映画「港町」ふつうの光景から見える強烈な背景

相田和弘監督による、岡山県牛窓という寂れた港町を舞台にした観察風ドキュメンタリー。

中盤までは過疎化がかなり進んだ港町の風景を写し撮った映画という感じで、魚屋さんの1日なんかも観察できて寂しくもマッタリしているのだけれど、ある人物の登場を境に空気が一変する。

「クミさん」なるその老婆は他人のセンシティブな一面になんの遠慮も思慮もなくズカズカと踏み込み、さらに長話が大好きという非常に厄介な人物である。よせばいいのに、相田夫妻はこの人物にクローズアップしたがる。(自分なら撮影辞めて帰ってるわ)

本編におけるとくに強烈なシーンはふたつあって、クミさんが自身の生い立ちを異常なまでに長々と語るも何を言ってるのかまったく理解できない場面。

そして、彼女がすぐそばにいる知り合い(多分友人とは言えない)を無自覚にこきおろし、当人からきわめて厳しい目線を送られるもまったく意に介さない場面である。こうしたところを見せられて、クミさんが良い人とはとても思い難い。
(フォローしておくと、クミさん自身も壮絶な人生を送ってきたことは理解できる)

この徹底的に突き放した雰囲気は同監督の「精神」とよく似たものがある、なんて思っていたら、この映画もまた非常によく似たラストシーンを迎えるのでビックリした。

この監督の人柄はあまり好きではないのだが、撮る作品はなぜか観てしまう。徹底して突き放しつつも、食いついて離れない点に引き寄せられてしまうのかもしれない。

でも、この映画は落ち込んでいるときにはあんまり見ない方がいいかもしれない。


それにしても、雲の隙間から差す日差しがきれい。

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