見出し画像

XXハラと決めつけることの弊害

私個人のFacebookでもHIRAKUコンサルタンシーサービシズのFacebookでも紹介したのでそちらをご覧になった方にとっては重複することになるが、パワハラという言葉の生みの親とされる岡田康子さんのコメントが最近私が手掛けた海外での労務案件での学びとぴったり合うものだったので再度ここにご紹介したい。

最近手掛けた案件は、海外拠点の日本人マネジャーがあるローカル社員の不満に対して「これはXXハラだ」と枠をはめたことがキッカケで、国際部門・人事部門から第三者である私に対して調査が依頼されたものだ。

XXハラの被害者と目されるローカル社員やその同僚全員にインタビューを実施したが、当のXXハラの被害者と目されるローカル社員は「XXハラという言葉は自分からは一切言っていない」と完全否定。調査の結果は、十数年もの間の「小競り合い」が蓄積されて最後に我慢しきれずに風船が爆発したような案件だった。

最初に紹介した岡田康子さんが日経ビジネスの特集記事で述べた言葉がまさにこの案件を象徴している。

「岡田氏:「XXハラ」と名付けることで、枠にはめ、白黒付けられれば安心しますからね。でも、それは思考停止です。何でも「XXハラだ」と言っていれば、相手と真摯に向き合わなくて済みますから楽ですよね。
 でも人間関係って本来は「傷つけ合い」の繰り返しです。ダイバーシティーの時代ですから異質な人、自分と異なる価値観を持った人も増えてきます。何でも安易に「それはXXハラです」と糾弾することこそがハラスメントではないでしょうか。」

今回の案件で問題なのは、日本人マネジャーが白黒付けようとしたことだと思う。岡田さんが指摘する通り、「人間関係は「傷つけ合い」の繰り返し」という認識があれば、職場の常態はグレーな案件だらけであることがわかる。職場は人間関係だらけな訳だから、お互いの「傷つけ合い」は無くなることが無い。

そう思うと、一つ一つの「傷つけ合い」を白黒つけるのでは無く、常態であるグレーの中、相手に真摯に向き合うようにすべきなのだ、と思う。

今回の案件で想い出したのが、米国ケンタッキー州に駐在した際に、現地労務弁護士が労働組合が結成される組織の特徴として、①マネジャーが現場に顔を出さない、②コミュニケーションが不十分で無い、③安全衛生などの基本的なマネジメント事項が疎か、を挙げていたこと。おそらくこの弁護士は色々な企業へ訪問しても同じ特徴を挙げているに違いないと睨んでいる。

これに対して日本を代表する自動車メーカーが、現地で究極の非労組化対策(英語で”Union Free Operation”、略してUFO)として掲げていたのが、労働組合が行う仕事はすべて人事部門がやる、ということ。すなわち①現場には頻繁に顔を出し、②コミュニケーションは透明性を持って丁寧に行い、③安全衛生を含めた5Sを徹底し、現場の意見を取り入れた改善は迅速に実行する、ということ。逆に言うと労働組合が付け入るスキを与えないレベルにマネジメントの質を上げるということ。

もちろんこれはどの日系企業でも出来ることでは無く、この自動車メーカーの実力を浮き彫りにしたものだったが、今回私が手掛けた案件でもマネジメント側が反省する部分は大きかったと思う。日常から細かい小競り合いがあれば各人の言い分に耳を傾けて迅速にアクションをとっていれば累積する不満が溜まることは緩和できたことだろう。

昔から労働組合は会社の鏡という言葉があるが、マネジメントは労務問題を嘆く前にまずはマネジメントが求められていることが出来ているかどうか、謙虚に点検する姿勢が必要だと改めて考えさせられた。

(本記事の内容についてより詳しくご相談されたい方はこのリンクからコンタクトください。国内外での労務問題の解決や職場診断のお手伝いをいたします。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?