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葉月Lエンデ
2023年4月2日 16:46
「じゃ、じゃあ、作戦会議を始めます」 一ノ瀬が言うと、だるそうに座った銀次郎がつっこんだ。「学級会議みたいなノリだな」 なんて生意気な小学生だ。そもそも、先程から気になっていたが、この少年、小学生とは思えない鋭さがある。やはり天才ボスの血を引いているせいか。 一ノ瀬、エンヤ、銀次郎は、例の部屋で埃まみれの机を雑に並べて円卓会議を始めた。「えっと……まず聞いておきたいんだけど、なんで銀次
2023年4月5日 17:50
埃っぽい机の上に、銀次郎はリュックから妙な機械を取り出し、設置した。「なに? それは」「言ってもどうせわかんないだろ」 そうだろうけど、かわいくない奴め……。「わかりやすく言えば、データの読み込みとか解析とかできる機械だよ。しょーじさんがくれた」「しょーじさん?」「自分のボスの名前も知らねーのかよ。これだから新人は」 そういえば有り得ないことに、一ノ瀬はボスの名前を知らなかった。さ
2023年4月9日 17:00
一ノ瀬は駅前にある親子丼の店へ直行した。初めて本社に来た時から気になっていたのだ。幸い、まだ夕飯時には少し早かったため、並ぶこともなく席につけた。メニューは親子丼以外にも魅力的なものが揃っていたが、目当ては揺るがない。数分も経たず、運ばれてきた親子丼は期待以上のもので、一ノ瀬は心も腹も満たされた。 会計の前に一口水を飲んでから……と、何気なく店の外に目をやると、忘れられないあのシルエットが。ケ
2023年4月12日 19:45
「ロン! トイトイ、三暗刻、ドラドラ……18000。悪いわね」「くっそぉぉぉ! 跳満かよぉぉ」 お世辞にも綺麗とは言えない雀荘に、場違い過ぎる華やかな女性。この数時間、くたびれたおっさん相手にゆるふわのロングをかきあげ、麻雀牌を華麗に切っている。『もしもし? 凛子さん、聞いてます?』「あーごめん。聞いてなかったわ。お友達がなんだって?」 通話をしながら、手牌を睨む。『いや、だから結局は
2023年4月16日 17:16
ちっくしょう。なんでこんな面倒なことに。時は遡り、昨日昼過ぎのこと。後藤は路地を必死に走っていた。眩しい空を苦々しく睨みながら、走る足がもつれてくる。そう、この男が現在一ノ瀬たちが追っているL38を盗んだ犯人。陰では薄らハゲなんて言われていたが、こう見てみるとそこまで薄くもない。本人はまだ若いのに薄くなってきたとかなり気にしていたが、周りはそれほど気にしないものだ。そして何度も「知らないおっ
2023年4月19日 17:55
前日にそんな後藤の葛藤があったとは知らない一ノ瀬たち。ミクブロとトイパラの強力タッグで後藤を追い詰めようとしていた。正直、情報を探っていたケイには、後藤がただの捨て駒だということはわかっていた。片棒を担がされた頭も運も悪い男。しかし、実際にL38を奪って逃走しているのであれば、実行犯を捕まえるチャンスである。それに、後藤という男なら簡単に捕まえることができる気がしていたのだ。 なのに。なぜか
2023年4月23日 17:37
銀次郎とエンヤもまた、一ノ瀬たちと同じ駅に向かっていた。お菓子を買うためにコンビニに寄り、かなり長いこと吟味していたため少し出遅れたが、やはり現場のそばを捜索するのが筋、と銀次郎は心得ていた。一ノ瀬たちと三人で基地にした場所も気になるし。あの部屋が結局なんだったのか、一ノ瀬は教えてくれなかったけれど、なにか事情がありそうだった。きっと今回の事件になんらかの関係があるはず。銀次郎は冴えていた。だっ
2023年4月26日 17:58
角を曲がったとこでばったり、なんてシチュエーション、実際に存在するんだな。後藤は隣を歩く赤いメッシュの女性をちらちら見ていた。エンヤって変わった名前だな。イントネーションが独特。日本人に見えるけど、海外の血が入っているのかもしれない。正直、自分は他人の迷子捜しにつき合っている場合ではないのだが、困っている女性は放っておけない。後藤はまた横目でちらっと見た。小柄なのに背筋がシャンと伸びて、かわ
2023年4月30日 17:11
一ノ瀬とケイは完全にパニックになっていた。エンヤが後藤と行動を共にしている。遠目にわからないが、とても追う者と追われる者の雰囲気ではない。まあ、しかしエンヤのことだ。後藤を前にしても普段通り接していそうな気もするが……。「これは……どう解釈すればいいのかな」 頭を抱えるケイ。「僕はエンヤさんをよく知らないからわからないんだけど……彼女は何をしているんだろう?」 一ノ瀬はまだ左目から涙を流