1/29(土)

ミックス犬

たまたま、ふらっと立ち寄ったショッピングモールのペットショップで、『私』は人面犬を見つけた。

人面犬は、カラダはチワワ、顔は金髪碧眼の美少女だった。
残念なことにスペイン語を話していたので、何と言っているかはまったくわからなかったが、小さな体でプルプルと震えている美少女は、やはり愛らしかった。
値段は五十万円。まあ、妥当だろう。

「かわいいですよね、人面犬」
不意に背後から声をかけてきたのは、二十代の女性の店員だった。
『私』は買う気はハナからなかったので、暇つぶしのつもりで適当に話を合わせてあしらうことにした。
「独特の魅力がありますよね」
女性店員はニコニコとして答えてくれた。
「珍しいので私もあまり見たことないんですが、やっぱりいいですよね」
「何の犬種のミックスなんですか?」
「チワワとアルゼンチンです」
「何歳ですか?」
「ちょっと大きいんですが……、4歳です」

『私』はもう一度人面犬を見つめた。
その目はどこか覚めていた。『私』は我に帰り、次の買い物を思い出した。
そそくさとペットショップを出て行く頃、人面犬が「ワン」と鳴いたのが聞こえた気がした。

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