46歳からの読書【ひとはなぜ戦争をするのか】

ロシアがウクライナに侵攻して、21世紀にもなって悲劇が繰り返されている。
そんな折に、書店で目にしたのがこの一冊である。
ひとはなぜ戦争をするのか
A・アインシュタイン
C・フロイト
国際連盟の提案により実現した、2人の天才による交換書簡である。
交換書簡の存在は知っていたが、読んだことはない。目にしたからには読むしかない。

まずアインシュタイン先生が世界の司法を作ると言うシステム的なアプローチを示しつつ、実現性の困難さも示して、フロイト先生に問いかける。
フロイト先生は、生の欲動と死の欲動から考え、文化と言うのは生の欲動だから、より文化的に発展すれば死の欲動である戦争を忌避するようになる。
つまり知の高まりが戦争を無くすと。そういう社会を作らなければならないと。
なるほどと。頷く。
この本の面白いところは、訳者の後書きの後に、さらに養老孟司先生と、斎藤環先生による解説が続く。
斎藤環先生は、最後が9条で締めると言う如何にもこの年代の知識人的なムーブで若干興ざめする。
で、養老孟司先生がフロイトの話を引きつつ、脳は変わるという話をする。つまり考えることで脳が変わる。だから考えて考えれば知が生まれる。格闘技なんかしていたら脳筋が鍛えられて死の欲動がますからアカンってなる。

この本は1930年代に行われた交換書簡を2001年、9.11の後に解説を加えて出版されたものである。2001年当時、アメリカ同時多発テロ事件までは、冷戦が終わり、もう大きな戦争はないんじゃないかという空気が流れていた。もちろん紛争は起きるが、大国間、先進国では戦争は起きない。そんな空気を一気に打ち破られ、もう一度、戦争は何かを問い直す意味で出版されたのだと思う。
さらにその後、アフガニスタンがぐちゃぐちゃになり、アメリカが撤退して、元の木阿弥になり、それでも戦争がひと段落したかと思えば、次はロシアがウクライナ侵攻するのである。
そしてそれを踏まえて僕が読んだのである。

そうか脳筋を鍛えたプーチンがこの戦争を起こしたのだから、養老先生の話には大いに頷ける。戦争を無くすためには格闘技を廃止すべきだ。柔道とサンボは禁止。
それは無理としても、ひとはやはり勉強をしなければならない。そして考え続けなければならない。
暴力は出来るだけ遠ざけ、眠りにつかなければならない。

古い本を読むのも悪くない。
アインシュタインとフロイトの時代の世界観を感じれるのもいいが、20年前の養老先生の話を読み、当時を振り返りつつ答え合わせをしている感じで面白かった。

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