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ワクワクは火中の栗にある

先週の合奏練習時、パートリーダーから相談がある、と話しかけられた。
何かと思えば、パート移動の話である。移動と言っても、同じ楽器の特殊管への移動であるので、ちょっと隣の家に引っ越すくらいの雰囲気の話である。

普通、学校の吹奏楽部で「クラリネットを吹いてる」と言えば、お馴染みのクラリネットである。
私も現在はその“普通のクラリネット"を吹いている。本業(本趣味?)はこちらである。

以前はバスクラリネットというデカいクラリネットを吹いていた。私の身長くらいあり、太い暗い音が特徴である。
クラリネットという名前が付いてはいるが、役割としては吹奏楽団の中ではファゴットやバリトンサックスの仲間で、『木管低音』という部類に入る。

今回私が移動を打診されたのは、エスクラリネットという小さな楽器である。
エスと言ってもサイズのSではない。音程のE♭(ドイツ語読みでエス)の事である。
楽譜にドの音が記されていて、ドの運指をして吹くとピアノのミの半音下の音が鳴る。こういう楽器を『移調楽器』という。

このエスクラリネット、見た目は可愛い。普通のクラリネットをギュッと縮めた外見なので、マウスピースも、その他のパーツも、付属品もミニサイズになっている。
だが外見とは裏腹に、とてもスリリングな楽器なのだ。

当然、短い楽器ほど高い音が鳴る。
エスクラリネットはピッコロ程ではないが、かなり甲高い音が出る。主に『超高音』部隊のメンバーで、ピッコロやフルート、オーボエ、等の仲間である。
クラリネットと一緒に動く事も多いが、どちらかと言えば上記メンバーとの方が多い。

音が高いと言う事は、それだけ目立つ。加えてこの楽器、とても音程が不安定なのだ。
目立つ音で、音程を乱すとどうなるか。
そう、たった一本でサウンドを台無しにし、十分『楽団の破壊者』になり得る恐ろしい楽器なのである。

現在、この恐ろしい楽器を私のいる楽団で吹いている人が、仕事の都合でなかなか出席出来ずにいるので、次の演奏会に備えてもう一人養成しよう、という事になったらしい。

以前在籍した楽団では吹いていたが、もう離れて随分経つ。
大丈夫かなぁ、と不安にはなったが、やってみたい気持ちが勝った。頑張ってみます、と返事した。
誰もやりたがらないので、パートリーダーはとても喜んでくれた。

興味のある事に対しては、ちょっと高めの壁の方が燃える。乗り越えるために頑張れる。
周りの音を注意深く聴く練習にもなるだろう。
私にはちょい高めの壁だけど、頑張ってみよう。

色々あるだろうが、全て私にとって良い経験になるだろう。
これからの上手くなるための道のりに、今からワクワクしている。