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BTSはなぜこんなにも最高のチームなのか? ~「多様性」×「心理的安全性」×「謙虚なリーダーシップ」のある組織~

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はじめに

ちょうど1年前、私は『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』という本を頼りに、BTSがこれほどまでに世界で愛されるグループである理由を、自分なりの解釈で紐解いてみた。それは、メンバーそれぞれが、そしてグループ全体が見返りを求めず他者に与えることができる「GIVER」だからだろうという仮説に基づいた内容だった。

その後、『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』という本を読んでピンときて、BTSは相手の立場に立って物事を深く理解できる「エンパシー」能力と、揺るがない自分という意味の「アナキズム」の2つがとてつもなく良いバランスで存在している、最強の「アナーキック・エンパシー」の持ち主なのではないかという説も唱えてみた。

いずれも、偶然読んだ本によって導かれるように書いたものだったが、今回はちょっと違う。「BTSのチームとしての強さ」について納得のいく理論が知りたいと思い、それが叶う本を自ら探した。「多様性」「心理的安全性」「リーダーシップ」の3つをキーワードにして。

1)「同じクラスだったとしたら、絶対に仲良くならなかったはず(JIMIN)」というほど、個性が異なる7人が集まったからこそ、このチームは強いのではないか(=多様性)。

2)たとえ1歳違いであっても年上を尊重する韓国の文化の中において、年長者たちが一切偉ぶらず、お互いに尊重し合い、それぞれが率直に意見できる組織だからこそ、このチームは成長できたのではないか(=心理的安全性)。

3)メンバー全員から「真のリーダー」と絶対的な信頼を得ているRMにしか体現できないリーダーの形がある。さらにメンバー全員が何らかの分野でリーダーになれるくらい有能な人材であるからこそ、このチームの絆は強固なのではないか(=リーダーシップ)。

そんな仮説を持ってたどり着いたのが、この4冊の本だ。

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『多様性の科学』(マシュー・サイド著)
『恐れのない組織』(エイミー・C・エドモンドソン著)
『心理的安全性のつくりかた』(石井僚介著)
『謙虚なリーダーシップ』(エドガー・H・シャイン、ピーター・A・シャイン著)

おもしろかったのは、『多様性の科学』には心理的安全性やリーダーシップのことが、『心理的安全性のつくりかた』にはリーダーシップのことが、『謙虚なリーダーシップ』には心理的安全性やGIVERのことが…というように、それぞれの本に別の本とかぶることが書いてあって、すべての本の内容が有機的につながっていたことだ。「良い組織」について語りたいと思って、これらの本を手に取ったことは間違いではなかったと確信できた。

それでは、これらに書かれていることをもとに一つ一つの仮説を考察しながら、BTSのグループとしての強さやすごさについて、勝手気ままに述べていきたい。

※あくまで個人の見解です。

Part1 BTS×多様性

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多様性のない組織には、大きな綻びが生じる

これを読んでいる人がARMYならば、BTSが一切のキャラ被りなく、個性豊かな7人で構成されたグループだとよく知っているだろう。生まれも育ちも、目指してきたものも、好きなものも、性格も価値観も感情表現の仕方もまったく違うメンバーたち。この「違い」が多様性を生み、それがグループにとても大きな価値をもたらしていると私は考えている。

なぜ、組織に多様性があると良いのだろうか。『多様性の科学』には、多様性が欠如した組織の失敗例がいくつも紹介されている。そのうちの一つを簡単に紹介して、多様性の利点について説明したい。

失敗例の一つに挙がっているのは、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう「CIA」について。CIAはアメリカの大統領直属の政府機関で、世界中から国家安全保障に関する情報を収集・処理・分析することを公式任務としている。

CIAが多様性欠如のために犯してしまった失敗とは、2001年にアメリカで起きた9.11同時多発テロ事件だ。当時のCIAについて元捜査官は「米のように白かった」と表現している。白とはすなわち、白人種のこと。CIAが採用していた人材にはおしなべて同じ特徴があった。それは、「白人、男性、アングロサクソン系、プロテスタント」であること。

同著には「どれだけ優秀でも、同じ特徴の者ばかりを集めた多様性に欠けるチームでは、集合知を得られず高いパフォーマンスを発揮できない」と書かれている。

事件を起こしたテロ組織・アルカイダを率いたビンラディンは、多くの局面でムスリムにとって深い意味を持つメッセージを、誰の目にも見える形で送り続けていた。しかしながら、それらはイスラム教について無知の者にとっては、価値を持たないメッセージだった。

例えば、当時のニュースで繰り返し取り上げられていた、テロ事件前に撮られた動画。ビンラディンは洞窟に座って語り掛けているのだが、ムスリムにとって「洞窟」は、ムハンマドが他宗教からの迫害を受けて逃げ込んだ場所であり、特別な意味を持つ。また、ビンラディンが自身の声明を詩の形式にしていたのも、イスラム文化の重要な要素の一つだった。

