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68の事例からみる日本のスマートシティの現在地 - スマートシティとは何か? -

hayashoと申します。この度、「68の事例から見る日本のスマートシティの現在地」と題して、何本かまとめて記事を書こうと思い立ちました。詳細の検討は次回以降に譲るとして、第0回目にあたるこのnoteでは、なぜ私がスマートシティについて発信するのかと、そもそも「スマートシティ」の全体像についてお伝えしようと思います。

①なぜスマートシティについて発信をするのか?

現在、私は長野県の小布施町という人口1.1万人の自治体で「総合政策推進専門官」という役職で、環境面・財政面の持続可能性の両立、官民連携による「一歩先の未来」を実現するまちづくりに取り組んでいます。

6月末に移住、7月に着任し、自分の業務内容を自分で定義していくところからスタート。せっかくこれまで国内外のスタートアップに触れてきた自分の強みを活かしたいということで、技術を活かした次世代のまちづくりを考えたいなと、ひとまず最近よく聞く「スマートシティ」についてどのような事例があるのか、調査を始めることにしました。

Googleで検索をかけて数分のうちに、多くの「先進事例」が見つかりました。しかしながら、それらを読み込んでいると、一口に「スマートシティ」といっても全く異なる事業を行っており、スマートシティの定義や取組が錯綜しているということが分かってきました。

「これはきちんと整理をする必要がありそうだな」ということで、自分の頭の整理もかねて調べてみて分かったことを、noteの連載という形で書き出してみることにしました。私自身は元々スマートシティの専門家ではない中で、「素人目線」「当事者目線」で書いていくというスタンスですので、それでもご興味をお持ちいただけた方はお付き合いください。もし文中に誤りや改善点などがあれば、遠慮なくご指摘いただければと思います。

②スマートシティとは何か?

◆国交省の定義◆

そもそもスマートシティとは何でしょうか。国土交通省の定義によれば、スマートシティとは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」とのこと。

分かるようで、分からないような...。

同じく国交省では、スマートシティの実現のために自治体の支援も行っています。令和元年5月に、全国の牽引役となる「先行モデルプロジェクト」として15の自治体が選定され、それらが中心となってスマートシティの取組が進められています。

これらの資料を見ていても、札幌市は「健康増進のためのポイント制度や都市整備」、仙北市は「ドローンを用いたスマート農業」、伊豆半島では「自動運転車による観光客の移動支援」など、「スマートシティ」に包含される取り組みの幅広さが感じられます。

その他にも、民間主導ではトヨタ自動車が旗振り役となって静岡県に「ウーヴンシティ」と呼ばれる実験都市を開発するなど、他にも日本国内だけで多くの事例が見つかります。

◆ウィーン工科大学の分類◆

学術的な観点ではどうでしょうか。オーストリアのウィーン工科大学によれば、スマートシティには、以下のような6つの分類があるとされています

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かなり意訳が入りますが、6つの定義はこんな感じです。

【Smart Mobility】
IoTクラウドやビッグデータを駆使した交通インフラの最適化による利便性の向上、コストの削減

【Smart Environment】
再生可能エネルギーの普及、IoTを活用したエネルギー消費の効率化、ごみの削減や資源活用による持続可能な社会の実現
【Smart Economy】
消費者のデータを活用、新たな決済システムの導入、シェアリングによる資源の有効活用、地域産業の活性化等、技術を活用した新たな事業機会の創造
【Smart Governance】
データを活用した公共サービスの充実、行政オペレーションの効率改善、オープンデータやサンドボックス制度による官民連携の促進
【Smart People】
スマートシティを市民生活に根付かせるためのICT教育・イノベーター教育、新たなテクノロジーと共存し得る人材育成
【Smart Living】
生活環境に関わるデータ(医療・教育・農業・防犯等)を活用することによる利便性の向上、情報共有の強化、新たな観光価値の創造

◆世界経済フォーラムの5原則◆

また、世界経済フォーラム(ダボス会議)は、G20 Global Smart Cities AllianceというSmart Cityに向けて取り組む世界の都市のアライアンスを立ち上げており、その中では「スマートシティにおける5つの原則」が示されています。

これは、技術を社会実装していくにあたって、どの分野の施策においても意識するべきポイントをまとめたものと言えるでしょう。

・Safety, security & resiliency (安心・安全・障害に強い情報基盤)
・Transparency & Privacy(透明性・プライバシー)
・Interoperability & openness(相互運用性・システムの外部公開)
・Equity inclusion & societal impact(平等性・包括性・社会的な効果)
・Operational & financial sustainability(運用や財政の持続可能性)

※日本語は筆者による意訳が入っています

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図:世界経済フォーラム資料より

ちなみに、このアライアンスは人口20万人以上の都市が主な対象で、日本では横浜・神戸・つくば等、海外ではバルセロナやトロントなど、錚々たる都市が参画しているのですが、今年ダボス会議に参加した際に担当の方と繋がった縁で、2020年の4月からは人口1.1万人の小布施町も参加させていただいていております。

③スーパーシティとの違いは?

また、2020年5月には通称「スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)」が参議院で可決されました。内閣府によれば、「スーパーシティ」とは以下の3つのコンセプトを満たす都市を指すとのこと。

①これまでの自動走行や再生可能エネルギーなど、個別分野限定の実証実験的な取組ではなく、例えば決済の完全キャッシュレス化、行政手続のワンスオンリー化、遠隔教育や遠隔医療、自動走行の域内フル活用など、幅広く生活全般をカバーする取組であること
②一時的な実証実験ではなくて、2030年頃に実現され得る「ありたき未来」の生活の先行実現に向けて、暮らしと社会に実装する取組であること
③さらに、供給者や技術者目線ではなくて、住民の目線でより良い暮らしの実現を図るものであること

スマートシティで謳われていた技術が複数領域で実装されていて、結果が定量評価できる体制が整っている都市ということで、②で取り上げたスマートシティの取り組みに沿いながらも、より社会における実装に重点を置いた定義になっているように見えます。少し雑な言い方になりますが、基本的にはスマートシティの強化版のような位置づけと考えて良さそうです。

スマートシティという単語が一般的に使われるようになってきた中で、改めて「国家戦略特区」として優遇措置や特例措置を認める対象を区別するために「スーパーシティ」という形で呼称を分けているのではないかと思います。

④今後の更新予定

先述の国交省の実証事例や、オンライン調査、WEFのSmart City Allianceの事例共有などから抽出した 68個の自治体について、どんな手段を使ってどんな課題を解決しようとしているのか、それによって生み出される価値とは何かをMiroを使ってマッピングしてみました。

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図:Miroでのマッピングの様子

国内事例中心だと、分野によって事例数に偏りがありますが、このnoteでは、一旦ウィーン工科大学の6つの分類にしたがって、各領域でどのような取り組みがあるのかについて、整理して、そこから見えたものを発信していく予定です。

記念すべき第一弾は、スマートシティの中でも特に多くの自治体が積極的に行っているSmart Mobilityについて取り扱いたいと考えています。

よろしくお願いいたします!

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