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琉球戦レビュー~噛み合わない歯車。チームはどこに向かうのか~

点差以上に堪える歴史的大敗

積み上げるのは難しくても壊れるのはこんなにも簡単なのか……」。そう思わされる試合だった。直近だと前節長崎に2点差を追いつき、今季初の4戦負けなしを記録。劇的なレベルアップはなくともこの「勢い」と「自信」で何とかこの状況を持ち直せるかと思ったが……このアルウィンの地で再び悪夢を見せられる。

「スコアや戦術面」よりも、「ビルドアップや積極的なプレス、コンパクトな守備陣形などチームとしてスケールアップを図ろうとしていた」ところで再びコミュニケーション不足や集中力の欠如などその根幹になる部分の拙さでショックを受けた試合だった。

僕自身、山雅が負けるにしてもこんなにも戦術面について触れられないようなnoteは書くつもりではなかったし、価値があるのかも分からない。

だが、山雅というクラブレベルで考えると、僕らが応援を続けていく限りはスポンサーにとっても利益は残るし、浮上する時は必ず来る。永遠に沈んでいくことはない。それが今季になるかと言われるとはっきりとYESと言えないのが正直なところだがまだリーグは半分残っている。諦める訳にはいかない。いつか笑い合える日が来ると信じて、価値が出てくると信じて、前半戦の戦いを総括しながら書き続けていきたい。

※素人採点は個人批判の場になりそうなので飛ばします

■4231の謎

まずは今日の戦術について。システムは442になるかと思われたが、セルジが左になる4231を選択。久保田をトップ下に置いた意図として「2列目のランニング」と述べていたがまるでハマっておらず、左にセルジを置くことによる失敗をこの試合でも繰り返した。栃木戦ではジャエル阪野と併用するためにセルジを左に置いたがそれとは意味が違う。左を起点にするような意図も見られず、守備が疎かになる代わりとなるプラス面が少なすぎた。

■プラスの方が多かった序盤のプレス。むしろ問題は…

ただゲームを見てみると序盤は積極的な守備がハマっていたことも多かった。解説も述べていたように立ち上がりの失点を修正するためにパワーを使ったと思われる。

このプレスにより序盤の失点は回避できたと思うし、琉球よりも奪取数やシュート数は上回っていた。この時点の守り方は比較的整理されていたと思う。村山の声掛けからも外へ追い込んでコースを限定し、それを嫌ってロングボールが出てきたところを奪う狙いは見て取れた。SHが出ていけばSBは1列前に行く、出なければ前線が2度追いするというルールがあったはず⇩

奪いどころ

少なくともこの時点までは戦術はあった。試合を見ていれば分かるように「なんとなく」のプレスで上回れる相手ではない。序盤にあった8分の阪野→セルジのシーンなどシュートチャンスを決めきれていればまた試合は違ったものになったかもしれない。

ただ序盤を見返した時にこの時間帯からフリーでのクリアミス、パスミスがここ数試合と比べても明らかに多かった。ハマっているのにまた相手に渡してしまうというシーンが多く、リズムが作れない。「受けられる選手がいない」状態ではなく、明確に「受け手と出し手の意図が合っている」のに合わないというのはもったいなさを感じた。

1点目も相手の最終ラインが出しどころがなく、ロングボールを選択させて常田の方が有利な体制にいたにも関わらず、これが相手に渡り、入れ替わりのような形になって3対3の状況を作られている。

■明らかに違った不測の事態への対応

そして、徐々にまずさが見え始めてきたのは左サイド。

崩され

セルジと髙木利のところでプレスに行くのか行かないのかが定まらず、「ルール外」のことが起きる。今日の失点のほとんどがそうだが、ディフレクションやクリアミスなどルール外のことが起きた時に今のチームは非常に弱い。このシーンでいうとセルジがどうするか後ろは指示していないし、髙木利は間に合わなくてもルール通り出ていくし、CBもそのストッパーになれていない。

