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文【私は会話が不得意だ】

私は会話が不得意だ。
人と話したあとは、必ずそう思ってしまう。
なぜなら好奇心がでしゃばり、前に進むのを止められないから。
知っていることを話したくなるから。
どうしてその考えになるのか聞きたくなるから。
未知の世界に足を踏み入れるのが楽しいから。
でもほとんどの人は、私の好奇心と理解したいという気持ちに押し潰され、黙るか怒るか、相手の言語化を手伝うかの、ほぼ三択になる。
私の知りたい気持ちはいつも置いてけぼり。
磨かれた宝石のようなつるつるの小さな小さな石を、河原から見つけ出すくらい目を光らせれば、私の好奇心に応えてくれる人と出会えるが。
人と長く付き合うというのは、会話よりも難しいということを突き付けられる。
せめて「そのことについては答えられない」とか「分からない」とか「知らない」「私に分かるように言って」「その言葉は失礼だ」と、理由を教えてくれたら良いのに。
私のことを心が読める人間だと思っているのだろうか。
「あなたなら分かるでしょう」という態度を、とても分かりやすく示してくる。
今にも襲いかかってきそうな、殺気立った動物のように、とても分かりやすく。
私は超能力者でもなんでもない、ただ好奇心があるだけの人間だ。
言葉にしてくれなければ、何も分からない。
そう伝えても、私と話す人には伝わらない。
私は会話が不得意だ。
聞き役にまわっても意見を求められる。
笑顔で頷いているだけでは駄目だと思い知らされる。
私の知りたい気持ちはいつも置いてけぼり。
どう思っているかなんて、どう考えているかなんて、どうしてその答えになるのかなんて。
私が知りたいのに。

なんで。なんで。なんで?

その気持ちだけが、埃のように溜まり、何十年も放置された鉄のように錆び付く。
それでも、私の好奇心は止まらない。
止められない。
きっと心臓が埃と錆で固まっても、この気持ちだけは止まらない。

私は会話が不得意だ。
人と話したあとでなくても、必ずそう思ってしまう。
私の好奇心が芽生える限り。
ずっと、ずっと。
不得意なままだろう。



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