金曜日の夜は、長い



 よれたTシャツで、いつまでも彼の言い訳を待っていた。土曜日の朝までには、「帰りたかったんだよ」という被害者ぶった彼が電話をかけてくるはずだから。

何度も裏切られるたびに、昔理解できなかった恋愛映画のヒロインの気持ちが、痛いほど分かるようになった気がする。本当に必要だったのは「こんなことをやってあげた」みたいな事実や、「こんなものを買ってあげた」のような物質的なものではなく、いつまで経っても色褪せない、あの日幸せだと感じた温かさ。それだけだった。

「お仕事大変だもんね、お疲れ様。気をつけて帰ってね」
くだらない言い訳にお決まりの返答を返すのは、今日で最後にするつもりだ。これで終わりにするんだ、何度も思ったのに、気づいたらまた金曜日がやってきて、彼の言い訳を待っている。

もう、私の目を見て、好きだと言ってくれた、君がいないことを、まだ私は信じられていないから。

金曜日の夜は、長い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?