布監督・羽田コーチ解任~感謝の気持ちと残された課題~
激動の解任と新監督の就任。
長期政権後の新たな船出となる今シーズン。解任という「最悪のカード」を切ることは、選択肢としてはあっても実行させたくはなかった。昇格を目指すチームと銘打っている以上、成績を見れば解任は「妥当」かもしれない。ただ常々言ってきたが、重要なのは解任という結果ではなく、何のために、どこを目指してその選択をするのか、その「目的」と「その後のビジョン」である。
記者ではないので内部事情までは分からないが、1サポとして疑問や問題点は多く感じている。完全な状況理解はしていないが、布監督への感謝、現時点で整理されてないポイントや今の素直な気持ちを綴りたいと思う。
(⇧解任について触れているので最後だけでも読んでいただけると「この解任の懸念点」と「今後にむけての気持ち」が明確になるかもしれないです)
<布監督、羽田コーチへの感謝>
■リスクの方が大きかった就任と度重なる不運
まず最初に大変な環境の中で戦ってくれた布監督に感謝を述べたい。
ご存じの通り、布監督は去年若手主体だったザスパクサツ群馬をJ3の2位まで引き上げてJ2へ昇格させた。あちらの事情があったにせよ、もしも群馬をもう1年率いていたら今よりはうまくいっていたはずだし、かなりの確率でまだ監督を続けられていただろう。しかし、反町監督のもとかなり特殊なスタイルで戦ってきたチームの長期政権後という非常に難しく、不安定な状態の山雅を選んでくれた。松本山雅というクラブになにかしら魅力を感じてくれたのだろうが、反町さんとの関係もあるためマイナスな面も承知の上だったはず。かなり難しいタスクで、多くいるサポーターが逆に牙を剥きかねないと理解した上でのスタートだったことは予想できる。
そんな中始まった今シーズン。土台もない中で「育成」と「昇格」の両方を求められるのは簡単なことではない。その上、コロナ禍でカップ戦が無くなるなど日程まで大きく変更。その間に怪我人も大量発生した。特に守備で経験のある隼磨や橋内、高橋諒、山本真らの離脱、ジャエルやイズマ、アウグストら外国人らの出遅れもチームの土台作りの上でかなり痛かった。最終ラインの構成にも最後の最後まで悩まされている。結局、去年の布群馬の形に沿えるようなメンバーが一度も揃うことのないまま、この体制が終わってしまったのはチームとしては申し訳なさすら感じる。
■監督が残してくれたものをこれからの糧に
そんなこんなでシーズン半分が終わって結果は20位。誰しもが望まない順位にいる。最も批判を浴びるのは監督。「結果が内容に伴ってこない」というわけでもなかったので、解任自体はありえない話ではなかった(個人的にはもう少し時間を与えるべきだったと思う)。「何がしたいか分からない」という指摘もよく目にしたが戦術論を表向きにベラベラ語る監督ではなかったので、ここに関しては少しでもそこをクリアにできなかった自分にも勝手に無力さを感じている。
ただ、何も成し遂げなかったか言われるとそういうわけでもない。この半年間で最も「山雅の抱えていた課題」に向き合い、思考してくれたのは布監督であったはずだ。目先の勝利だけを目指すならもう少しやり方があるのではないかと思うことはあったが、最後まで大野や米原、山本龍らを信じて使い続けてくれたことで幸い「何も残っていない」状態ではない。次の監督は主力となりつつある塚川や大野が戦力として計算できる状態で戦える。結果には現れなかったがこうした積み上げが今回できたことは今後の糧となる。
逆にこの先の後半戦、順位が多少上がったとしてもこの選手らの良さが失われてしまうと「布監督の招聘やこのシーズンそのものはなんだったのか」という終わり方になるだろう。
J参入後、解任は対岸の火事だった山雅サポーターだが、1人の仲間を失うことになった。その代償は大きい。せめて厳しい状況の中であらゆる可能性を模索し、真摯に向き合い続けてくれた監督への感謝は忘れず、苦い経験を今後に生かしていくことでせめてもの恩返しにしたい。
<解任に関して>
ここからは解任に関して。いくつか思うところはあるので整理する。
■解任の意図
解任については先ほども書いた通り、"結果を考えると"理解はできる。成績に危機感を感じ、解任に踏み切ったという一つの答えだろう。
が、「逆転昇格を目指すのか」「少しでも結果を求めるのか」「来季にむけてチームを作っていくのか」は非常に読み取りづらい。
逆転昇格を目指すとするとあまりにも動きが遅く、監督の希望や明らかに足りていないポジションへの補強もなかった。昇格を目指すための解任とは正直考えられない。
そして、来期にむけてチームを作っていくなら1か月監督を見つけられず、"未来への投資"において重要な立ち位置の人間を回してしまうのは不安でしかない。少しでもいい順位につけて来季に繋げようという意図であっても本当に来季やその先のためになっているのか?有意義な人事とは言えないのが素直な感想である。
それでも、コロナ禍で監督が見つけづらいことは想像できる。確かにオフシーズンになったほうが選択肢は広がるが、暫定的につなぐとしてもその間監督を探す算段があるのか?来季も柴田監督でいくとしてそこに布監督続投以上の妥当性はあるのか?の問題は先送りされている。
フロントも素人ではない。責任を負っているからには離れていくサポを案じ、我慢できなかったのかもしれないが本当の最悪は「来季の低迷」、そして「J3降格」である。
