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旧矢中邸で素敵な裂使いを発見

つくば市に国登録有形文化財に指定された旧矢中邸があります。セメント防水剤の研究者であり、(株)マノールの創業者である矢中龍次郎の邸宅で、贅の限りを尽くした近代和風建築です。

矢中龍次郎が死去して以来ほぼ40年間空き家状態でしたが、2008(平成20)年に旧矢中邸の所有者が変更となることを契機に、地域において旧矢中邸を文化財として再評価し保存活用する機運が高まり、現在「NPO法人矢中の杜の守り人」が保存活動を行っています。
見学をした際に代表の井上さんからNPO法人設立の経緯等のお話を聞く機会がありました。さらに井上さんご自身の修士論文を拝見することができました。『近代和風建築「旧矢中龍次郎邸」の文化財的価値の評価』(松浦、2008)です。旧矢中邸の建築的特徴がとてもよくわかります。

邸宅を見学してみますと、本館1階食堂の日本画家・南部春邦が動植物を描いた色鮮やかな板戸、長さ5370mm・幅470mmに及ぶ桜の一枚板を天板に使用した家具、壁上部に四周に廻している日本画家・北川金鱗作の水墨画(茨城県教育委員会、2017、37)など、確かに贅沢三昧すぎです。
そして、別館2階の応接間でとても素敵な裂使いを発見してしまったのです。
応接間の左の収納扉には鶯地花菱小葵と菊唐草文の裂が張られていました。右の書院の地袋・天袋の小襖には緑地に丁子唐花文の裂が張られていました。色といい文様といいどちらもそれぞれ吟味されて選ばれたんだろうなあと想像されます。それだけでも十分素敵なのですが、対面の壁に飾られている2枚の日本画の額装に目が釘付けに!なんと一方には鶯地花菱小葵と菊唐草文の裂が、もう一方には緑地に丁子唐花文の裂が使用されていたのです。なあ〜んて素敵な裂使いでしょうか。インテリアファブリックコーディネートというよりも、室内装飾織物という言葉がぴったりきます。

旧矢中邸で出会った素敵な裂使いもまた、私を室内装飾織物という世界の旅に招待してくれた建物がたりです。

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