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ポンピドゥー・センター・メッス@メッス(フランス)

フランスが誇る近現代美術館、ポンピドゥー・センターが別館を作ったと聞いたらワクワクしないだろうか。しかも、その地はロレーヌ地方の水に溢れる美しい街、メッス。さらに、建築設計は坂茂(とJean de Gastines)と聞いたら、美術と建築を愛する日本人として足を運ばないわけには行かないというものである。

美しくカーブする木組み、これぞ坂茂

耐久性を保ちながら美しく木を曲げる技術力に、下を通る人は必ず感嘆するだろう。
帆で作られた屋根も自由にカーブし、ところどころから窓が覗く。

最新のアート動向が見て取れる展覧会群

まず驚くべきは、その展覧会の数。同時に5、6の異なるテーマの小さい規模の展覧会が開催されている。大きい美術館ではないものの、全てを楽しもうと思うと時間と体力の配分が重要である。
私が訪問した際のラインナップは、メディアアートやサスティナビリティをテーマにした展示、ニキ・ド・サンファルの人生をフェミニスト的観点から振り返りながら、作品の変遷を追う展示などであり、現代の主要なアート動向をカバーしているという印象を受けた。

REFIK ANADOL

0階のひとフロアは全て、Refik Anadolのメディアアートに割かれていた。2億枚ほどのインターネット上の自然の写真データをGoogle AIの強力で作成したソフトウェアAIで処理し、3Dのビデオに落とし込んだのだという。
彼の作品制作過程についてはTEDの動画が面白いので貼っておく(https://www.ted.com/talks/refik_anadol_art_in_the_age_of_machine_intelligence?autoplay=true&muted=true&language=ja)。

Refik Anadol, Machine Hallucinations. Rêves de nature, France, 2022

MIMÈSIS UN DESIGN VIVANT

人間存在にとって自然は不可欠であり、自然との関係は古くから、多くのデザインのテーマとなり、また取り入れられてきた。さらに、デジタル時代でありつつ、サステナビリティが強調される今日、有機的なものと機械的なものが混ざり合う現象が生まれている。

インテリア、特に椅子のデザインには有機的なものが多い。
Ronan et Erwan BOUROULLEC, “Rêveries urbaines”, 2016 

L'ART D'APPRENDRE

アーティストは型破りで才能に溢れたひと、というステレオタイプがある一方で、多くのアーティストは高名な美術学校で学んだ経験がある。アートを作るためにはアートを学ぶ必要があるのか、アートを学ぶというのはどういうことか、問い直す展示も面白かった。

どうやって創作を学ぶことができるか?という疑問から派生する疑問が循環していき、はっきりした答えは提示されない。
アートとは何か?欲望?幻想?自己を知ること?概念?記号構造?商業製品?感情認識?何通りも答えは存在する。

おわりに

美術館の規模としてはとても大きいわけではないけれど、現代アートの面目躍如といったところでとの展示もさらに深い問いに導くものなので、見終わる頃には充実感に満たされる。
近現代美術館の枠にとどまらず、フランスの現代カルチャーの中心地であるポンピドゥー・センターであるが、ポンピドゥーセンター・メッスはそれとして完結した美術館のようで、強い関連性は感じなかった。しかし、あえて地方に別館を作り意欲的な展示を行うという新しい試みは非常に面白い。

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