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定期演奏会

今日は所属している団の定期演奏会である。だからちょっと忙しい。関東に来てから早いもので三回目だ。
一度目は合奏たった五回という、ゾッとするような準備状況で乗った舞台だったが、それ以外は夏のコンクールが終了してからずっと練習してきた。
今回は団の『節目』の演奏会に当たっているので、大掛かりな演目になっている。

実は不思議なことに、私は今まで団の『節目』の演奏会に殆ど出られたことがない。
最初の楽団は創団五周年の演奏会を前に結婚が決まり、演奏会のことなど気にしている暇もなく、スケジュールに追われるように慌ただしく退団し、住み慣れた土地を離れた。
次の団は三十周年の演奏会のメイン曲『教会のステンドグラスより(O.レスピーギ作曲)』の楽譜を貰って、『やったー!やりたかった曲だあ!』とホクホクしながら帰宅したら、夫に
「おい、転勤決まったぞ」
と言われて、泣く泣く楽譜を返却した。
次の楽団は丁度参加した最初の演奏会が第二十一回だった。ここでは十五年ほどお世話になったので、第三十回には奇跡的に参加出来た。
もしかしたら『節目』の演奏会に参加できるのはこれっきりになるかなあ、と思っていたが、今の楽団では在団三年目にして、運よく『節目』の演奏会に参加できることになった。
こんな少ない在団年数で『節目』の演奏会に参加できるなんて、つくづくツイていると思う。

『節目』の演奏会は皆何かしら工夫を凝らして、記念になる、印象に残る回にしようとする。例えば普段はあまり出来ないような大きな曲をやったり、特別なゲストを呼んだりといった具合だ。
こういう企画があると演奏する楽しみが一層増す。舞台の上でも意識の半分くらいが『観客』である私にとって、特に素晴らしいゲストにお越し頂いて一緒に演奏させて頂くのはこの上ない喜びである。
今回の演奏会には素晴らしいゲストが沢山来て下さる。昨日のリハーサルで、私は既にワクワクしていた。
今から本番が楽しみでしょうがない。

どんな演奏会でも、一つの舞台を作り上げるのは大変だ。
練習は勿論、そこに至るまでの諸々の準備は気の遠くなるくらい、膨大な作業である。面白いことばかりでもない。
しかし仕事だったら絶対に嫌だと思うようなことでも、『好きで仕方ない』というのは恐ろしいもので、かなりしんどい時でも結構全力投球で乗り越えてくることが出来た。
『こんなバカバカしい思いをしなくても、もっと楽に楽しめるのでは』と思ったことは、両手両足の指を全部使っても足りないくらいある。けれど中毒症状のようなもので、私の中ではそういった『バカバカしい思い』も、演奏会に参加する醍醐味の一部になってしまっている。
そしてそこにはいつも私と一緒に舞台に乗ってくれる、大勢の仲間がいる。
一緒に演奏した人の数は一体何人になるのだろう。
最初の団が七十人。次の団が百十人。その次は五十人。今の団が七十人。
ざっと三百人くらいになる。一度きりしかご一緒出来なかった人や、共演した団体もあったから、全部トータルで数えれば五百人近くだと思う。
普段の生活で、これだけの数の人と一緒に何か一つのことを成し遂げる、というのはまずあり得ない。
こんなに多くの人との縁に恵まれてきたなんて、私はなんて幸せな人間なのだろう。

『節目』の演奏会こそ少ないけれど、私は一体今まで何回の定期演奏会に参加してきたことだろう、と考えると凄い数になる。
最初の団で二回。次の団で五回。次の団が一番多くて、多分十回。コロナで休止になってしまったから、二回くらいは損?しているけれど、まあまあの回数だ。
今の団が三回目だから、だいたい合計二十回というところか。
大の大人が嬉しそうにいつまでも、五十面下げて何をやってるんだか、と演奏会の度に自嘲的に思う。
でも楽しいからまだ当分やめられそうにない。

いつもいつも、笑顔で送り出してくれる家族に。
快く休みをくれる職場のみんなに。
私と関わってくれる全ての人々に。
回を重ねるごとに、感謝の気持ちは深くなっていく。
皆様、本当にありがとうございます。
今日も目一杯、全力で楽しんできます!