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メンター制度をワークさせるために


#DIAMONDハーバードビジネスレビュー

2008年から2011年までの間、初めてグループ全体の人材開発担当ダイレクターに就任した時の直属部下は二名の英国人。

一名は経験豊富だが退職間近で、その後社内候補者から後継者を選抜、もう一名は技術系エンジニア出身者で、ともに英国のセントへレンズを拠点としていた。すなわち東京と拠点とする私の身近にはいない、まさにリモートマネジメント環境だった。コロナ禍のように渡航の制限が無い頃だったので、毎月一回は英国を訪問し、一週間彼らと過ごす日々が3年程度続いた。

この技術系エンジニア出身者のアイディアで始めたのがメンター制度だった。

メンターの対象は初級マネジメント層向けの育成プログラムであるED1受講済みでトップ100手前のマネージャーの内、次の上級マネジメント層向けのED2に推薦される潜在性のあるマネージャー。ED2はED1よりも狭き門であり、この間の育成次第で将来トップ100のポジションに就くタレントプールが厚くなる。

当時ED1は毎回24名の受講者で年3回実施していたので、過去三年程度の受講者、ざっくり計算すると24X3X3年間=216名の中から毎年20名程度をラインマネジメントの推薦を参考に選抜する。

メンタリング期間は3年間(その後2年間に短縮)。毎年最低三回はメンターとメンティーが面談することを推奨、事務局は面談を実施したかどうかのログはとるが、その内容にまで関与しない。期間終了後、制度の最低面談回数を満たしていたとペアが認識した場合は修了証書を発行する。その意味では「大人向けのプログラム」設計だった。

メンターをするのは、トップ100の現任者とその一つ下のマネジメントグレード層の約300名で、基本は自発的にメンターを希望し、かつメンティーと同じ事業部門では無いマネジャーをペアリングする。ペアリングはメンティー及びメンター候補者双方の希望を聴取した上で、事務局がリージョンの人事と相談して決めていった

本プログラムは昨年時点でまだ継続していたので10年以上続いている訳だが、累積課題が山積みだった。メンティー側に制度をうまく使う準備ができていなかったことなど課題発生の原因は多々あったが、その一つはメンターの質が当初の想定以下だったことだと思う。

トップ100とその下のマネジメントグレード層であればメンターの質はある程度確保できているという想定だったが、現実にはそうはいかなかった。トップ100の中にはコマンド&コントロール型のリーダーはたくさんいたが、彼らは共通して人財開発にリソース配分することに慣れていなかった

何よりもメンター制度が新しい制度だったため、メンター自体が良いメンタリングを受けたことが無いことが致命的だったように思う。

先に挙げたED1というプログラムは40年以上の歴史があり、自己認識を高めるのには本当によくデザインされていたし、トップ100(と言っても今は組織が縮小して60名程度しかいないが)は皆ED2を経験しているので、それらのプログラムのベネフィットがよくわかっているので彼らはどうすればそれらのプログラム機会を最大限に活かせるのかどうか熟知していた。それに対してメンター制度は彼ら自身が経験していないので、どうやったら効果的なのかが理解できていなかった

このHBRの記事で紹介されているジョンズ・ホプキンズ大学医学部で開発されて試験実施された「マスター・メンター」アプローチ、「メンターに特典を与え、表彰することにより、メンター選びを競争的なプロセス」はその意味で大変興味ある。

また文中にある「メンタリングによってダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平)、インクルージョン(包摂)を加速するといったテーマを設定」というアプローチは私がインクルージョン&ダイバーシティ委員長を務めていた際に提案した内容でもある。

もしもう一度こういったプログラムをデザインする機会があれば、ぜひこういったアプローチを参考にしたい、と思う。

(本記事の内容についてより詳しくご相談されたい方はこのリンクからコンタクトくださいメンター制度の企画やマスター・メンター育成をお手伝いいたします。)




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