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図書館の彼女 7.

 春休みに入って数日が経ったある日、僕は春樹を連れて美空さんに会いに行った。テスト期間中はずっと試験勉強に明け暮れていたので、久しぶりに彼女と会う機会が楽しみで仕方なかった。春樹を連れて行く理由は、メールで美空さんが僕の友達を見てみたいと送ってきたからだ。
「初めまして。栗原春樹です」
 春樹が堅苦しく挨拶をすると、美空さんは「進藤美空です。よろしくね」といつもの笑顔を作った。
「少し堅苦しい感じに見えるだけど、意外と良い奴だから」
 僕がそう紹介すると、彼女は「想像通りだから大丈夫」と微笑む。「それって、褒めてるの? 貶してるの?」と春樹が困惑したように聞いてくるので、僕たちは思わず笑みを零した。

「進藤さんは、講義って受けてるの?」
 少しの時間三人で話した後、春樹はしれっと爆弾を放り投げるように美空さんに聞いてきた。案の定、場の空気が凍りつくように冷たくなった。
「どうして、そんな事を聞くの?」
 美空さんから笑顔が消え失せた。少し動揺しているのか、彼女の視線は春樹を見ようとしていない。
「ここでバイトしてる先輩が言ってたんだ。進藤さんはいつも、閉館時間まで外に一歩も出ないって」
 春樹は凍りつくような空気を察していないのか、質問を止めようとはしない。僕が春樹を止めようとすると、美空さんは口を開いた。
「受けてないよ。履修登録はしたけど、怖くて外に出れないの」
 彼女の目はひどく怯えている。そして、手が震えている。彼女はなぜ外に出るのを極端に嫌がるのだろうか。
「怖いって、何が怖いの?」
 気になった僕が美空さんに尋ねるけれど、彼女が答えることはなかった。

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