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第30話「鳩が飛ぶのを見てみたい」

新横浜駅から離れたビルの三階に、後藤の探偵事務所があった。事務所兼自宅なので、言うなれば彼の住まいでもあった。

昼間、彼の仲間で中心人物とも言える女とカフェレストランで話し合った。女の方から余計な詮索をしてきたので気分は良くないが、女の言うとおり和泉麻里奈を殺すことに躊躇ったところはあった。

それは本音だったけど、まさかそんなことを言えるわけがない。

組織を裏切る訳じゃない。自分たちの行動は組織を守ること。裏切り者が誰かなんて考えることが裏切りなのだ。そんな組織ができたのは今から数十年前と言われている。

組織の名前は無い。名前付けることに何の意味もないからだ。自分たちの欲望を満たす為に結成された組織なのだから。組織の構成員は以下の通りである。リーダーの一人とも言われている女。但し本人がリーダーとは名乗っていない。

自然と周りがリーダーに祀っただけ。だが本人は満更でもない様子。計画など率先して行っている。

仮に女Aとしよう。何故なら女の構成員は女Aを含めて三人もいるからだ。

女Aが中心的に行う理由は誰もが知っている。それに関して誰も文句は言ってこない。女Aの人脈や、ある組織の知り合いが多いのも理由だった。現在の構成員を簡単に紹介しよう。

女A・・・・・・リーダー格の人物でこれまで殆どの計画を企てている。

女B・・・・・・闇の業界で噂以上の美人と言われている。大抵の男は彼女の手にかかればイチコロである。

女C・・・・・・真面目な風貌だが、手に入れる為なら何だってやる女。

男A・・・・・・元刑事で現在は探偵。

男B・・・・・・通称詐欺師と呼ばれている男。

この五人が幹部クラスで、世界中に構成員が散らばっていると噂されている。組織はある秘密の印で結ばれていた。その秘密の印とは鳩のタトゥーを身体のどこかに彫っている。

つまり、後藤率いるメンバーは、警察内部だけで知られている集団強盗の一団なのだ。

煙草に火をつけて、後藤はベッドの上に座り込むと部屋の時計を見つめた。時刻は真夜中を過ぎていた。今夜、大貫咲と待ち合わせの約束をしていたが、数分前、今夜は事務所に来れないと連絡があった。

これでは予定の殺しができない。昼間のカフェレストランで今夜始末すると伝えていた。

このままじゃ計画通りに進まない。後藤は迷っていた。今夜の計画は中止だと女に伝えるべきか。そんなことを伝えれば、きっと女は怒りを露わにするだろう。またイヤミを言われる。それに後藤自身に危険が迫っていた。

もしも、和泉麻里奈が目を覚ましたら、刺した犯人が後藤だと言うことを警察に話す。そうなったら、女の言うように指名手配されてしまう。

そうなったら終わりだ。

解決する道は一つしかない。今度こそ和泉麻里奈を殺すしか手はない。入院してる病院もわかっている。しかも、まだ警察の方も警戒はしていない。だったら、良いタイミングじゃないか。

要は自分の足が付かなければ良いってこと。そう考えた後藤は、煙草を灰皿に投げ捨てて上着を着て玄関へ向かった。

和泉麻里奈の息の根を止めに・・・・・・

第31話につづく

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