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【税制適格ストック・オプション】 M&Aをされると税制適格要件から外れてしまう理由、知ってますか?

こんにちは、大門(だいもん)です。

今回は「意外と知られていないので、単体でまとめていいのでは?」と思った論点について書いていきます。

いわゆる4要件として語られないものの、ベンチャーの資本政策上、極めて重要なポイントになると思われます。(今回はベンチャー企業限定)

税制適格の主な4要件(再掲)

税制適格要件については、様々なWEBページ等で公開されているので、簡潔に要点だけまとめます。(再掲)

【発行形態】本人のみ行使可能(譲渡不可能)。

【行使価額の制限】①年間権利行使1,200万円未満②付与時の株の時価以上に設定

【行使期間の制限】ストックオプションの付与決議から2年後〜10年後の8年間のみ行使可能

【付与対象者】発行会社・その子会社の取締役・執行役・使用人・権利承継相続人であること(2019年より社外高度人材への付与可能)②付与決議日において大口株主及び当該大口株主の特別関係者でないこと

M&Aをされると税制適格要件を外れるのか?

さて、それでは本題に入りますが、結論から申しますと、「税制適格ストック・オプションを発行している会社がM&Aをされた場合、当該ストック・オプションは税制適格ではなくなる」格好となります。

理由は、下記のような文言が税制適格の要件となっているからです。

"権利行使により取得した株式につき、発行会社と証券会社または金融機関との間であらかじめ管理等信託契約を締結した上で、ストック・オプションの受け手が株式を取得した後に、当該証券会社または当該金融機関等で保管または管理等信託がされることが必要となります。"

上場企業であれば、金融機関との信託契約締結を行いますが、未上場の場合、この実務に対応している金融機関がない(→こちらの記事をご参照!)ということが実情です。

未上場の段階で、税制適格ストック・オプションを行使して、現物株に変えてから買収先に売却すると、税制適格を外れるため、権利行使した時点で給与課税が発生します。

税制適格として出したストック・オプションの割当対象者にはどう報いたらいいのか?

上記のような理由から、M&Aとともに税制上のメリットを受けることは出来なくなってしまいます。

そのため、M&Aによってキャピタル・ゲインを得た経営陣(=元最大株主)が、ストック・オプションの付与対象者に個人的に利益還元をするケースも散見されます。

あるいは元々、有償ストック・オプションを割り当てておくことで、買収された際に行使してもらって当該論点を回避するということも可能ではあります。

(多くの場合、未上場企業が有償ストック・オプションを発行する場合、上場後でないと権利行使不可とする条項を付けることが多いですが、設計次第でワークさせることは可能です。)

他にもストック・オプションにまつわる気になることがございましたら、下記よりお問い合わせください。


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