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想像力の中での激しい闘い。

お盆休みである昨日の午後、あまりに暑くって
やろうと考えていたことはなんにもできないし、
このごろの時勢による不安もあるしで、
もう、読書しかできない、って思いながら、
ふと、村上春樹さんの短編作品
『かえるくん、東京を救う』を読みたくなり、
部屋の本棚より、この作品が収録されている
『神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)』を取り出して来た。
そして、いつ以来かは憶えてないけど、
『かえるくん、東京を救う』を読みました。

この短編作品では、ある日、
片桐がアパートの部屋に戻ると、
巨大な蛙が待っていた。蛙は、片桐に
【ぼくのことはかえるくんと呼んで下さい】
(新潮文庫、151頁より)と伝え、そして
【ぼくがここにやってきたのは、
 東京を壊滅から救うためです】(同155頁)と話す。
かえるくんが言うには、壊滅、つまり、
三日後の2月18日朝8時半頃、
東京を大地震が襲う、とのことで、
かえるくんは片桐と共に地下へと降り、
みみずくんと闘い地震を阻止すると告げる。
というストーリーなのですが、ひさしぶりに読みながら
たとえば、じぶんの部屋にいきなり
巨大な蛙が現れて驚く片桐に対して、
一緒に闘うためにかえるくんが説得を行う、という、その
かえるくんによる説得の感じがすごいなあ!
と思いつつ、最終的な物語としてはね、
2月17日夕方、片桐は狙撃され、目が覚めたとき
彼は病室のベッドで横たわっており、
看護師さんへ今の日時を訊ねると
「2月18日午前9時15分」と伝えられる。
この日の朝、地震は起きておらず、
さらに彼は拳銃で撃たれてもいなくって、
路上で昏倒しているところを発見されたのだった。
その後、病室へやって来たかえるくんによれば
【すべての激しい闘いは想像力の中でおこなわれました。
 それこそがぼくらの戦場です。
 ぼくらはそこで勝ち、そこで破れます。】
(同180頁)と言い、かえるくんは
みみずくんと闘った旨を語った。

ここでかえるくんの語られている
「想像力」の中での「激しい闘い」とは、
どういうものなのか?! というのは、
ぼくにはよくわからないですが、
でも、よくはわからないながらに
とてもとても大切なことなのだろう、
とも思える、と申しあげますか。
そう思いながら、短編作品を読み終わり、
すると、ぼくもなんだか眠くなってきたので寝た。

夕方、目が覚め、水をコップ一杯飲んでから
せっかくだから、と、この
『かえるくん、東京を救う』の次に収録されている
短編集『神の子どもたちはみな踊る』の最後のお話しの
『蜂蜜パイ』を読み始めました。
ぼくはこの『蜂蜜パイ』の物語が好きで、
今回もまた、良いなあ! と思いながら、
最後の場面では、やっぱり
ちょっと泣きそうになってしまった。。。

ふと読みたい、って思ったときにね、
図書館や本屋さんへと行くこともなく、
じぶんの本棚にその読みたい本がある、というのは
有難いことだなあと感じつつ、かえるくんの言っていた
「想像力」のことを想像しながら、また、
かえるくんが引用をされていた
トルストイの『アンナ・カレーニナ』及び
ドストエフスキーの『白夜』を、ぼくも
読んでみたいやも、とも思ったんだった。

令和6年8月14日


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