しかし、ある一つの宗教観しかない多様性に欠けたCIAには、それを見抜けなかった。それどころか、揃って白人至上主義の価値観を持つ彼らには、ビンラディンの一連の行動は「時代錯誤の無知な連中のたわごと」としてしか映らなかった。その結果、警戒すべきものが見逃され、とられるべき対策がとられず、テロ事件が実行されてしまったのだ。

この教訓を踏まえ、CIAは採用に際して多様性を重視しはじめた。その結果、第2のビンラディンと言われる男の殺害を実行することができたのだという。

同著には、「一筋縄ではいかない問題を解決しようとする際には、正しい考え方ばかりではなく違う考え方をする人と協力し合うことが欠かせない。複雑な物事を考えるときは、一歩後ろに下がって、それまでとは違う新たな視点からものを見る必要がある」とある。

実際、あらゆる研究分野では、個人で論文を執筆する人の数は減少。理工学分野では90%がチームによって論文が執筆されているのだとか。それはチームを組んで取り組むことにメリットがあるからだ。多様性の必要性は人工知能にまでおよんでいて、単一のアルゴリズムではなく、考え方のことなる複数のアルゴリズムが組み合わされて、その進化に大きく貢献しているらしい。

「個人個人の能力ばかりでなく、チームや集団全体を見る姿勢が欠かせない。それでこそ高い『集合知』を得られる。そこで重要な鍵となるのが『多様性』だ」と著者は述べている。

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多様性のある組織には、新しい価値が生まれる

次に、組織における多様性が功を奏した事例を一つ見てみよう。例に挙げられているのは、サッカーイングランド代表チームのために設立された技術諮問委員会だ。何十年もの間、良い成績を残せず、特にPK戦での弱さが指摘されるチームをなんとかしたい。それが委員会設立の目的だったという。

メンバーに抜擢されたのは、IT起業家、教育専門家、元ラグビー国家代表のコーチ、プロ自転車ロードレースチームのGM、陸軍士官学校の士官、そして同著の著者である元卓球選手のコラムニストらだった。

このまったくサッカーに明るくない顔触れに対して、あらゆるところから「ラグビーやロードレースの専門家からの助言など必要ない」と非難が殺到。著者は当初、そんな批判も仕方ないと考えた。ところが、この組織での活動で著者は「目から鱗が落ちるような体験」をして考えをあらためたのだという。

それは、バラバラの経験値を持つ専門家たちから、多彩なアイデアや知見がもたらされたことだった。ラグビーの元コーチは大きな試合に向けた選手の選抜方法について、自転車ロードレースのGMは食事と運動の改善について、陸軍士官は不屈の精神の鍛え方について、IT起業家は組織に革新をもたらす秘訣について、教育専門家は抽象的なアイデアを具現化する方法についてなど、それぞれが培ってきた専門家な見地から、チーム改善に役立つさまざまなアドバイスが挙がったのだ。

もし、これがサッカーの知識に長けた人しかいない組織だったとしたら、「賢者の集団が愚者の集団になってしまう」と著者は述べている。「しかし決して一人一人が愚かなわけではない。せっかくの集団が『集合知』を発揮できないことが問題なのだ」

アリストテレスはかつて「全体は部分の総和に勝る」という言葉を残した。先ほどから何度か登場している「集合知」とは、個々人が持つアイデアや知識を掛け合わせることによって生まれる価値ある「知」のこと。1+1+1が3ではなく、4以上になる。まさにアリストテレスの言葉と同義である。

とは言え、「集合知」はただ多様な人々が集まれば自然に発生するかと言ったら、そんなことはない。著者は「集合知を得るには、賢い個人が必要だ」と述べている。つまり、組織のメンバー各人が有能であることが、多様性の恩恵を活かすには欠かせない条件だということ。口が悪い言い方かもしれないが、個性を主張する雑魚どもが集まっても、何にもならないのである。

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BTSにおける多様性

BTSは全員韓国人だし、おそらく宗教も一緒だろうし、性別も同じだ。それで多様性があると言えるのか?と思う人がいるかもしれない。しかし、多様性には人種や性別、年齢、宗教などといった「人口統計学的多様性」と、一見しただけではわからない個々人のものの見方や考え方の違いを指す「認知的な多様性」とがある。

肌の色や性別を考慮してメンバーを選んでも、価値観が似たような人たちが集まれば、多様性のメリットは得られない。多様性が価値を持つためには、「認知的な多様性」のある組織でなくてはいけないのだ。それぞれがものすごく有能で、「認知的な多様性」を持っている人たちの集まり。BTSはそんな理想的な組織だと私は考えている。

メンバーのSUGAは、とあるインタビューで「たとえ、自分で好きな人を選んでチームを結成したとしても、今のメンバーには敵わないと思う。僕が一人で何かをするより、7人みんなでする方が、はるかにたくさんのシナジー効果を上げられる」と話している。

これはまさに、自ら気が合うメンバーを選んだのではなく、価値観や個性が異なる7人が偶然に集まったことで、1+1+1+1+1+1+1が7ではなくそれ以上になっているということを表す言葉だと思う。

