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世田谷美術館 / グランマ・モーゼス展@東京(日本)

用賀駅から歩いて15分ほど、家族連れがたくさんの公園の中に、周りの自然と馴染んで佇む世田谷美術館。
温かいイメージのこの美術館にぴったりな展覧会、グランマ・モーゼス展に足を運んだ。残念ながら展示の写真撮影ができなかったので、個人的感想だけ書き残す。

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Anna Mary Robertson Moses(グランマ・モーゼス。素敵な愛称!)はアメリカの国民的な画家だけれど、日本での知名度は高くない。彼女は農村で主婦の生活を続け、80歳でデビューした。いつからでも好きなことを始めて良いのだと勇気がもらえる経歴だ。

絵を見ると、なるほど自然の移り変わりや自然と共生して生きる農村の人々の生活が素朴なタッチと愛らしい色調で表現されており、長年慈愛に満ちた目でそれらを見つめてきたことがわかる。春夏にはピクニック、秋はアップルバターや蝋燭づくり。そして冬にはサンクスギビングやクリスマス、、、この現代消費社会では、他者によって作られた欲望を消費して満足した気になってしまうけれど、人生の愉しみはもっと素朴なところにもあると思い出させてくれる。「昔こんな絵本を読んだかも?」とノスタルジーが掻き立てられる、心温まる絵の数々だった。

「人生は作り上げるもの。自分は人生から最良のものを引き出したと思う。」展覧会の出口前に記されていた彼女の言葉には人生を精一杯生きたという清々しい達成感が感じられ、自分も年を経てそう思えるようやりたいことを後回しにせず日々過ごそうという決意を胸に、美術館を後にした。

おわりに

世田谷美術館自体、歴史を感じさせる重厚な石造り、周りの自然との調和、展示室入り口の放射状構造、高い天井と、噂に違わず芸術鑑賞体験を盛り上げてくれる素敵な建物。

展示セクションや作品のテーマに沿って会場の色使いや額縁が選択されており、展覧会とは、アーティスト、キュレーターのみならず、展示場やフレームの選定といった様々な選択を重ねて結実した、それ自体が一つの芸術作品であると感じ、満足感のある鑑賞体験だった。

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