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Go toトラベル with I



 を、旅行と聞いてめんどくさいと感じる人間が書いてみる。
 これは「お家時間を全くもって苦に思わず、ほぼ何の制約もなく丸2年を過ごし、むしろ今後復活の兆しを見せている祭典や職場での飲み会にこそにわかにザワつき始めている、筆者を含む16パーソナリティ性格診断で頭にIが来るような相手との旅行を楽しみたい方」に読んでいただきたいものである。旅行に限らず、この人何となくそういうタイプかも、という相手の考察の参考にしていただいても良いかと。


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1、 旅行に乗り気でない人間の基本的な思考傾向
 I型、いわゆる内向型は、自分と向き合うことで心を安定させる人のことを言う。彼らは一見人当たりが良いため気づかれにくいが、如才なく、つつがなく振る舞うのは、自分の中に入れないようにするための防衛本能。どうせ一人に戻るのだから、いかにこの場で完結させられるかが重要なのだ。
 とかく私(の繊細な感覚)を充実させたい。だからいくらやさしく話を聞いてくれても、早い段階で距離を詰めてはいけない。彼、彼女らは他人にペースを乱されることをとても嫌う。逆にコミットできそうな相手には自ら近寄って行く。何はなくとも近くにいる。「おんなじ」とニコニコし始めたら大好きだ。ただ、これでもうっかり手を伸ばしてはいけない。途端飛び退く。「え、今までの何だったの?」ぐらいの急速冷凍を見せるから。何なんでしょうね、アレ。

2、 言ってみれば深海魚
 旅行、と切り出す時最も大事なのは具体的なプレゼンに他ならない。ただその地に行き、回って食べて帰って来るだけなら、その場に赴くということにかける労力換算で「コスパ悪」で終了。もう何を言っても無駄だ。
 まずインドアさんは家でただボーッとしている訳ではない。パリピがナイトプールでパシャパシャしている間、気に入った自分世界、本やゲームやフィギュアと睨めっこしている。それらは既にその人に取り込まれ、身体の一部と化している。だからそれらと引き離すのは、その人の一部をもぐ行為に他ならない。そうして彼らには彼らの、一見理解し難い美学があり、それを行動指針にしている。例えるなら誰かが浅瀬でパシャパシャしている間、もっとずっと深いところで水音も立てずにシュコーシュコー息をしている感じ。
 ただ、たまに特定条件下のみ姿を現すタイプもいる。仮性アウトドア。ある人はダイビングを。ある人はボルダリングを。ある人はテニスを。ちなみにそれぞれそれなりに近場に住んでいるはずのチームメイトに誰一人遭遇しないというのは、皆似たような性質を持っているが故に違いないと踏んでいる。もはやレアキャラの聖地。確実にポケモンGO案件だ。
 そう、ある種静かな場所、集中できる場所を好む生き物の身体の一部をもいでまで、他人だらけの騒がしい場所へ連れ出そうということ自体、そもそも間違っているのだ。それは深海魚を水面まで引き上げる行為。全力で抵抗されても仕方がない。ここで大事になるのは、その人の身体の一部に関係する具体的なプレゼン「深海魚をその深度を保ったまま移動させること」である。

3、 海は繋がっているからスライド可。つまり基本旅行可。
 作品に登場した舞台を巡る、聖地巡礼。
 以前箱根に行ったが、その時には京極夏彦さんの「鉄鼠の檻」を持参した。丁度舞台と思われる近辺で、地元の地図に本に掲載されているままの地名があったのだ。そうして1000ページを超える文庫本片手にうきうきしながら黒たまごを齧っている嫁を、旦那はどんな目で見ていたか知れない。ただ「楽しく旅行したい」という目的が達成されている以上、男の勝ちである。
 ちなみに私自身、今狙っているのは京都にある神護寺、地蔵院である。ここは春琴抄を執筆するために谷崎潤一郎(敬称略)がこもっていた場所で、当時前妻への支払いのあった谷崎は、春琴抄を一定枚数執筆し、引き渡す度に対価を要求していた。しかしそれだけ追い詰められた状態でもあれだけの作品を書き上げたというのだから、これは是非とも一度訪れたい。
 このようにたまに同一人物かと疑うような行動力を発揮するが、深海魚には深海魚の動機があり、血の通うものには全力でコミットしようとする。だからこれは別に一人でも実行するものであり、ふさわしい深さがあれば容易く揺らがないのも特徴として挙げられる。

4、 いい加減めんどくせぇと思ったあなたへ
 深海魚と淡水魚はもとより、深海魚同士でも決して同じものを見ていない。それぞれ美しいと思う部分も、心動かされる部分も違う。加えて一方的に合わせることは、慣れない人ほど苦痛に感じるに違いない。
 でも想像してみて欲しい。理解なんて求めていなかった彼、彼女らが、理解しようとする人によって丸ごと受け入れられたら。顔を上げた時「満足した?」と微笑んでくれる人がいたら。きっと彼らは、その人以上に嬉しそうにする。そうして梅雨の合間のように、違う角度から幸せが訪れるかもしれない。そう思ってちょっと我慢してみて欲しい。その姿を必ず見てる。必ず誰かが。


 グッドラック。良い旅を。




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