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本を読む人

本を読む人と話している時は、そうじゃない人と話す時の自分をひた隠しして筋肉が固まる感覚がない。きっと、小さな当たり前な感覚も言葉にのせて人に伝えようとするその自分の細かさや過敏さを面倒だと感じないだろうという同志への謎の信頼があるからだ。些細な表現も気にかけずその人なりに解釈してくれるだろうという安心感があるからだ。

本を読む人が好きだ。頻度はどうであれ、ジャンルはどうであれ。活字とにらめっこして、自分の作り出した想像の世界へ行き来することに抵抗がない。目に見えないものを文字という記号で可視化され、それが文章となり、また目に見えないリズムを刻み続ける。可視的なものと不可視的なものが織りなす曖昧なバランスに慣れている。

本を読まない人が嫌いなわけではない。本を読む人に単純な仲間意識を感じ、そのうえでまた相手のもつセンスや雰囲気を想像してしまう。そんな私を否定しないでいてくれるような気がしてならないからだ。