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是非知って欲しい作品群。やさしくて面白くてジンと来るもの。いいなと思ったイラストも。
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#短編小説

【詩】No Weapon

武器を置いて 炭火で温めたコーヒーを 相手に渡して 今日はいい日だって言いたい 昨日はそうだった 半年前はそうだった 武器を置いて 釣りの話をしよう 釣果を競って ウォッカを飲もう 武器を置いて 産まれたばかりの 子供の話をしよう 子供はかわいいと笑いながら 武器を置いて 新しい冷蔵庫を買って 冷凍庫がよく冷えると 日常の話をしよう 武器を置いて 天気のいい日には ドライブをして 景色のきれいな所まで行こう 武器を置いて お父さん

僕がmixiを始めた理由

一億総発信者時代と呼ばれる現代で、僕もその流れに乗るべくnoteを始めたわけだが、ふと昔のことを思い出したので書いてみる。 10年以上前、私は大学生だった。当時全盛を誇り(もちろん、現在も立派に運営されている)、右を見ればやれマイミクだ、左を見ればやれコミュニティだ、などと誰もが夢中になっていたmixiに、例に漏れず僕も便乗した。 当時の僕は、「お前は文才がある」「あなた物書きにむいてるんじゃないの」「次の更新が楽しみだ」などと、友人からの賞賛を得たいがために、なんとか面

ただ、才能が欲しかった

 例えば、深夜の一時を回って、現実的な一日の終わりからも諦めに似た眠りからも逃避するように、ベランダに出てみる。アパートの一階のベランダには潮風が舞い込むこともなければ、柔らかな月あかりが差すこともない。疎らな生垣のツバキが唯一、私に寄り添ってくれているような気がする。ハイライトを一本、咥える。ライターの中で透明な液体がゆらゆらと揺れる。おもむろに付けた灯。吸い込んだ息に、夜の香りが混じる。そういう一日の終わりに私はただ、才能が欲しかったなと思う。    本物に触れたこと