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5.考察 5-2.個別報告書について

約3年前の調査研究当時は個別報告書のうち、旧矢中邸のみ実地見学をしました。見学をした際に保存活用する団体代表の井上さんからNPO法人設立の経緯等のお話を聞く機会がありました。さらに井上さんご自身の修士論文を拝見することができました。ぜひ、中島知久平邸、旧毛利家本邸も訪ねたいと考えています。

5-2.個別報告書について
中島知久平邸(1931年建築)は軍需産業の中島飛行機製作所の創設者である中島知久平、旧矢中邸(1949年建築)はセメント研究者であり(株)マノールの創業者である矢中龍次郎、旧毛利家本邸(1916年建築)は旧萩藩主公爵毛利家により建てられた、近代における和風大邸宅で贅を尽くした室内装飾となっていた。和風でありながら西洋風を取り入れた和洋折衷の意匠となっている。
織物は、襖、地袋・天袋の小襖、扉、壁に使用されていた。襖・小襖に織物が使用されることは前近代にもあったが、扉・壁については近代以降に使用されるようになったのではないかと考える。旧矢中邸の別館2階応接間の襖に張られた金地洋風草花文の絹織物については、西洋式の迎賓のために導入したソファに合わせて、伝統ある西陣織を使いながらも洋風の草花文を選んだのではないか。前近代にはなかった近代以降の織物の使い方ではないかと考える。

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