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思わぬところに転がっていたヒント

先日娘をピアノ教室に連れて行った。

娘は2年ほど前にも別のピアノ教室に
通っていた時期がある。

だが、当時は娘も小さかったので
あまりピアノの楽しさがわからないまま
ダラダラと習い続けている感じになり、
結局1年ほどでやめてしまった。

そんな思い出があるので、
私的には別にピアノはもう習わなくても
いいと思っていたのだが、
妻はそうではないらしい。

自分が子供の頃に習っていたからか
なぜか娘をピアノを習わせる方向に
誘導しているように私には見えた。

そして、結局数か月前から今通うピアノ教室に
行くことになった。

私は子供のころからピアノを習ったことは
1度もない。

子供の頃の私は”ピアノを習う人はお嬢様”などという
極めて勝手な偏見を持っていたほど
私の周りでもピアノを習っている人は
それほど多くなかったような気がする。

そんな私なので、私はピアノ教室に娘を連れていくだけで
教室の様子を見る事はなかった。

だが、先日娘を練習に連れて行く際に
妻から「練習の様子を見てきて欲しい」と
依頼を受けた。

娘の成長の度合いなら家でも見ることができるのに、
なぜ練習の様子を見なければならないのか?

疑問に感じたものの、
何か新しい環境を体験できるチャンスかと思い
練習の様子を見ることにした。

個人宅でされているピアノ教室なので
何だか人の家にお邪魔するような
微妙な緊張感を味わいながら
教室に入室する。

こんな時に限って五本指ソックスを履いてきた
自分を少し恨めしく思いながらも
ピアノの練習が始まった。

早速ピアノの前に座って練習を、、、
そんな風に思っていると、
なぜか娘はカバンの中からラミネートされた
紙を取り出し、早口言葉の様に2音飛ばしの
音階を読み始めた。

家でピアノを弾いているのは見たことがあるが、
この暗号のような早口言葉のような妙な儀式は
見たことがない。

これは一体何なのだろうか。

そんな風に思いながら、レッスンが進んでいき
終わりの時間になったので、
思い切って先生にあの練習はいったい何のための
練習なのか聞いてみる事にした。

すると、音を感覚的に捉えて
楽譜を瞬間的に見るのに役立つ訓練だそうである。

なるほど、そういう意味があったのか。

そう納得しかけたときに先生がこんなことを言った。

「面白いことに一定のレベルまでは
人は口で出せる音しか再現できないんですよ」

この言葉を聞いた時にふと私の頭の中に
ある光景が浮かんだ。

それは映画”School of rock”で主人公のデューイが
ギターソロのアイデアを口に出しながら
再現していたシーンである。

この映画を初めて見た時には
何だか滑稽なシーンだと思ったのだが、
今回ピアノの先生が言っていたことを
前提に考えてみれば理にかなっていることである。

比較的音階が早く流れるようなギターソロも
旋律を口に出しているからこそ
ギターで再現することができる。

私は中学生ぐらいから家に合ったアコースティックギターを
弾くようになったので、ギター歴自体はかなり長い。

だが、独学で練習してきたからか、
ある一定以上のレベルには至れていないと感じていた。

その一定のレベルとは早いギタープレーができる事である。

コードを鳴らすこと、ゆっくりとした旋律を奏でることは
問題なくできるのに、
一定以上の速さの音階となると、頭が音を理解できず
指が動いてくれないのだ。

最初私は指の問題だと思っていたが、
音を弾こうとせずに指をフレット上で動かすと
何の問題もなくスムーズに動く。

ギターを弾くならば早弾きができるほうが
カッコイイし、表現の幅は間違いなく広がるが、
どう練習しても上達しないことが
いつしか私の中でコンプレックスとなって
私はギターを弾くことが自分の趣味であることを
周りに言わなくなった。

だが、もしかすると私が早い音階をギターで
再現することができなかったのは
そもそも口で音を再現できていないからでは
ないだろうか。

もしそうなら、これは試してみるっきゃない。

早速弾きたいと思っていたギターソロを
流しながら、一つ一つの音を口で再現する練習を
してみることにした。

家族の前でやると何だか滑稽に見えてしまうので
子供たちが風呂に入っている時間や
ちょっとした時間に2階の部屋でこっそりと
練習をしているが、
試しに弾いてみると、以前詰まってしまった場所から
わずかずつながら前に進めるようになっていた。

やはり私が早くギターを弾けない理由は
ここにあったのだ。

まだ練習を始めたばかりなので
どこまでうまくなるかはわからないし、
正直今の私にはそれほどギターへの情熱が
あるわけでもない。

だが、長年自分が克服できなかった課題点を
克服するヒントがまさか娘のピアノ教室で
出てくるとは思っていなかったので、
まさに棚からぼたもちが出てきた気分である。

やはり、見たことない場所に足を踏み入れるのは
新たな学びが得られるものなのだ。

今日はどんな新しい場所に足を踏み入れようか。

そんな風に思うと今から楽しみで仕方ない。

ちなみに娘にピアノ教室はどうかと聞いてみると
あまり楽しくはないと言っていた。

しかし、娘自身も教えてもらうことで
得るものがあると感じているらしい。

ほんの少しずつでも成長しているという実感は
人を嬉しくしてくれるものなのだろう。



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