映画レビュー「とべない沈黙」~芋虫の不思議な旅

「とべない沈黙」
ある一匹の蝶の幼虫がさまざまな不可抗力によって日本ないしは海外を旅し、その過程でいろいろな人間ドラマが描かれる映画。

主人公が飛べない幼虫ということもあって、その目線は非常に独特。彼女の目の前ではさまざまな悲劇や喜劇、裏切りや策謀、そして殺し合いまでが繰り広げられるが、どこかしらSFチックというか、舞台が現代なのに非現実的なものを感じさせられる。離人症というか、日々の大変な用事や関係に押し潰されそうな人であれば、この視点には共感してくれると思う。

幼虫の行く先々ではある共通した人物が出てくるのだが、果たしてその関わりはなんだったのか。考察の余地は十分にあるだろう。

よく似た作風の映画として「バルダザールどこへ行く」がよく挙げられるが、あれほど鬱々しくはないので気持ちを落ち着けて見られるかもしれない。

とはいえ、そこには確かな作家としての矜持がある。とても不思議なモキュメンタリー風ロードムービー映画。

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