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徳島戦プレビュー~パッションとロジックを持って新しい山雅を見せよう~

5連戦の狭間。両指揮官の準備は……

長い5連戦が終わり、また新たな5連戦が始まる。通常、この間に行うべきは「休養」。チームも2日間のオフをようやく挟めたようだが、今季に関してはこの期間に「テコ入れ(結果の出ていないチームは特に…)」を行うしかない。

京都戦の内容に多少ポジティブな要素があったとしても課題が山積みであることは明白。さらに今節は4年かけてポジショナルプレーを極め、個々の配置やバランスが非常に整理されている徳島が相手となる。

チームとしての修正・落とし込みを行いながら、どのような徳島対策を立ててくるのか…まずは両指揮官の準備も楽しみな点である。

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■今年の徳島ヴォルティスについて

オフシーズンにJ1もしくは金満J2チームに選手を抜かれる代表的な存在にもあげられる徳島だが、そんな中ここ数年は常にJ1まであと一歩のところまで上り詰めている。

その最大の要因は何といってもリカルドロドリゲス監督。現セレッソ・ロティーナ監督とともに最近のJ2のポジショナルプレー志向のトレンドを作った監督といっても過言ではないだろう。リカルドの就任をきっかけにチームもテクニカルでプレスも怠らない選手を積極的に補強、そして時にはJ1からのレンタルなども活用しながらスタイルを構築。なんとユース年代からこのリカルドサッカーを叩きこんでいるそうで、監督だけではなくクラブ全体がうまくモデルチェンジを行った印象だ。(山雅もここから一皮むけるためにこうしたクラブ一体になっての改革は見習うべきかもしれない)

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話は逸れたが……今年の徳島もここ数年叩きこんできたリカルド式ポジショナルプレーの原則のもと、3バックと4バックを変化させながら(もっというと「ポジションという概念があまりない」とも言われる)、多くのビルドアップ・崩し・プレッシングのパターンを試合の中で見せている。単純な多彩さではナンバーワンではないか。

そんな今季3敗の徳島に対して最も守備での最適解に近づいたのは恐らく長谷部アビスパで(比較的徳島はチェックしていたが全ては見れてないのであくまで恐らく……)、支配率わずか27.3%というかなり割り切った戦い方を行って無失点で守り切り、セットプレー1発で勝つという見事なウノゼロ劇を見せた。

残りの敗北は「徳島に匹敵するポゼッション力とプレッシングを見せた北九州」と「HTの3枚交代によって3点差ひっくり返した愛媛」のみ。全く異なる3敗の内容から踏まえると……素直に考えると福岡のプランに近くなってくる気はする。

・キーマン

徳島5年目となるキャプテン岩尾は4年連続キャプテンを務め、常にチームの中心であり続けた絶対的な存在。パスが生命線のリカルドサッカーでとにかく攻守にミスがない。本来はJ1にいるべきレベルの選手で、個人的に山雅の昇格時にはJ2で一番引っ張っていきたい選手だったが、毎年徳島残留を選び続けている。こうした選手がいるのは強みと言えるだろう。

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また、FW垣田も脅威になるだろう。長身を生かしたプレーに加えて、元々長所であった走力とプレッシングが周りの連動性によりさらに脅威になった印象。得点力に関しては正直全然当たらない時もあるので1山雅サポとしては外れ日であることを切に願う(笑)

■予想スタメン

すためん

<松本>

最近は"3バックが現実的"とある程度割り切って予想はつけやすかったが、前節をうけてその状況はリセット。
また予想を難しくさせるのはCBの台所事情。少なくとも今の戦術理解の状況だと4バックではCBの負担はでかい。前節負傷退場した橋内やベンチ外だった森下の状況次第では「そもそも4バックは選択肢にいれることができない」という状況も十分にあり得る。

<GK>
ビルドアップ重視、ロングキック重視にしても圍が優勢。ただ前回の村山久々の先発復帰が橋内・森下両者不在になるタイミングだったのでもしかすると……

<DF>
もしも橋内森下不在なら3バックが濃厚?残りのメンバーでは浦田常田大野乾が候補になってくるが、浦田常田乾と予想。

<MF>
スタートは攻撃より守備や繋ぎの安定感が重視されそう。今回は高橋と前を置く。DHは組み合わせによって戦い方も見えてきそう。前節バイタルの緩さでやられているのでそこに長けた藤田塚川に戻すかもしれない。米原や久保田が入ってくればある程度攻撃で時間を作りたい狙いが見えてくる。

