1/31(月)

次、止まります

『私』は帰り道にバスに乗っていた。
日々の疲れにうとうとしていたら、いつのまにかバスはトンネルに入っていた。

長いトンネルだった。
橙色のライトが淡々と並ぶトンネルの中には、対向車も並走車もいなかった。
バスの中を見回すと、何人も黙って座っていた。
淡々とバスはトンネルを進んでゆく。

ずっと続くトンネルに、『私』は家から遠ざかってることを悟った。
慌てて停車ボタンを押す。
「次、止まります」
次はどこだろう?
場所はわからないが、降りなければならないことだけはわかっていた。

バスはトンネルの半ばで止まり、ドアが開いた。

その刹那、『私』が目を覚ますと、まだバスは降りる停車場の五つも手前に差し掛かったあたりだった。
もう眠気は微塵もなかった。

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