知らんがな
レジ業務をやっていると、これだけは勘弁こうむりたいと思うことにほぼ毎日出くわす。
先ず、勝手な都合での返品。「同じような物を以前買ってたのを忘れてまた買ったから」「色が気に入らないから」「ちょっと大きいから」はまだ良い。
折り畳み傘を無理に畳んだが為に、骨が曲がってしまったのを「これ、骨弱い。不良品じゃないの?」。自分が値札を切る時に、勢い余って布部分を切ってしまったのが見え見えなのに「布が切れていた。知っていたら買わなかったのに」…などなど、お客様はありとあらゆる言い訳を用意して返品に来られる。
折り畳み傘の骨は軽量化のため、大抵細くもろい。風にも弱い。無理は禁物なのだが、製品が悪い所為にされる。
長傘はレジで必ず開いて動作の確認と、穴が開いたり(製造段階でごくまれだがある)していないかの点検を行う。ハサミを入れた跡などあればこの時一目瞭然であるから、絶対に販売しない。布の切れた傘を販売する可能性はゼロに等しい。
大体の場合、返品には原則応じている。だが、こういう品物を引き取って返金を終え、お客様の受領サインを頂いて「申し訳ございませんでした」と深々とお辞儀してお見送りした後には、何とも言えない不快な感じが残る。
担当部署外の商品へのお尋ね。
私達は従業員であるから、『店内』のことはお客様よりは知っている。しかし、全ての『商品』の事を把握している訳ではない。
「キッチンマットの長さは何センチが最長なの?」
と靴のレジで聞かれても困る。該当フロアに行くよう案内すると、
「ここでわからないの?あなたここの人でしょ?」
と仰る。はい、ここの従業員です。靴、服飾雑貨担当ですけどね。
インカムでやり取りはできるが、物を見ていないので詳細はやはりその売り場に行って頂いた方が良い。別の商品を案内できるかも知れないし。ご立腹されても、途方に暮れるばかりである。
夏休みには大量の硬貨両替。
私的なご用はお断りしているが、コインロッカー、ガチャポン、公衆電話の利用をされるお客様の硬貨両替は承っている。
最近のガチャポンはどうも高いようで、1000円ではいくらも出来ないらしい。夏休みになると、おばあちゃんが可愛い孫の為に汗水たらして両替に来られる。
実はレジの機械には硬貨はあまり沢山入れておけない。『棒金』という50枚でパッキングされた硬貨はほんの数本しかストックできない。100円の棒金は4本が最高であるから200枚がマックスである。
が、多い人だと一度に50枚近くの両替に来られる。同じような人が4人来られたら、たちまち100円切れになってしまう。
一回当たりの枚数を10枚までに制限はしているが、繰り返し来られるのであまり意味がない。
本来のレジ業務に支障が出ることになるし、そもそも両替は一銭も儲からない。いくら可愛いお孫さんの為であっても、大量の両替はとても困る。
「おばあちゃん、もうお金ないのよー」と言って頂けないかなあ、と真剣に思う。孫の教育の為にも良いんじゃないか。
よくわからない理由で突然レジで怒り出す人は手の付けようがない。
『レジ袋が5円は高い』と私に言われても、知らんがな。私が決めたわけではないし。だが『申し訳ございません』という言葉でお茶を濁すしかない。
防犯カメラがそんなに嫌ですか。何か後ろめたいのですか。あ、当方が暗証番号を盗み見してると。あなたのお金を狙っている誰かが当店にいると…そこまで映ってませんけど、なんならご確認なさいますか、と言いたくなる。
そんなにいろんなところで怒りのスイッチを入れてたら、疲れないだろうか。心の底からの疑問である。
殆どのお客様は有難くて、お見送りした後は『接客業って楽しいなあ』と思えるのだが、こういう残念な事もままある。
自分を客観的に見られない人間は迷惑なものなのだ、と自らに言い聞かせる日々である。