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【雑誌】わたしたちはハイキューをどう読むのか

今年に入って読んだ雑誌の中でもっともベストでナイスな特集がダヴィンチ3月号のハイキューと永遠のライバルたち。
バレンタインを少し過ぎた2月16日に公開された劇場版ハイキューゴミ捨て場の決戦に合わせた特集。余談だが、ジャンプは集英社、ダヴィンチはKADOKAWAなので全然ライバル。
業界全体にゆるりとした仲間意識があるのがわたしが出版界が好きな理由の一つかもしれない。

ハイキューでは飛べない烏と不名誉なあだなで呼ばれる宮城の高校、烏野高校のバレー部のメンバーを中心に幾重にもわたるライバル関係が描かれる。
そもそも日向と影山主人公コンビは互いに絶対負けられないライバルで、もはや宿敵。その影山には中学時代の先輩でありながらやはり負けたくない相手及川さんがいて及川さんには宿敵:牛島がいる。

ここまでが物語開始時のライバル関係でここから烏野入学とともに月島・山口コンビが立ちはだかり、伊達高をはじめとする宮城の高校たち、劇場版の中心キャラになる音駒、梟谷などと出会っていく。
ハイキューはライバルを中心に展開されている。

ここまで分析的にハイキューを果たして読んでいただろうか。わたしは読んでいない。
でもキャラクターの関係性を整理していくと一番矢印にのる感情は負けたくない、ライバルなのである。
特集タイトルみたときにものすごい納得感と読みの深さに驚いた。
ハイキュー公開に合わせて他誌でも特集組んでいたので何誌か見たけれど、ダヴィンチの視点が一番おもしろかった。

ハイキューにおけるライバルという軸を決めた上で声優、編集者、バレーボール選手それぞれの視点のハイキューが語られるのも良かった。
立場によって読みは変わる以上それぞれの語るハイキューは全然違うものになる。担当には担当の、声優には声優の、選手には選手の読み方があって感じ方がある。

それをライバルという軸が一貫性を持たせていくことで散らからない。
編集部のコンテンツへの造形の深さと愛を感じた特集でした。

加えて、意図的ではないかもしれないけれど、読みの多様性に気付かされる記事になっているなと感じた。
ハイキューに限らず読者のバックグラウンドは違っていて、それが反映される以上人によって読み方は異なる。
わたしは日々できない自分とか情けない自分を見ているから山口にすごく共感するし、シンパシーを感じる。
そして吹奏楽やっていたので応援がうるさい描写みたいなのはちょっと傷つく。
それはわたしのこれまでがそう読ませているのであってわたしの友達は応援のことなんて気に留めてもいなかった。
色々な視点からみた作品が描かれる価値って自分の読みを考えられるところにあるなと思った。

歴史のページでライバルが「自分」の人たちがいるのも良かった。ライバルって必ずしも外にいるわけじゃないよね。

実際の選手のインタビューを通してリアルな排球、バレーボールの世界につながっていくのもステキ。選手の方に旭さん人気が高いのも面白い。わたしヒゲチョコ!のイメージだった。


ダヴィンチは個人的に短歌をくださいのコーナーが好きなのだけれども、今回は同窓会の短歌がとっても良かった。
みんなのことがまだ好きだから欠席に⚪︎。⚪︎って短歌じゃそうそう使わないので新鮮。そして読まれている感情があまりにも共感できる。

なんだかんだお邪魔して賑やかしをさせてもらった同窓会だったけれども、行って友達に会うまですごく不安だった。
みんな変わっていたらどうしよう、大好きだったあの子が腹立つやつになってたら…?
思い出は思い出のまま綺麗にとっておきたい気持ちすごくわかるなあと思った短歌だった。

ダヴィンチ3月号の特集は森見登美彦「シャーロックホームズの凱旋」記念のインタビューと「劇場版ハイキュー」の特集の二本立て。
少し旬は過ぎましたが、とっても素敵な特集記事だったので誰かに聞いて欲しく…。
ここまでお付き合いいただいたかたがいたら驚きですが、ありがとうございます
ダヴィンチ、Kindleで読めます!よかったらぜひ!

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