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一料理人、畑を耕す

こんにちは、ハヤシヨウヘイです。
トスカーナはカステッリーナ・イン・キャンティでは一年の時を過ごしたのですが、レストランの外では、つまり日常生活はどのようにすごしていたのか。

カステッリーナでの日常


以前に書いた通り、Albergaccioは典型的な家族経営のお店で、時期によってはプラス2,3人のスタッフが入ります。
そのため、まかないも家族の食卓のようなもので、ワインがあることも珍しくありませんでしたし、夫婦けんか、親子げんかもよく見かけました。

住み込みの私たちは車もないのでめったに外出することもできません。
(ちなみに休みは日曜で、唯一の交通手段のバスは日曜に動いていませんでした)
そのため、ごくまれに彼らの家で一緒に食事をしたり、近場のシエナの町まで連れて行ってくれたこともあります。
息子、娘は年が近いこともあって、バーに一緒に飲みに行ったり、夏のフェスタに踊りに行ったり(イタリア人は夜に出かけるときに、よく”踊りに行く”と表現します)、なかなか楽しく過ごしていました。

ただ、自分で移動できる距離は大したものではないので基本的にはカステッリーナの村の中で生活は完結しています。

楽しいながらも、田舎暮らしというのはなかなか暇を持て余すもので、いくつか暇つぶし的な趣味を探しました。

丘陵地帯のど真ん中、風景は最高です。
周りは森に囲まれ、ブドウやオリーブの畑が広がっています。
休みにはよく走りに行ったり、森の中を探検してみたり。
もともと日本にいた頃も乗っていたので、自転車を借りて10,20キロ走りに行ったり。
レストランを出てすぐの場所からも、遠くまで見渡せる絶景のパノラマ。

ブドウ畑の夕日

初めての畑つくり

中でも苦労しながらも、やりがいがあったのが”畑つくり”です。
レストランの裏にちょっとしたスペースがあったので、借りて耕すところからやりました。
ほんの2平方メートルほどのちいささから始めたのですが、初めて農業の大変さを知りました。

耕してやっと畝をつくれたところ


くわをもって耕し始めてみれば、掘り返すのが大変なだけでなく、いくらでも石が出てくる。
石をとって、雑草をよけて少しすると残っていた根からまた生えて、また繰り返し。
苗を買ってきて植えたのはトマト、ナス、ズッキーニなど。

ここからは、朝夕に水やり、たまに草抜き、気長に待ちます。
このころに拡張しようと、別の場所を掘り返していたら、フランチェスコにクルミの木のそばは育たないんだ、なんて言われてみたり。


上の写真から一か月後
さらに三か月後

この写真のころには実がなるようになったのですが、なかなか数も取れないし売りのもののようにはなりませんでした。
それでも、初めてできた野菜をとったときには、やっぱり嬉しかったですね。
店の人たちにも、よかったじゃないかといわれて、それもうれしかったです。

この文章を書きながら久々に思い出して、今はまた草むらに戻っているんだろうなあ、とかおもいます。
野菜、食べ物を作るのは本当に大変だと実感した体験でした。

ところで、彼らの家はなかなか広くてたくさん木も植わっています。
季節ごとに果物の収穫に駆り出されたのもいい思い出です。
サクランボ、なし、リンゴ、アプリコットなど地面に落ちて回収しきれないほど、”季節感”を強く感じました。
正直、日本にいるといつの季節も同じ野菜がスーパーには並んでいるので、あまり理解していませんでした。

イタリアに来てよかったと思うことのひとつ、季節、その土地で採れるもの、調整されていつでも手に入るものではない、そんな本当の食材や生活に出会えた体験でした。

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