グループの結成時から、彼らの多様性の形成は見て取れる。リーダーのRMはラッパーで、ヒップホップグループを結成するつもりで事務所に入った。同じくSUGAはプロデューサー志望で事務所入り。彼らはアイドルになりたいなんて、考えたこともない人たちだった。さらに、J-HOPEとJIMINはそれぞれ別のジャンルでその名を知られた、優秀なダンサーだった。JINは俳優を目指して大学で演技を学んでいた。

アイドルグループのほとんどが、歌やダンス、ラップ、作詞作曲などのレッスンをトータル的に受け、得手不得手に応じて、主に歌を担当する人、ダンスを担当する人、ラップを担当する人などに分けられてグループ活動をしているが、BTSの場合は違う。

「ラップ担当」ではなく「ラッパー」、「ダンス担当」ではなく「ダンサー」、「ちょっと作曲できるからやってみました」ではなく「作曲家」と、プロフェッショナルが集められたグループなのである。

「ラップライン」「ボーカルライン」「ダンスライン」など、得意分野によってメンバーを分けて呼ぶことがあるのだが、この明らかなジャンルの異なる属性がBTSというグループの一つの多様性だと思う。

また、メンバー一人一人の価値観の違いも顕著だ。あるリアリティ番組で、2人1組で行動しようとなったときのこと。普段あまり絡みの多くないメンバー同士で組んでみようと、SUGAとVがペアになった。その際、「普段、一番意見が合わないのがVです」とSUGA。それに対して「その通りです」とV。このやりとりに、私はさすがだなと思った。「互いの価値観が違う」ということを彼らは当たり前のように認識していて、それを「悪」としていないと感じたからだ。

もし仲が悪いのなら、「意見が合わない」だなんて口に出しづらいはず。けれど、まるでそれがネタかのように口を突いて出るのは、逆に仲の良い証拠だろう。その後、2人は「意見が分かれてしまったら、手をつなごう」というかわいらしいルールを自ら設けて、度々手をつなぎながら、楽しく行動していた。

BTSのメンバーは、「7人であること」を本当に大切にしている。「7人いるとおもしろいけど、1人でも抜けると全然違う」、「この7人だからここまでこられた」とメンバーたちは事あるごとに語る。ケガなどで誰かが抜けた活動は「何かが足りない感覚がある」し、収録などに後から合流するメンバーがいると「〇〇がいなかったから意味がなかったよ」と不在の寂しさを口にする。

これはメンバーそれぞれが、7人でいることの特別な化学反応を日ごろから感じていることの表れにほかならない。個性が違う7人が全員揃うと、楽しいし、心強いし、前向きになれるし、いいアイデアも浮かぶ。そして、誰かができないことでも、できる誰かが役割を担い、適材適所で力を発揮する。そう、多様性の真価とは、素晴らしい化学反応が生まれて組織が活性化し、より良い環境がつくられることなのだ。

パフォーマンスの個性はもちろん、育った環境、好きなもの、コミュニケーションの取り方や感情表現の仕方、チーム内での振る舞い、仕事に対する考え方、得意なこと、苦手なことなど、すべてが7人7通り。そんな7人が揃っているからこそ、BTSは組織として強いのだ。

ここで、BTSについて知らない人のために、わかる範囲で簡単に各メンバーについて紹介をしておこう(ネット情報を元にしています。相違点などご容赦ください)。

ナムさん

RM
グループのリーダー。メインラッパー。IQ148という驚異的な知能を持つ。小学の頃に聞いたヒップホップに興味を惹かれて、ラップを始める。BTSに所属する前は「RunchRanda」という名義で、アンダーグラウンドで活動していた。ヒップホップ仲間から作曲家を紹介され、その流れで現事務所の社長と出会い、最初の練習生として事務所へ入所。多くの楽曲で作詞を担当しており、その哲学的かつ文学的な表現はメンバーからも一目置かれている。

「高いIQと引き換えに生活力を奪われた」と言われるほど、不器用で、よく物を壊し、物を失くす。彼に料理をさせると必ず何か事件が起こる。あまりにも危なっかしいため、メンバーや親から「お前は車を運転するな」と言われていて、メンバー内で唯一、車の免許を持たない。自転車に乗ること、読書(哲学書や美術史などを好む)、美術鑑賞が趣味。1カ月の休暇をもらった際には、50カ所近くも美術館をめぐったのだとか。

ジンくん

JIN
グループ最年長。リードボーカル。父親が会社を経営していて、いわゆる「いいとこのお坊ちゃま」。高2の時に見たドラマに感動し、役者を夢見る。倍率200倍超えると言われる建国大学校映画芸術学部に入学。大学への通学途中に今の事務所からスカウトされて、オーディションを受けた。それまで歌やダンスの経験はなかったが、誰よりも努力を重ね、晴れてデビュー。

アメリカで行われたビルボードミュージックアワードの授賞式に登壇した際、「あの左から3番目の男は誰だ」と話題になるほどの美しい容姿の持ち主。自らを「ワールドワイドハンサム」と呼び、投げキッスを武器にするおちゃめな性格。オヤジギャグを飛ばしたり、メンバーにダル絡みしたりして、場の雰囲気を明るくする天才。「長男らしくない長男」と言われて、愛されている。料理が得意で、メンバー全員で宿舎に暮らしていたときは、よく腕を振るっていたのだとか。

