客観的な労働時間の把握について
労務 Advent Calendar 2021の2日目の記事です。
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2019年に働き方改革関連法案の施行がスタートし、2年が経過しました。年5日の有給取得義務化や時間外労働の上限規制など、大きな動きがある中で「客観的な労働時間の把握」もこの関連法案に含まれています。
また最近のIPOに向けた労務管理の中で、この客観的な労働時間の把握が厳しく見られるようになってきています。ここでは、客観的な労働時間の把握とは何なのか、どのように把握していくのか、について書いていこうと思います。
2017年の労働基準法のガイドラインが起点
2019年の働き方改革関連法案の施行で客観的な労働時間の把握にスポットがあたりましたが、その方法は実は2017年に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」という名目で発表されていました。当時は過重労働に加え、残業代の未払い防止が目的として設定されました。
働き方改革関連法では健康管理の側面で労働安全衛生法が改正
2017年が残業代の未払い防止が目的だったのに対し、2019年は労働者の健康確保措置を適切に実施する観点からの改正となりました。(労働安全衛生法第66条の8の3)
そしてこの法案に対する解釈について2017年に制定されたガイドラインの内容が使われているのです。
では、これからガイドラインの内容を説明していきます。
労働時間とは
そもそも労働時間とはいつからいつまでを指すのでしょうか。ガイドラインでは以下のように説明されています。
使用者=会社と置き換えていただいてOKです。つまり、会社の管理下に置かれている時間は労働時間となります。それ以外でも会社の指示の下に働く場合も労働時間です。ここでいう指示はいわゆる「暗黙の了解」も含まれます。ちなみに以下のような時間も労働時間として扱われます。
対象者
従業員の健康管理が目的なので、裁量労働制や管理監督者等、すべての従業員が対象となります。なお委任型の役員の場合は従業員扱いではないので対象外となります。
労働時間の把握方法の原則
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によることとされています。
「現認」とは「その場で直接見る」という意味です。またタイムカードやICカードは出社することを前提に考えられています。(タイムカードは昔ながらの打刻機にガッチャンするやつです)
ただここ数年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から在宅勤務を取り入れている企業も多いと思います。在宅勤務の場合、タイムカードやICカードでの記録は使えないので、パソコンの使用時間の記録等で対応するか、以下に説明する自己申告制の方法のどちらかとなります。
自己申告制をとる場合
自己申告制を採用する場合は以下の項目を網羅しておく必要があります。
1.従業員への十分な説明
実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うこと等について十分な説明を行うこと
2.管理者への十分な説明
実際に労働時間の状況を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと
3.申告と実態の乖離について調査する
自己申告により把握した労働時間の状況が実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の状況の補正をすること
4.労働時間か否かについて適正に管理する
自己申告した労働時間の状況を超えて事業場内にいる時間又は事業場外において労務を提供し得る状態であった時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。 その際に、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間の状況ではないと報告されていても、実際には、事業者の指示により業務に従事しているなど、事業者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間の状況として扱わなければならないこと。
5.自己申告を阻害するルールはNG
自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、事業者は、労働者が自己申告できる労働時間の状況に上限を設け、上限を超える申告を認めないなど、労働者による労働時間の状況の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の状況の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該阻害要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
在宅勤務の場合はログ取得が必要
在宅勤務の場合は、勤怠クラウドサービス等を使って自己申告する形になると思います。
そうなると、上記3で上げたように「申告と実態の乖離について調査する」必要が出てきます。申告は勤怠サービスデータになるので、実態は自然とログ情報になってくるかと思います。
ログの取り方
じゃあ、どうやってログを取ればいいのか、という議論になりますがおおまかに以下4つの方法があるかと思います。
1.各従業員からログを提出してもらう
あまり現実的ではありませんが、各従業員に自身のPCログを取得してもらってデータを提出してもらう方法です。
2.情報セキュリティソフトを使う
情報流出リスクを抑える目的で情報セキュリティソフトを導入している企業の場合は、ソフトからパソコンログが取得できます。
Macも対応できるソフトとなると藤原竜也さんがCMに出ているSKYSEA等が有名です。
メリットとしては、別目的(情報セキュリティ)でも使える点、デメリットとしては勤怠データとの突合作業に工数を要する点が考えられます。ただ最近では情報セキュリティソフトの機能内で勤怠ツール上のデータとの突合作業ができるものも出てきていますね。
3.ログ収集付勤怠ツールの導入
最近増えてきているのが、ログ収集機能付きの勤怠ツールです。
メリットとしては打刻時間とログ情報の乖離を自動で行ってくれるので労務担当者の業務効率化につながる点、デメリットとしては自社の勤怠ルールがはまらないと導入できない点があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。単純に作業だけを捉えると、やらなければいけない業務が増えて億劫になるかもしれません。しかし従業員の健康確保を目的とした取り組みの一環として捉えると考え方が変わるかもしれません(変わってくれたら良いなと思ってます)。
労務の力で従業員が心身ともに健康で、企業が成長できるようにしていきたいですね。
最後にお知らせです。
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