3/5(土)
逆上がりの手前
また昼間から、『私』が公園でぼんやりしていてると、鉄棒で逆上がりの練習をしている親子がいた。
息子はなかなか逆上がりができず、ついにへばってしまった。
「お父さん、どうして逆上がりできなきゃいけないの?」
父親は一番高い鉄棒にもたれながら、息子へ答えた。
「別に逆上がりなんかできなくてもいいんだ。でもな、」
父親はおもむろに逆上がりをした。
「逆上がりできた方がモテるぞ」
「そっか……」
息子はやる気なく鉄棒にぶら下がった。
「でも、お母さんは帰ってこないね」
父親は息子の顔を正面から見た。
「お父さんはそうだけど、お前はモテた方がいい」
「……うん!」
息子はまた逆上がりの練習を始めた。
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