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藍に染まるには深呼吸をして

長野県の上田に「空き家を片付けてまちの遊び場にする」のが得意なお姉さんがいて、その人のせいで上田はなんだか日帰り圏内になってしまった。

その人が上田の「さんかくのいえ」で藍染めをするというので、それも「月曜日にやるよ…?」と僕の仕事の休みにあわせてくるものだから、数か月ぶりに上田に車を走らせた。

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藍染めやインディゴ染めは何度か経験があって、その度に、藍液から出した後の色の変わりゆくさまが印象的だなと思う。染めに使う藍液は実は藍色ではなく緑っぽい色をしていて、しっかり染料をしみ込ませた後に空気に触れさせて酸化を起こす過程で、美しい藍色に変化していく。

服やハンカチが、文字通りまるで呼吸しているのを目で見ているようで、何度見ても不思議で新鮮な気持ちになる。そして、服が生きているようで愛着を覚えるのだ。

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そんな愛着を生む藍染めの行程と、ある人の変化が重なって思えたのはその帰り道だった。うちの職場に今年から入った後輩の話。

その後輩くんは、今年から社会人になったぴちぴちの1年目。うちの職場、特にうちの部署は平均的にみても年齢が若い方だとは思うのだけど、そのなかでも2番目から4,5才、年が離れるくらいにはうら若い。僕は彼と一番行動を共にするチームの一人で、他の先輩方と一緒に彼とどう関わるといいかの話を日ごろからよくしている。

とても真面目で心優しい分、気の弱いところや度胸の足りないところがある。自分の失敗に敏感になってしまうところが原因なのか、思い切って自分から何かアクションを起こすことであったり、堂々とコミュニケーションを取ることが苦手なんだと思っている。

今年の2月に一緒に働くようになってから半年くらい、同じチームの面々で個別に話をしたり、ご飯に連れていったり、仕事を任せてみたり、あれやこれやと関わってきたけれど、僕らにとっても彼自身にとっても「上手くいかない」状態が続いていた。上手くいかないというよりむしろ、「思うような変化が生じていかない」というもどかしい感覚。

いま書いていて、少しおこがましいところもあったようにも思う。僕自身の基本姿勢は「人は変えられない」なはずで、それに反して勝手な期待を押し付けていたのかもしれない。

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とにもかくにも、「どうしたもんかな」とチームの先輩たちと思っていた折、ふいにその時期がやってきた。

少し遠くからでも大きな声で挨拶をしたり、グラウンドで関わる子どもたちや大人の方とのコミュニケーションを自分から積極的に取りに行ったり、グループチャットの中での発言や提案が増えたり(時には先輩のフリに応えてボケてみたり…!)、急に殻を破ろうとしている感じが出てきた。

びっくりした。喜ばしい変化なのだけど、それ以上に驚きが勝るくらいの変化が突然やってきた。

なんか最近いい感じだね、と素直に伝えると同時に「何かあったの?」と訊いてみたけれど、「いや特に何かあったというわけではないんですけど」と答えるので実際のところはすっかりわからなかった。


長野からの帰り道、暗い高速道路を走る車内で、「あれ、藍染めみたいだったな」と思った。


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