3/3(木)

五百円硬貨

『私』は友人と出かけたショッピングモールのベンチで五百円玉を拾った。
ラッキーだと思った。
なぜなら、スタバのキャラメルマキアートが飲みたかったのだ。
友人がトイレから戻ってきたら、連れだってスタバへ向かおうと思い、五百円玉を弄んでいた。
すると、五百円玉が二つに割れて、中から出鱈目な文字が並んだ紙が出てきた。
暗号文のようだった。

トイレから戻ってきた友人にそれを見せると、彼は言った。
「これは宝の暗号文じゃないか?」
「じゃあいいから、普通の五百円と交換してくれ」
『私』はそう返した。
「なんでだ? 宝が見つかったらもっともっと儲かるじゃないか」
「スタバのキャラメルマキアートが飲みたいんだ。今な。宝探しなら一人でやってくれ、分け前はいらないから」
つまんない奴、と友人はこぼして、普通の五百円玉と交換してくれた。
『私』はその五百円を片手に友人とスタバへ向かった。

道すがら、喜んでくれると思ったんだけどなあ、と友人が言ったような気がした。
「何が言ったか?」
『私』がそう問うと、友人は答えた。
「別に何も」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?