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身につける物を選ぶ

靴売り場に居ると、皆さんが合わない靴を買っていかれる事に驚く。理由は色々あるが、一番多いのは『安いから』。続いて『このデザインが好きだから』。『柔らかいから』という方も多い。

結論から言うと、どんな理由があっても合わない靴を履くのは絶対に良くない。外反母趾、陥入爪、タコ等の足のトラブルは合わない靴を履くからおこる。肩だって凝る。疲れやすい。良いことは一つもない。

外反母趾は多くの人が悩んでおられると思う。私の右足も軽い『ハンマートウ』になっている。親指の付け根がボコンと飛び出ている為、靴に当たって痛む。
仕事でパンプスを履いていた若い頃は、夜寝床に入ってからもこの付け根がズキズキ痛む事があった。今はほぼスニーカーしか履かないのでそんな事はなくなったが、内側に傾いた親指が人差し指に乗っかろうとするので、浮き指にならないよう時々意識している。

私はなっていないが、陥入爪は重症だと歩く事も辛いようだ。お世話になっているフットケアラーによると、爪というのは本来は“巻いて"生えてくるものだそうだ。そういえば、犬や猫の爪も巻いている。
人間の足指は歩く時地面にぐっと押し付けられる為、指の腹が爪を押し上げる形になり、爪が巻くのを防いでいるらしい。
外反母趾等で足指の並びが不自然になり、浮いている状態の指が出てくると、この指は地面に触れないことになる。すると指の腹が爪を押し上げられないので、爪が自然のままに巻いてしまい、指の肉に食い込んでしまうのである。

『柔らかい』靴は確かに一見楽そうである。が、これは長時間歩くのには向いていないと思う。
柔らかいということは、足が靴の中で安定しない、という事である。安定しないと言うことは、あちこちに動く。つまり靴と足との一体感はないという事になる。
足の裏のアーチが崩れ、足が痛んだりするようになってしまう。

私が今履いているのは『整形靴』というものである。足にトラブルを抱えている人専用の靴で、これだと足が痛くなったり、すぐ疲れてしまったりしない。なぜかスウェーデン等北欧やヨーロッパのメーカーの物が多い。従ってお値段は結構良い。が、合わない靴を履いてグッタリ疲れるより、こっちのほうが100倍快適であるから、何足か持っている。

踵をキチンと合わせ、紐靴なら紐をキチンとキツく締める。甲にピッタリフィットさせるのが必須条件だ。この状態だと、整形靴でなくても合っている靴なら問題ないらしい。
こうやってピッタリ合わせた靴は、本当に軽い。足のホールド感がある。商品そのものが軽いというより、自分の足が軽い感じがするのである。

一般的な市販の靴は、メーカーや素材によってサイズ感も微妙に異なる。私がいる売り場には子供靴の取り扱いはない(子供用品売り場にある)のだが、まれに大人用の靴を安いからと子供用に買い求める方がある。これはわかれば絶対にお止めしている。
同じ24・5cmでも、子供用と成人婦人用と成人男性用ではそれぞれ大きさが違う。それに子供用は子供の成長を考えて作ってある。その事を説明すると大抵の方は思いとどまって下さるが、中には
「平気、平気」
と買っていかれる方もある。
お客様の望みではあるし、売り場の人間としては売れた方が嬉しいのだが、健康を害する事をわかっていて売るのは気が進まない。

自分のしっくり感を無視して合わない靴を履いていると、ろくな事にならない。だから私は必ず『お試し履きをされましたか?』と聞くことに決めている。
案外、試し履きをしない人は多い。『いつもこのサイズだから』と仰る。メーカー、素材などによってサイズ感は異なる事もある、と説明すると、じゃあ一度履いてみようか、となる方は多い。それで購入をやめられるケースもあるが、私はそれで良いと思っている。お客様の為だ。

何でも自らがしっくり来ない物を身につけるのは、身体にも心にも良くない。何度も試して、これ!と言う物を慎重に選ぶのがベターだと思う。