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SUGA
リードラッパー、プロデューサー。小学生の時にヒップホップグループEPIK HIGHに憧れてラップを書き始める。また、13歳でMIDIを学び作曲を始める。地元の高校に通いながら音楽スタジオで働き、録音機材や音響機材の知識を独学で習得。パフォーマーではなくプロデューサーとしてデビューすることを目標に、事務所のオーディションを受け合格。葛藤しながらもBTSのメンバーになることを決意し、ダンスレッスンを受け、デビュー。BTSの楽曲の多くのプロデュースを手掛けるほか、韓国内外のさまざまなアーティストとのコラボレーション、楽曲提供なども行っている。

対人恐怖症、鬱病、強迫症を患った過去を持ち、その体験をラップ詞に赤裸々に綴っている。クールを通り越した無気力さと、年寄りのような存在感にメンバーからは「おじいちゃん」と呼ばれている。基本的に無口だが、自分の興味があるものになると話が止まらなくなる。うんちく語りも好き。家庭が裕福ではなく、学費を払うためにしていた配達のアルバイトで事故に遭って肩を故障。ずっと痛みと共に活動してきたが、2020年に手術を受けている。

ホビ

J-HOPE
メインダンサー、リードラッパー。愛するわが推し。学生時代から地元で有名なダンススクールに所属し、様々なダンス大会で優勝。当時から業界では注目されるダンサーだった。スクールに来た事務所関係者が、休憩中もずっと踊り続けていた彼に目を留め、スカウト。練習生になった当初はボーカル力を身につけるべくレッスンを受けていたが、ヒップホップ色の強いグループを作るという方針から、ラッパーに転向。事務所関係者はもちろん、RMやSUGAからもラップ指導を受け、今では彼らに劣らないラップの実力を身につけている。

HOPEという名にふさわしく、いつも明るくノリが良く、周囲を笑顔にさせる太陽のような存在。SUGAいわく「J-HOPEはビタミン」。本人は「昔はこんなに明るい性格ではなかった。この名前が自分を希望的にしてくれた」と話している。面倒見がよく、キレイ好きでメンバーやファンから「オンマ(お母さん)」と呼ばれることもある。「欠点がないのが欠点」とメンバーが言うほど、仕事にもメンバーにも誠実に向き合う人柄が魅力。BTS界隈のスタッフの間では、何も言わなくても自らしっかり仕事をこなしてくれることを、「ホビする」(ホビはJ-HOPEのニックネーム)と言われているのだとか。

ジミンちゃん

JIMIN
リードダンサー、リードボーカル。「芸術の才能がある」と教師に勧められ釜山芸術高等学校舞踊科を受験。見事首席で入学を果たす。高校2年の時に事務所の公開オーディションを受けて練習生に抜選され、ソウルへ上京。当時の担任らは「才能がもったいない」とアイドルになることを反対したという。しかし、「こんなに努力をする人を見たことがない」と言われるほど睡眠時間を削って練習に打ち込み、BTSとしてデビューを果たす。

ストリートダンスやポッピングダンス、バレエ、コンテンポラリーダンスと多様なダンスの経験がある彼にしかできない、唯一無二のダンスはアイドルの枠を超え、高い評価を受けている。また繊細さも力強さも表現できる高音を武器にした歌声も魅力的で、プロデューサー・SUGAは「JIMINの声が好きだ」と語っている。「あざとい」が代名詞で、女性アイドルも顔負けのかわいらしさを存分に発揮。その愛らしいキャラクターから、韓国では好感度ナンバーワンアイドルに君臨している。

テテ

V
リードボーカル。歌手を目指していると知った父が「それなら何か楽器を弾けた方がいい」とアドバイスし、サックスを始める。その後、ダンスも習い始めたのだが、事務所のオーディションを受けることを親から反対されてしまう。友人の付き添いという形でオーディションに行ったところ、事務所から逆オファーをもらい練習生に。2017年には「世界の美しい顔」ランキングの1位を獲得したこともある、美しい顔立ちが魅力。BTSイチの人気を誇る。

とてもピュアで無邪気な性格。ファンから「四次元」「5歳児」などと言われるような、かわいらしくユニークな独特の世界観を持っており、メンバーからも愛されている。写真やアートなど芸術に高い関心を持ち、「Vante(ヴァンテ)」という名前で写真を撮ったり、絵を描いたりすることも。メンバーの中で唯一、連続ドラマに俳優として出演経験がある。人懐っこく、誰とでもすぐ打ち解けられて、芸能界に友人も多い。

グク

JUNG KOOK
グループ最年少。不動のセンター。韓国では一番年下のことを「マンネ」と呼ぶのだが、彼の場合は「黄金マンネ」と呼ばれている。それは、ダンス、歌、ビジュアルなどすべてが優れていて非の打ち所がないから。ゆえに、実力者揃いのBTSにおいてパフォーマンスのセンターを務めている。BIG BANGに憧れ歌手の道を目指し、オーディション番組に出演すると複数の事務所からオファーが殺到。RMのラップに魅了されて、現在の事務所に入ることを決めた。

