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機械学習系プロジェクトをうまくいかせるのは、私たちエンジニアである

AI白書2020によると、ユーザー企業のAI導入状況はあまりよい状況とは言えない。実際に導入している企業から検討を予定している企業まで含めてもせいぜい20% ~ 40% 程度。導入済み、PoC実施だけで見れば10~20%程度の企業に留まる。

この記事では、AI活用が進んでいかない問題について考えを述べる。主に、同業者である機械学習エンジニアに向けて書く。特に、昔の私自身に向けて。ビジネスサイドの人に向けては書かない。

私は、データサイエンティスト・機械学習エンジニアとして、PoCに多数参画した後に、機械学習を用いたプロダクトリリースにも関わった。研究成果が1つのプロダクトになったことで、見える世界が変わったように感じているし、昔の自分の至らなさにも気づくことできた。そして、同業者の意識が少し変わるだけで業界が大きく変わっていくと思っている。

主体感持ってますか?

胸に手を当てて次の質問に答えて欲しい。

今のプロジェクト、本当にうまくいかせる気あります?

あなたの回答はどうだっただろうか。

昔の私はこの問いに即答できなかった。正直、そこまでこだわりがなかった。まあ、責任は誰かがとってくれるし、言われたことをやっていれば良い。あわよくば、美味しいところだけ楽しみたい。そんな風に思っていたと思う。要するに、技術はあっても主体感は全くない

一方で、世間的な機械学習エンジニアの見られ方はどうであろうか?高度で、希少な優れた人材というのが一般的な認識ではないか。Indeed給与検索で東京都内のエンジニア年収を検索してみると以下のようになった。明らかに給与が他のエンジニアに比べて高いことがわかる。100万円以上違う。

フロントエンドエンジニア : 年収 558万円
サーバーサイドエンジニア : 年収 585万円
機械学習エンジニア            : 年収 675万円
データサイエンティスト     : 年収 719万円

確かに、給与は需要と供給で決まる側面もある。事実、市場に機械学習系のエンジニアは少ないため、獲得コストが給与に反映されていると捉えることもできるだろう。

しかし、機械学習プロジェクトが鳴かず飛ばずのまま、他のエンジニアよりも給与が高い状況は正直困惑する。良い待遇に甘んじてはいないだろうか。地道に、毎日本番サービスを改善しているWebエンジニアと、失敗ばかりでなかなか成功しない機械学習エンジニアだとどちらかが価値を生み出せているかは明らかだ。

成功の喜びは、失敗の苦しみと隣り合わせ

機械学習エンジニアはもっと成功にこだわるべきだ。機械学習系プロジェクトを成功させるためには、エンジニアが主体的に取り組まなくてはいけない。

しっかりと計画を立て、実現可能性を検討し、実際に成功まで導く。この一連の過程で、機械学習エンジニアが果たすべき役割は大きい。業務知識や数学、プログラミングなど高度な知識の組み合わせが求められる機械学習系プロジェクトで、適切な判断や検討し、成功させられるのは私たちしかいない。他の誰も判断してくれない、というかできない。

研究開発だから、不確実性が高いからと言い訳をしてしまうけれど、だからと言って成功にコミットしない理由にはならない。私たちと同じくらい、いやそれ以上に不確実な企業経営ですら、計画を示し、実現のために動いているのである。できないことは何もない

そして、失敗した際にはしっかりと叱責され、苦しく辛い思いをする方が良い。失敗からしか、学びはない。苦しく、辛い思いは良い学びを生み出す。時に、失敗に対する恐れが成功へのこだわりになることもある。

確かに、中長期的に見れば機械学習がわかるディレクターを増やしていく必要はある。スケールしていかないし、職務範囲が大きくなりすぎて必要な人材を確保するのが難しくなるためだ。しかし、現状この分野を扱えるディレクターは少ない。この状況下で、職務範囲がなどと言っていられない。ない袖は振れないのだ。結局、やれる人がやるしかない。

成功させようと思えば、行動は変わる。誰も責任をとってはくれない。事前の準備をしっかりするようになり、博打的なプロジェクトが減る。また、多くの問題は、技術だけで解決できることばかりではなく、時には技術を離れることも、交渉や議論など外交スキルが求められることもある。できないことが圧倒的に増える。苦しく、辛い時間が増える。

しかし、私たちが主体的に関わることで成功確率が上がる。精度の高い計画と、それを実現する技術が備わってこそ成功が実現する。要するに、失敗することなくして成功はないのだ。機械学習系プロジェクトをうまくいかせるのは私たちエンジニアであるということを忘れてはいけない。

おわりに

同世代の起業家であるタイミーの小川さんの言葉を紹介します。ご都合主義になってしまう私に対して、喝を入れるためにたまに読み返します。

—— 年上の方からの言葉で、なにか印象に残っているものはありますか。

何人かで飲んでいたとき、翌日早朝から予定があったので、2番目くらいに早く帰ろうとしたんですよ。「明日早いので、ここで失礼します」って。そうしたら「えっ、もう帰るの? おまえ、この中でいちばん若いんだから、最後までいなきゃダメだろ」と言われたんです。

—— そういう“縦社会”のノリって、小川さんくらいの世代の方だと違和感も大きいでしょうね……。

でも、そこでハッとさせられたんです。その方はそういう価値観を大切にしているわけだし、20歳も年上の方にそんな失礼なことをしてはいけないじゃないですか。それに、なんか「自分の都合の良いときだけ楽しもうとしていたな」と気づかされたんです。

その方は、なにも「ずっとここにいろ」と言いたかったわけではないと思うんです。僕の人との向き合い方というか、今後人間関係を築いていくうえで、「一緒に過ごす」時間の重要さをその言葉で示してくださった。僕自身、なにかと合理的に考えるほうではあるのですが、それだけではない時間も大切であると教えてくださったんです。

引用: https://www.businessinsider.jp/post-218876 

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