※一部報道ではボランチについて触れているが半信半疑。上記のように戦い方がある程度見えてくるボランチの組み合わせが既報通りならかなりご親切だが……笑

<FW>
ジャエルが実践復帰したことでスタートはそのまま阪野に任せられるか。2シャドーは予想というよりここでのプランを遂行するならこの2人ということでアウグストと古巣対決になる杉本を置いた。意図は後ほど。

<徳島>

メンバーは特に固定はせず、誰が出ても安定したレベルでサッカーができる。両WBには攻撃に特徴を持った選手を配置するが誰を置いてくるか?また中盤の構成にもスタメンでは注目したい。

■徳島戦の3つのポイント

①徳島の攻め方と長谷部アビスパが実践した動かない構え方

先ほども述べたように(自分が把握出来ている範囲では)長谷部アビスパが最も徳島の良さを消すサッカーを徹底できていた。それにより福岡も自分たちの攻撃に力を使えていなかったが、戦い方としてはかなりのヒントがある。

さて、まずは徳島のビルドアップについて。徳島のポジショナルプレーの配置で鍵になるのはサイドのひし形形成。ショートカウンター対策のためか中央突破はあまり狙わない。このパスコースを常に確保して、動いた(ズレた)守備の穴からボールを運んで崩していく

福岡

これに対して福岡の取った策は「徹底して動かない」こと。徳島がポジション移動を繰り返してもとにかく釣られない、ひし形の頂点のみを狙い続けて徳島の攻撃を阻害する☟

福岡2

これに対してさすがの徳島は運ぶのも上手いCBがビルドアップで持ち上がり、攻撃の枚数を増やす。とにかくウノゼロ狙いで守備全振りの福岡はFWも守備に投入し、完全に試合をクローズさせる☟

福岡3

最終的にこの0-0展開のプランを続け、セットプレー1発で仕留めた。

全く同じプランで戦う必要は無いし、3421にした場合、陣形自体は変わってくるが、うまく先制できたor前半クローズ展開を狙うならこのひし形ビルドアップ対策は参考にしたい

※ちなみに3バックの場合は……

3バック

後ろがスライドしてWBが一列前に行き、疑似4バックを形成。HV(攻撃のスイッチ役となるCBの左右の人)が持つ際は逆サイドのWBが空くことになるのでここを狙われだした場合、そのコースだけ切るか、逆のシャドーが1列下りる。

②1番怖い徳島のハイプレス。理想を取るか反町流か…。

徳島=「ポゼッション」というイメージも強いかもしれないが、個人的に対山雅で1番得点に繋がりやすい、脅威となると思うのはハイプレスからのショートカウンター。それ以外のプレーは比較的時間をかけてじっくりとサッカーをするチームだが、その分ここには力を注いでいる。逆にここで力を注げない展開になると徳島としては難しくなると言えるだろう。

そして、ハイプレスの相手とはこれまでも対戦してきたが徳島の前線のプレスが恐ろしい点は数的同位プレスをかなり高い連動性でかけてくる点。これまでプレスに対して3バックがしっかり繋いで……という対策を述べてきたが今回はだいぶ話が違う。

ビルドアップ2

ボール保持者に全力プレスが来た際、通常空くはずの最終ライン、DHにも相手がついているというケースが稀にある。これは非常に厄介で注意しないといけない。磐田戦2点目のような雑なパス回しではまず攫われてしまうだろう。

それに対して…

・「理想」は後方の繋ぎで交わすこと

先ほども述べたように同数プレスで来るのでGKも巻き込んで数的優位にする、自陣を存分に使って相手のプレス距離を延ばすなどの形をいくつも仕込む

ビルドアップ

メリットとしては「急いで攻撃することなく、疲労をキープしながらボールを保持して戦えること」「相手の前線を守備で疲弊させること」。
デメリットとしては「1度でもミスをしたらそれで試合が決まりかねないこと」「あまりに仕込む時間がなく、プレスを上回れない可能性があること」だろう。