15歳という若さでデビューするも、売れない時代は「自分がセンターでいいのか」と悩んだこともあったとか。高校に通いながらアイドル活動をするという忙しい日々を送りながらも、地道な努力を重ねて名実ともに認められるセンターへと成長した。歌やダンスだけでなく、類まれな絵の才能も持ち合わせていて、度々番組などで彼の絵が披露されると、メンバーもファンも大絶賛。また、筋トレやボクシングにハマっていて、メンバーの誰よりもたくましい体つきをしている。

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簡単に紹介すると言っておきながら、全然簡単じゃなかったな…。まだまだ書き足りないけれど、キリがないのでこのへんで。BTSを良く知らない人も、十分に彼らの個性の違いをわかったのではないだろうか。

この「違い」によって、ケンカをすることもある。けれど、彼らはそれをダメなことだとは思っていない。ケンカをしたら、7人全員で話し合って解決する。それが彼らのやり方だ。

どちらかの意見をどちらかに押し付けるのではなく、そういう意見もあるのかと受け入れる。自分にはない価値観を、おもしろがって、許容して、いいところを伸ばしていく。そういう文化がBTSにはある。何の疑いもなく、彼らは多様性がこの上なく活かされた組織だ

Part2 BTS×心理的安全性

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多様性を活かすには、心理的安全性が必要

『多様性の科学』には、組織にさまざまな「違い」を持つ人たちがいて、それぞれが優秀であったとしても、多様性がうまく機能しない場合があると書かれている。それは、組織に「支配的なヒエラルキー」があって、情報がうまく共有されなかったり、それぞれが自分の意見や考えを自由に述べられなかったりする場合だ。

組織のなかに「順位性」があり、順位が高い人に対して低い人が発言できない状態にあると、組織内の多様性は一切の効力を失うのだという。

同著には、乗客を乗せたジェット機の副操縦士が異変を感じながらも、機長にそれを伝えるのをためらった結果、墜落事故が起きてしまった事例や、エベレスト登山を率いていたベテランガイドに、そのほかのガイドやツアー客が意見を述べることを躊躇したために、死者が出る遭難事故が起きた事例が紹介されている。

一つ目の事例について著者は、「機長に意見をするより死ぬことを選んだ」と表現している。このことからわかるように、自分の意見や考えを目上の人に伝えるという行為は、人間にとって思った以上にハードルの高いことなのだ。しかしながら、組織がうまく機能して、良い方向に進んでいくためには、年齢や立場、経験に関係なく一人一人がためらうことなく率直に意見を述べる環境が整っていなければならない。

あるメンバーの意見を、そのほかのメンバーが自分に対する脅威だと思わず、報復もせず、不満を表現したりしない、誰もが自由に意見を発言できる環境のことを「心理的安全性が高い環境」と呼ぶ。『恐れのない組織』には、「心理的安全性とは、大まかに言えば、みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化のこと」と書かれている。

さらに、著者はこのように続ける。「より具体的に言うなら、職場に心理的安全性があれば皆、恥ずかしい思いをするんじゃないか、仕返しされるんじゃないかといった不安なしに、懸念や間違いを話すことができる。考えを率直に述べても、恥をかくことも無視されることも非難されることもないと確信している。わからないことあれば質問できると承知しているし、たいてい同僚を信頼し尊敬している。(中略)複雑かつ絶えず変化する環境で活動する組織において、心理的安全性は価値創造の源として絶対に欠かせないものなのである

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BTSにおける心理的安全性


『心理的安全性のつくりかた』には、チームに心理的安全性がもたらされる4つの因子が紹介されている。それは、①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎だ。一つ一つをかいつまんで説明し、BTSに当てはまるか?という視点で見ていこう。

1 話しやすさ
「話しやすさ」因子は、心理的安全性をもたらす要因のうち最も重要で、そのほか3つの土台ともなるもの。ディスカッションの際、メンバー自身から見えている景色を率直にフィードバックできるチームは、話しやすさ要因が高いと言える。

BTSのメンバーたちは、自ら楽曲のプロデュースや作詞作曲に参加していることもあり、本当によくみんなで集まって意見を交わし合っている。2020年に発表したアルバム『BE』においては、楽曲のプロデュースだけでなく、メンバーのVがコンセプトビジュアルなどを統括する役割を、JIMINが全体を統括して事務所との橋渡しをする役割を担っている。アイドルには珍しく、自律性や自主性を重んじたグループ活動が行われているのが、BTSの特徴だ。

ドキュメンタリー映像や、密着VTRなどを見ても、リハーサルが終わればより良いパフォーマンスに仕上げるべく、誰からともなく意見を言い合う。もしほかの人と意見が異なっていたとしても、同じ方向を見ていることは確かだし、良い方向に物事を動かすための意見だから、発言を躊躇しない。挙がった意見に対して検討や討論はすれど、非難や否定、侮辱をする人は誰一人としてしない。そんな「何を言っても大丈夫」な心理的安全性がBTSには存在している

2 助け合い
特にトラブルに迅速・確実に対処・対応するときや、通常より高いアウトプットを目指すときに重要な因子。一人一人が個別のタスクをこなし、それを積み重ねてプロジェクトが完遂されるのではなく、良い相互作用ができるチームかどうかが鍵となる。

