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耐用年数

 耐用年数7年。

 二人暮らしを始めるときに家電量販店で何のこだわりもなく買った洗濯機は、どうやら今年、耐用年数を迎えるらしい。うちは私が自堕落なせいで毎日洗濯するわけじゃないから、実際はもうちょっと保つのかもしれないけど。それはそれとして、もうそんなに経ってしまったのか、と感傷的になってしまった。最近はあまりに無為に日々を過ごすことが増えたから、余計なことばかり考えてしまいがちだ。

 そういえば、私にも耐用年数がある。まさか洗濯機に自らの終わりを思い出させられるとは思わなかった。けれど、事実は目の前に転がっている。洗濯機ははじめから役目を決められているけど、私はまだ見つけられてない。いつか、耐用年数を迎えるまでに何かを為したいとは思うけれど、思うばかりで、特に意味のない言葉は相変わらず宙を舞うだけだ。

 はあ。未だに、シンデレラコンプレックスを拗らせているらしい。三つ子の魂百までと言うけれど、やはり私は死ぬまでこのままなんだろうか。こんな魂なら初めからいらなかった。

 いや、本当はかぼちゃの馬車なんてなくたって、舞踏会に行けるはずだ。必要なのは勇気だけ。頭ではわかっている。けれど私は、一体何を怖れているんだろう。意地悪な継母も義姉たちも、もう私のそばにはいないというのに。

 かっこよく足掻くのはもうやめにして、そろそろみっともなく足掻くことを始めなくちゃいけないのか。足掻く以外の方法、歩き方を、誰か教えてくれまいか。

「本当はもう、わかっているはず」

 みんなそう言う。でも私にはまだこの恐怖の形が、進むべき道が、取るべき策が、見えない。涙すら出ないのに目が霞む。前が見えないのに歩くなんてできない。ねえ、どうか私の手を取ってよ。ここから連れ出してよ。

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