「解任すること」が1つのゴールになっていないか、長期的に見て良い選択になっているかは現時点では説得力が感じられない。
■解任のタイミング
ここは推測にもなるが、監督が徳島戦にむけて指揮する気が満々だったことからしてもかなり急な解任通告だった可能性は高い。
明日の試合にむけては少なくとも琉球戦で次節まで見据えた采配をしており、直近でも対戦のある布監督の方がいい準備をしているはずだ。決断したからには1試合でも早いほうがいいという考えがあったとしてもリスクも大きい。
監督のことだけでなく、このタイミングでの解任は選手のダメージも確実にある。どういうモチベーション・狙いで明日戦えばいいか整理することは難しく、選手心理を考慮してのタイミングとは言い難い。誰かがリーダーシップを取ってリバウンドメンタリティを発揮できることに期待するしか希望はない状態である。
もしうまくいかなかった場合、選手も余計に「なぜこのタイミングで?」という気持ちになりかねない。「監督不信」より「深刻なフロント不信」につながると最悪である。どれだけチーム状況が悪くてもこんなことは書いたことがないが「最悪でも惜敗」で松本に帰ってきてほしいところである。
■監督との別れ方
そして、さらに推測になるが、ここは避けては通れない。選手や監督との別れ方は最もチームの内部の印象が左右されやすい。解任に向けて正しい手順を踏んでいたか非常に不安になる記事が流れている。
・突然の解任報道
報道関係については仕組みそのものがよく分かっていないので具体的に批判はできないが、波紋を呼びそうな現象が起きた。内部のことはサポも知っておきたいと思う一方、情報コントロールは徹底していてほしい。
あと今朝、勇み足でツイートしてしまったので、その現象への想いとともに訂正を載せておきたい⇩
・ちゃんとフロントの意思は伝えられていたのか?
次にチームは明確な意思(具体的には結果を第一にしてほしいのか、若手も組み込む方針に納得しているのかなど)を正しく伝えられていたのかは疑問。
「次負けたら解任」という、言葉にしないにしてもなんとなくの意思が伝えられた上で榎本や山本龍の起用を目論んでいたのならば解任も納得できるが、チーム方針に従って「若手」と「勝利」の両方を狙い続けて突然解任されてしまうのは悔いが残る。まあ、黙っていても解任の可能性は常に感じてはいたはずだが、そういう時期こそクラブとしてのサポートや意思表示は大切になる。
「結果が出なくても長い目で見てチームの底上げができればOK」「結果だけでも残してほしい」など解任のラインがある程度明確にされていれば戦い方ももう少し変わってきたはずだ。それが達成されず解任なら監督自身も納得感はある。
この解任の経緯について今後、明るみになるか否かは分からないが、考察できる可能性としては「クビ目前になりながらも監督が若手を使い続けた」か「本当に突然切られたか」のいずれかになってきそう。どちらにしてもやはり不憫に感じる終わり方だった。
■後任人事について
後任については未定で、柴田強化部長or西ヶ谷U-18監督が暫定的に指揮を執ることが朝の時点では有力視されていたが、どちらにも今の山雅において非常に重要な仕事がある。
強化部は来年の補強・引き止め・編成にむけて後半戦は大事な時期になってくるし、U-18はようやくプリンス北信越に上がり、日曜日にはアルビレックスU-18との試合がある。
「できればどちらも動かしたくない……」と感じていたが、理想とは真逆の柴田監督、西ヶ谷コーチになった。あえて実績や力量には触れないが、そこを抜きにしても今後に向けてハイリスク・ローリターンの人事である。もしも今シーズン成績が上向きになったしても来季の編成はどうなるのか、新卒選手はどうするのか、ユースはどうなってしまうのかという問題は無視できない。明らかにその場凌ぎで後手後手を踏んでいる。
布監督・羽田コーチの問題よりも、むしろ内部に問題を抱えているのにそこをさらに弱体化させ、トップの監督・コーチを変えれば何とかなるという算段ならかなり見立てが甘い。トップ・育成・強化部の全てが弱体化する可能性もある大博打である。
今から失敗と決めつけるのは時期尚早ではあるかもしれない。しかし「育成」と「結果」という今年の方針からはかなり後退してのリスタートとなっている。
<松本山雅を終わらせないために・・・>
最後に、この一連の流れを見て全てに納得している人はごくわずかだとは思うがそれでも山雅を終わらせないために我々は選手や新監督をサポートすることしかない。正当に批判することと足を引っ張り合うことは訳が違う。後者からは何も生まれない。
僕自身、今後に向けての問題点を書くことに時間を費やしたが、それでも「ほら、失敗した」よりも「言っていることがまるで的外れだった」となる未来を望んでいる。「布監督・羽田コーチへの感謝以外の部分は無駄な時間だった」と恥をかけたらチームにとっては最高である。
人事に携わったことのない1素人からするとクソみたいに思えるこの人事をひとまず飲み込んで、長い目で見た時にチームが上を向いてくれると信じて応援していく。周りもそうでありたい。今の最悪の成績よりもさらに最悪な道を辿ることになったとしても、せめてサポーターだけでも魅力的だと言ってもらえるチームであり続けたいと思う。
END