シンクロ率の高い振り付け、難しいフォーメーションで作り上げるダンス、細かな歌のパート分け。一人が欠けただけでパフォーマンスが不完全になってしまう特性上、BTSは助け合いなしには仕事を完遂することが不可能なチームだ。だからこそ、彼らは練習でも、ステージ上でもよくお互いに助け合っている。

振り付けに自信がない者がいれば教え、リハーサルを見て気になる動きがあれば共有して改善し、マイクの落下やセットの不備などステージ上でトラブルが起これば、気付いた者がフォローする。BTSは、助け合わなくてはチームが成立しないことを全員がよく理解し、実行している組織だ。

3 挑戦
組織・チームに活気を与え、時代の変化に合わせて新しいことを模索し、変えるべきことを変えるために重要な因子。人々がアイデアを思いつき、深め、発表し、フィードバックを得て共創することのブレーキとなるような環境を外していくこと。

BTS内では「お前のやりたいこと、全部やりな」というフレーズがしょっちゅう飛び交っている。主に年下のメンバーが「これをやってみたい」「こんなアイデアどうかな」と言ったときに、年上のメンバーが発することが多い言葉で、まるで我が子の挑戦を温かく見守る父親のようだなと私はいつも微笑ましく見ている。

Vがソロのミックステープ(アルバム)を制作中のこと。Vが「ファンに受け入れられなかったらどうしようと不安に思う」とこぼすと、優しさの塊であるJ-HOPEは「期待感であれ、不安であれ、今Vが抱いている感情そのものが大切。とにかく今チャレンジをしていること自体がいいことだと思う。だから、Vがやりたいことをやって楽しんで」と言葉を贈った(そしてそれに私は涙した)。

何かに挑戦する人にとって、大丈夫だよ、間違っていないよと言ってもらえることは、どれだけ心休まり、安心感があり、意欲をかき立ててくれるものだろうか。どんなときでもそれぞれの挑戦を必ず肯定して背中を押す。そんな風土がBTSにはあるのだ。

4 新奇歓迎
正解のない時代において、メンバー一人一人がボトムアップに才能を輝かせ、多様な観点から社会・業界の変化を捉えて対応する際に必要な因子。人に焦点を当てた因子で、個々の才能に合わせた最適配置がなされ、役割に応じて強みや個性を発揮することが歓迎されている状態。

多様性のパートでも述べたが、BTSはそれぞれに特筆すべき個性があって、それがパフォーマンスや組織運営に存分に活かされているチームだ。ラッパー3人も各人でスタイルが異なるし、ボーカリスト4人も声質や歌唱の癖に違いがあってそれが合わさったときの相乗効果がすさまじい。また、ダンスの上手いJ-HOPE、JIMIN、JUNG KOOKも3人3様のスタイルで踊る。振り付けのシンクロ率の高さが話題となる彼らだが、よく見ると、個性を出しながら踊っていることがわかる。

海外で活動する際は英語が堪能なRMや、リアクションの良さが抜群のJINが活躍するし、全員で旅行に行けばSUGAとJINが料理を担当。部屋の整理整頓はキレイ好きなJ-HOPEが担って、仕事でもプライベートでも適材適所で強みを発揮する。「365日中、360日は一緒にいる」とJINが話していたように、長年家族のように共に過ごしてきたからこその、阿吽の呼吸が彼らにはあるのだ。

Part3 BTS×リーダーシップ

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チームを率いない、新時代のリーダー像

率直に意見をしにくい風土が多様性の効果を妨げる。そのためには何でも自由に物が言える心理的安全性が大切だと、前のパートで解説した。ここからは、組織のリーダーがどうあれば、心理的安全性のある環境をつくることができるかという話をしていきたい。

『謙虚なリーダーシップ』には、このように書かれている。「リーダーシップとは、関係性にほかならない。そして、真に成功しているリーダーシップは、きわめて率直に話をし、心から信頼し合うグループの文化のなかで成果をあげている」

これは同著のかなり冒頭にある文章なのだが、私はこれを読んで、「わぉ!完全にBTSのことやないかい!!!(私は関西人ではない)」と大興奮。著者に「Do you know BTS?」と聞きたくなった。

ここにある「きわめて率直に話をし」というのは、心理的安全性がないと叶わないから、「真に成功しているリーダーシップとは、心理的安全性のあるグループの文化のなかで成果をあげている」と書き換えても間違いではない。そう、心理的安全性にはリーダーシップが大きく関与しているのだ。

同著では、グループ内の関係性をいくつかのレベルに分け、グループが成果をあげる上でベストなものを導き出している。

レベルマイナス1…全く人間味のない、支配と強制の関係
レベル1…単なる業務上の役割や規則に基づいて監督・管理する関係
レベル2…より個人的な関係性の上に築かれ、信頼し合い、率直に話をする関係
レベル3…家族、親友などのように感情的に親密で、互いに相手に尽くす関係