・より現実的で弱点も突ける反町式

対徳島を考えると個人的には反町式で早めに縦に当てて前プレを回避するほうが現実的だとは思う。徳島と対戦する時のインタビューで反町さんは「最初の縦パスを1本通す」「そこが収まればGKとの1対1のチャンスができる」「サイドは捨てて中をとにかく固める」ということを主な対策で述べている。

メリットとしては「徳島の人数が薄いうちに攻めることができること」「奪われても即失点のリスクが少ないこと」。
デメリットとしては「守備の時間は長くなる」「後方からの配球が雑になりがちなこと」。

・反町式を実現させるために……

しかし、今年は反町戦術とは違う。恐らくこれまでの541陣形では前には阪野しかいないし、フォローするにも距離が遠すぎてカウンターは難しいだろう。

そこでシャドーを中央に残して523プレスをかけてサイドは最少人数で対応。ボランチが最終ラインのフォローに入ることで、シャドーをカウンターのために中央に残す☟

守り

そして、奪ったら相手の守備の網を超えて、マークが薄くなっている前線3枚に縦パスを1本早めに通す☟(カウンターを前線3枚で行うためにもボールを運ぶのに長けた杉本・アウグストと最前線に走力と強さのある阪野を置いた)。

トラジション

ただし……第一の狙いは「カウンター」だが、そればかりではない。反町山雅はとにかくそこから速攻に移ろうとしたが、そこまで踏襲するつもりはない。そこから遅攻に移っても良い。

その狙いを見せることによって相手の前線を1度下げさせるということが第二の狙いである。これにより徳島のポジトラ時のハイプレスはいったん無力化できるだろう。無理だと思ったらそこから下げて構築していく☟

守備3

要は「カウンターを狙えるよという素振りを縦パスによって見せることで、相手の守備の圧力を分散させる」という戦法である。

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「質の高い周りのフォロー」か「縦への怖さ」を見せなければビルドアップをしようにもなかなかうまくいかない相手ということは念頭に置きつつ、どちらの戦術で徳島のハイプレスに挑むのかを注目したい。

③体力の使い方。どこで仕掛ける特攻プレス。

まず最初に断っておきたいのは「特攻プレス」を常にかけたいわけではない(笑)

多くの時間では持つ徳島と構える松本の構図になるが、勝ち点3を取るためにはどこかの時間帯で前に圧力をかけていかなければならず、時には「特攻」感のあるプレスをかけることになるだろう。

そのためにも体力の使い方も重要になってくる。東京V戦は押し込まれすぎて勝負どころの終盤で走力が使えず、京都戦は最初から走力を使いすぎて最後まで持たなかった(前節は先制出来なかったところに問題があったが……)。

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力の使い所としてはまずは「試合開始直後」。磐田戦のプレビューにも書いたがポジショナルプレーを遂行するためにまずは相手の配置、プレスのかけ方を把握する必要がある。磐田よりも取り組んできた期間が長いのでそれほど綻びが見れるかは自分たち次第だが、ここで力を使う価値はある。

そしてもう1つは「選手交代直後」。監督の勝負勘にもかかって来るが、フレッシュな選手が入るとマークやプレス速度が変わる。前節のように交代直後に主導権を握れれば試合をひっくり返すほどの好循環が生まれることもあるだろう。リカルドロドリゲス監督は試合をクローズするタイプの監督ではなく、愛媛戦では3点差をひっくり返されたこともある。川井監督の采配も見事だったが監督の特長が悪い方に噛み合った形だ。恐らく徳島は最後までアグレッシブに勝負をしかけてくるのでベンチメンバーはオープンな展開での決めきる力に期待したい。

■注目選手

注目選手は杉本。

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元徳島の10番ということもあるが前節を見る限りコンディションは上がってきている。徳島流ポジショナルプレーを山雅で1番理解している選手でもあるので、攻守において徳島での経験を活かして欲しい。

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レビューは以上です。

これまで何度も対戦していることもありますが、徳島のサッカーについては細かく追究してきたつもりです。その上で、かなり完成度には差があります。ただそれは反町サッカーのようなハードワークサッカーに打ち砕かれても我慢してきた歴史の結果でもあるわけです。

ただこの試合での勝負は別。これまで築き上げた反町スタイルと今期チャレンジしてきた部分をうまく融合させ、サポーターの後押しを持って強敵徳島に打ち勝ちましょう。Onesou1!

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