童に行っていて
あまり夏休みらしいことはしてこなかった。

下の娘は今年も学童に通っているが
5年生になった息子の場合は、
そもそも学童に行っている友達自体が減ってきて
あまり楽しくないらしく、
今年の夏休みは家で過ごすことに決めた。

我が家の子供たちにとっては
学童の景色こそが夏休みの光景だったのが、
息子は今年から友人と過ごす時間の長い夏休みを
楽しむようになった。

彼にとって人生で初めて自由な
夏休みということになるだろう。

さぞ感じ方も違うのであろう。

そんな風に息子の気持ちを想像したとき、
ふと自分が子供の頃夏休みを
どのように過ごしていたのか気になり始めた。

一生懸命思い返してみるが、
毎年やってきて、40日前後も続いていたのに
不思議なぐらい夏休みに何をしていたのか
あまり記憶がでてこない。

近所に住む友人と空き地で遊んだ記憶もあるし、
児童館などに行ったような記憶もあるが、
それが夏休みの記憶だったのか
それとも普通の土日の記憶だったのか
定かではないのだ。

ただ、唯一私の中で明確に夏休みの思い出と
言えるエピソードが
カブトムシの思い出である。

私が生まれ育った場所は決して都会ではないが、
自然の山林が近くにあるような場所ではなかった。

なので自然のカブトムシに出会うことは
絶対にない状況である。

そんな私が初めてカブトムシと出会ったのは
小学校低学年の頃だったと思う。

黒くて大きい強そうな虫だという印象で
不思議と怖さは全く感じず、
私はそのカッコよさに瞬く間に惹かれた。

そして、それ以降毎年私はカブトムシを
採りに行くか買うかで与えてもらっていた。

採りに行く際には父方の叔父が秘密の場所に
夜に連れて行ってくれるのだ。

蒸し暑い夜の山に漂う樹液の酸っぱい匂いと
そこにうごめくカブトムシにとてもワクワクした。

買いに行くときには自転車で20分ほどの距離にある
ホームセンターに連れて行ってもらった。

小学生だった頃の私からしてみれば
この距離はとても長いものであったが、
カブトムシを買ってもらえるうれしさで
その距離すら楽しいと当時の私は思っていた。

こうして思い返してみると、
私の子供時代の夏休みの景色には
いつもカブトムシが中心にいた気がする。

だがその頃の私にはカブトムシの飼い方について
知識がなかった。

というより、当時正しいとされていた飼い方自体が
カブトムシを繁殖させたり、
長生きさせるという観点ではあまり
オススメできるものではなかったのだ。

なので、毎年カブトムシをペアで購入して
幼虫は生まれるものの、
それを立派な成虫に成長させることなく
夏が終わった頃に私のカブトムシライフは
終わっていた。

そんな私は今から7年ほど前にカブトムシに
再び出会った。

当時3歳だった息子は昆虫が好きで
近くの公園に遊びに行っていたときに
私は偶然前職の先輩に遭遇した。

その先輩は昆虫飼育を趣味にしてる方で
その方からカブトムシのペアを偶然の成り行きで
頂くことになったのだ。

そうして我が家にカブトムシがやってきて
名目上息子のために私が飼い始めた。

子供の頃の記憶が曖昧だったので
もう一度調べ直し、飼育し始めると
子供の頃には気づかなかったようなことを
沢山発見したりして、
昆虫飼育の楽しさを改めて実感した。

そうして、その年私はカブトムシのブリードに
挑戦することにした。

採取した幼虫を飼育ケースに入れ、
丁寧に育ててやると、
翌年には親虫を明らかに上回るサイズの
立派なカブトムシが数匹羽化した。

それがあまりに嬉しくて私はさらに昆虫飼育にはまった。

そして、今ではオオクワガタのブリードを
楽しむようになった。

私にとって夏は昆虫の季節。

残念ながら息子はそれ以降昆虫から興味を無くし、
今ではセミを触るのが気持ち悪いと言うほどになったが、
彼にとって夏は何の季節になるのか
彼が何かしら心ときめかせるものに
出会って欲しい。

夏休みはそんな出会いを得るには
ちょうどいい期間なのかもしれない。

ちなみによく人にオオクワガタのブリードを
していることを言うと、
「え?ビジネスでしてるの?」と
聞かれることがあるのだが、
正直ビジネスには全くならない。

今から30年ほど前であればオオクワガタは
黒いダイヤなどと呼ばれていて
大型サイズだと1匹数十万円のような値段が
つくこともあったが、
今はブリード手法が確立されていて
売ったとしても大した金額にはならないのだ。

毎年羽化された成虫のうち一部は
昆虫ショップの方に買い取って頂いてはいるが、
飼育にかけたコストからすると
完全に原価割れの状態である。

だが、自分が育てた成虫たちが
昆虫を愛する人の手で可愛がってもらえると思うと
何とも嬉しいものである。
逆にビジネス目的ならば私はこんなに
昆虫飼育は続けられていないだろう。


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