そして「レベル2の関係性があってはじめて、メンバーの誰もが最高の力を出そうと鼓舞される」と示し、そのようなモデルを「謙虚なリーダーシップ」として提案している。リーダーシップというと、個人の資質を指すものだと思う人が多いだろう。しかし、「謙虚なリーダーシップは、個人的な行動であると同時に、グループ現象でもある」のだという。

今なお主流を占める階層的でお役所的な企業文化は、複雑に変わりゆく社会においては役に立たなくなってきている。そこで必要になるのが、メンバー同士の関係性とメンバーと顧客の関係性をも変えるリーダーシップ・モデル。それが「謙虚なリーダーシップ」だと、著者は述べている。

BTSにおけるリーダーシップ

また、同著には「実際に成功するためには、レベル3にはるかに近い関係性が不可欠だ」とある。仕事上でもプライベートでも深いつながりがあるBTSは、最高の「謙虚なリーダーシップ」を持ち合わせたチームだと言えるだろう。

このことは、以前書いたコラム『BTSはなぜこんなにも愛されるのか?~メンバー全員GIVER説~』でも引用した、「ポッセ」と「自己再生のコミュニティ」の解説でもあきらかだ。「ポッセ」とは、信頼感でつながった職業上の生産性を維持するための集団。「自己再生のコミュニティ」とは、プライベートなことを語り合ってくつろいで過ごし、生活の質を高めてくれる人間関係のこと

(『WORK SHIFT』(リンダ・グラットン著/2012年)より)

BTSは、「ポッセ」と「自己再生のコミュニティ」が重なり合った特殊な集団だ。仕事上では互いに良い影響を与え合い、私生活では喜びや悩みを共有したり、くだらない会話をして心を安らげたりすることができる同士。彼らにとってこのような関係性を持つ人は、グループのメンバー以外に存在しない。だからこそ一層、メンバーのことを貴重な仲間だと思えるのだ。

このように、成功するための条件を満たした「謙虚なリーダーシップ」のある組織、それがBTSである。

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1人のリーダーに依存しない組織

チーム内に「謙虚なリーダーシップ」を広めていくためには、メンバーそれぞれがリーダーのような役割を果たすことが大切だと、同著には書かれている。トップダウンで言われたことをやるだけのレベル1の組織ではやる気が上がらず、自尊心も生まれず、これといった成果も上がらない。しかし、個々に裁量を与え、アイデアを採用すれば士気が上がり、誇り高いレベル2の組織を作ることができる

アメリカのある潜水艦の艦長は、乗組員を抑えつけていた規則を緩やかにし、「私はどうすればいいですか」「許可をもらえますか」ではなく「私は〇〇したいと思います」「〇〇するつもりです」と言葉遣いを変えるように指示した。自分たちには明確な意志があると、乗組員が感じられるようにしたのだ。そうしたことで、乗組員の責任感が増し、一人一人がリーダーのように振る舞うことに成功した。

このように、1人のリーダーに依存しない組織には心理的安全性があり、成果を上げることが可能だ。BTSにはRMというリーダーがいる。メンバー全員が「彼は完璧なリーダーだ」「彼以外にリーダーは考えられない」と口を揃えて言い、メンバーだけでなくARMYもRMがBTSのリーダーであることを誇りに思っている。

なぜ、RMはこんなにも信頼されるリーダーなのだろうか。頭脳明晰で英語もペラペラ。インタビューなどで思慮深く的確なコメントをし、彼がBTSの価値をそんじょそこらのアイドルとは一線を画す位置に押し上げていることは、もちろんその一因である。

加えて、「謙虚なリーダーシップ」を念頭に置いて考えたとき、彼が自分以外のメンバーを心から尊重し、意見を受け入れ、得意を任せ、自分よりもグループのことを考えて行動していることが、彼をここまで大きな評価を受けるリーダーたらしめている理由なのだと思う。

後輩から「リーダーシップはどうすれば発揮できるか」という質問を受けたとき、RMはこう答えた。「グループを引っ張っていくことだけがリーダーの仕事ではない。後ろから支えるのがリーダーだ」と。この言葉から、彼が旧来のトップダウン型のリーダーではなく、これからの時代に必要な「謙虚なリーダーシップ」を大切にする人物だということがよくわかる。

RMがこのようなリーダー像を持ち、チームに献身的に働きかけるのは、BTSのメンバーそれぞれが各分野でリーダーを張れるほどの能力の持ち主だからだ。生活全般とバラエティのリーダーはJIN、楽曲制作と意地悪な記者質問のリーダーはSUGA、パフォーマンスの統括リーダーはJ-HOPE、アイドル性とチーム想いのリーダーはJIMIN、ピュアピュア感性&ビジュアルリーダーはV、ステージリーダー(センター)はJUNG KOOK(ほかにももちろん、いろんな才能はあるけれど、長くなるので割愛)。

「自分は対外的なリーダーに過ぎない」「メンバーが自分の足りないところを補ってくれている」というRMの謙遜さあふれるコメントは、まさにほかのメンバーの能力の高さを尊重し、リスペクトしているからこそのもの。

