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【有償ストック・オプション】 上場企業の実務について③ ADワークス社の費用計上不要な設計

こんにちは、大門(だいもん)です。

本日は時事ネタとして、昨日(2020年9月1日)に適時開示された、株式会社ADワークスグループ(以下、ADワークス社)の画期的な有償ストック・オプションについて、考察していきたいと思います。様々な企業担当者を悩ませてきた「株式報酬費用の計上」が不要になる設計となっています。

そもそもADワークス社の設計は?

今回、ADワークス社はグループ取締役を割当先として、有償ストック・オプションを出しています。ただ、非常にユニークな点として、「ナスダック総合指数の終値が一度でも発行価格決定日の70%を下回った場合」に強制的に行使しなくてはいけない、という「下限強制行使条件」を付けているという点です。

前回取り上げたKeyHolder社のケースでは、自社の株価に対して下限強制行使条件を付けていたため、一部の監査法人からは「役務に対する報酬」と同じとみなされて費用計上することが求められる設計(自社の株価は、割当対象者がコントロールすることができるため、役務の対価となり得るという前提)でした。

なぜナスダック総合指数が対象にしたのか?

ところが、ADワークス社は対象となる株価を自社ではなく、ナスダック総合指数にすることで、「役務に対する報酬」としての側面を完全に消し去ることで、費用計上を発生させないことを可能にしました。

費用計上(株式報酬費用)は、キャッシュ・アウトはないものの、一般管理費として計上されるため、発行した期の決算が悪く見えることから、上場企業が有償ストック・オプションを発行する際のボトルネックとなっていました。ただ、今回の発行を経て同様の設計をしたストック・オプションの発行実例が増えるのではないかと存じております。

ADワークス社の功績

以前から、ADワークス社は日本初となるライツ・オファリング(既存株主に対して、株ではなく無償新株予約権を割り当てる手法。欧米では一般的。)の実施など、ユニークな資本政策を実施する企業として有名ですが、今回の有償ストック・オプションも日本初案件として日経新聞などに取り上げられています。ご興味のある方は、下記のリンクよりぜひご一読ください。筆者も読みました。

他にもストック・オプションにまつわる気になることがございましたら、下記よりお問い合わせください。


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