また、年齢における上下関係が顕著に強い文化がある韓国において、年上のメンバーたちが年下のメンバーたちを懐深く受け止め、決して偉ぶらず、自由に発言できる環境や何事にも挑戦できる環境を作り続けてきたことも、特筆すべき点だろう。

同著には、「もし上位の者が打ち解けた、より個人的なレベル2の関係性をつくるなら、(中略)、それが強力な後押しになって、下位の者は大切に考えてもらっていると感じられるようになるだろう」とある。下位の者が大切に考えてもらっていると感じられる。これこそ、BTSにおいて日々実践されていることだ。

RMが支配的なリーダーではないこと。メンバー全員がリーダーを張れる才能を持っていること。立場が下のメンバーを常に尊重すること。このチームのあり方が、BTSに「謙虚なリーダーシップ」を生み、「心理的安全性」をもたらし、「多様性」を発揮させているのだ。

嗚呼、BTSはなんて最高のチームなのだろうか。

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おわりに


先に述べたこととは別の文脈で、「BTSと多様性」について考えたことが一つある。それは、BTSは世界に多様性をもたらす一助となっているのではないかということだ。今、東アジアの小さな国・韓国の男の子たちが世界的に権威のある音楽賞を軒並み受賞し、全世界にその名をとどろかせている。

彼らとコラボレーションし「My Universe」という楽曲をリリースしたイギリスの超人気ロックバンド、コールドプレイのクリス・マーティンはこう語る。「世界で一番人気のアーティストが韓国語を話し、欧米のアーティストではないことがとても特別に感じます。全世界が一つの家族だという面で希望的だと思います」。

アジア人であるというだけでBTSを差別的な目で見ている人々は、まだまだたくさんいる。人種だけでなく、これまで崇められてきたマッチョで強い男性像とは違う彼らのスタンスに対して、否定的な人たちもいる。けれども、人種を問わず、世代を問わず、性別を問わず多くの人に愛される象徴となっていることもまた事実だ。

私は、彼らが世界に飛び出し、評価され、知名度を上げたことは、世界における多様性向上の第一歩のような気がしてならない。

また、彼らが常に私たちに投げかけてくれる「LOVE MYSELF」というメッセージもそうだ。誰かに合わせなくていい、誰かの真似をしなくてもいい、誰とも比べなくていい。彼らに影響を受けて、ありのままの自分でいることを選ぶ人が増えたなら、本当の意味での多様性のある社会が実現すると思うのだ。

しかしながら、彼らが広めようとしてくれている多様性の輪も、心理的安全性と謙虚なリーダーシップがなければ効果を発揮しない。自分と考えの違う人であっても、否定や怒りで反応するのではなく、許容してどう共存していけばいいか考えることを、私たちは日々繰り返して行こう。そうすることで、誰もが心理的安全性の中で自由に発言できるできる世の中になるだろう。

そして、誰が一番偉いかを競い合うのではなく、権力にしがみつかず、一人一人が意志をもって能動的に振る舞えるような謙虚なリーダーシップを、立場関係なく築いていけるように心を砕こう。そうすることで、誰もが自分の人生の主人公だという実感を抱くことができるだろう。

以前、「BTSは世界平和の一端すら担っているのではないかと、私は本気で考えている」と書いたことがあった。その想いは変わらないどころか、ますます高まるばかりだ。

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今回、推しのセンイルに捧げるコラムとして、喜びを感じながらこれを書き上げることができた。「多様性」には「心理的安全性」が必要で、「心理的安全性」には「謙虚なリーダーシップ」が必要で…と、彼らのチームとしての強さを示すために掲げた3つのキーワードが有機的につながっていて、これまでBTSのメンバー同士の関係性を見てきて「いいなぁ」と思っていたことを、根拠を持って示すことができたからだ。

『謙虚なリーダーシップ』には、去年のコラムで取り上げた『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』からの引用もあり、私がBTSに対して感じたことに一貫性があると認められたように感じて、それもまたうれしいことだった。

私は日々ビジネス書や専門書、自己啓発書などさまざまな本を読むのだが、あらゆる書籍で理想的だとされる形が「これってBTSのことだよね?」と思えてくる。それぐらい、彼らは類まれな資質と関係性を持った人たちなのだ。

とは言え、本人たちにこのすごさを語っても、きっとポカーンとされてしまうだろう。だけどそれは彼らの行動や思考が意図的でなく、表面的でなく、ナチュラルにすごいということでもあって。そんなステキな人たちと出会い、好きになることができ、私は本当に幸せ者だなぁとあらためて思う。

ありがとうBTS。私はあなたたちのおかげで自分自身を見つめ直し、前向きに生きようという意欲をもらっています。出会えてよかった。カムサハムニダ。

そしてホビ、HAPPY BIRTHDAY!!!大好きだよ!!!あなたの幸せを心から願っています。

2022年2月18日 推しの誕生日に、リビングでビールを飲みながら。(完)

参考文献

『多様性の科学』(マシュー・サイド著)

『恐れのない組織』(エイミー・C・エドモンドソン著)


『心理的安全性のつくりかた』(石井僚介著)


『謙虚なリーダーシップ』(エドガー・H・シャイン、ピーター・A・シャイン著)



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