ルール外や不測の事態はサッカーには付きもので、逆に琉球にとっても8分の阪野のカウンターのシーンは不測の事態だった。だが、阪野に対応した李栄直は自分がポジションを空けるのと同時に味方にそのスペースを埋めるように手で指示している。9番をつけるほど攻撃で特徴を出すことを得意とする選手だが、そうした最低限の「声掛け」や「味方への気遣い」を見せながらプレーしている。

カルバハルもそう。琉球は試合前までは最多失点に並ぶほど失点の多いチームであり、「点を取られても取り返せばいい」というメンタリティでチーム作りをしている。しかし、そうした監督のスタイルの範疇を超えて失点で激昂していた。山雅でそうしたアクションを起こす選手はごくわずかで、よりがっかり感を感じざるを得ない。あくまで監督の考えの範疇を超えないのだ。反町監督に反逆した(?)本田圭佑ではないが、まだ選手が勝手にチームを作り出すほうが潔い。

■戦術ミスでもあり、戦略ミス

しかし、この事象については布監督の見込みの甘さもあった。良い時はチャレンジして悪い時はやり方をシンプルにするという、ある意味一貫性のあるアプローチの仕方をしており、それによる選手の台頭はあるがそれによって戦術面は理解が浅く、ないがしろになりやすい。

今日もベスト布陣というよりは大野の右SBや常田の起用、山本龍・榎本のベンチ入りなどこの勢いに乗って、大胆な手を打ってきた。恐らく中2日で迎える徳島戦にむけてのメンバー選考でもあっただろう。

ただ、この戦略は大失敗。4枚交代にも表れているように恐らく布監督もこのミスは感じただろう。賛否はあったが、交代枚数自体は理解できる。ひっくり返すにはこれくらい「ありえない」劇薬は必要な状態だった。その手前でそれだけの悲劇を招いたことが全てだと思う。

戦術ができていない選手を使う監督の責任というのが1つ。これは事実。ただ今日の負けは「選手への期待とチームの成長のためにこの選択をした監督」よりも、村山の言葉を借りるなら『「どうせ試合に出られるだろ」と思っているのかなという感じ』に取れるプレーに憤りを感じた。

■結局大量失点の要因はなんだったのか

そして、なぜここまでの大量失点を喫したのか。当初のチームのやり方としてはここ数試合とそこまで変わってない。なので「それが実現できるメンバーだったのか」「失点後もそれで良かったのか」という疑問はあっても、そこについて手のひらをクルクルとするつもりはない。

長崎戦と違ったのは大きく2つ。

・琉球のボールを受ける意識と連動性

崩し

まずは縦関係になる松本DHの連携を上回る琉球の中盤のポジションチェンジとボールの引き出し方のうまさ。2枚VS2枚という数的には互角であったが、常に受けられる位置に顔を出す市丸・小泉を捕まえきれていなかった。前節ルアンに苦戦したが、カイオはそれほど動き直しはなかった。そこが今回は動く小泉・市丸+その二人を支える上里という組み合わせにやられ続けてしまった。

・守れなかった約束事

それよりもまずかったのが「最終ラインの下がり癖」。あまり名指しをしたくないが、ひどい時には常田一人だけなぜか残っているという最悪の事態になっていた。

最終ライン

以前の必ず1人が余る3バックとは違って1つ穴が空くと即致命傷である。前に出て入れ替わられるというのは最悪想定できるとして、全員が取りに行っているのに全くプレッシャーに行くことなく、前を向かれてしまうというのはこの守備のやり方では通常ありえない。これが何度かあったので非常に頭が痛かった。こうしたちょっとした甘さの繰り返しが大量失点に繋がっている。

■布監督の解任はあるのか?

さて、前半戦の最後で過去に例を見ないホームでの敗戦を喫してしまったが、まだリーグ戦は続く。ちょうど半分ということで「解任」の話も現に出てきてしまっているが、はっきり言って『解任されても仕方がない』成績・内容になってしまっている。

その上で個人的には解任にはあまり気持ちが向かない。というのも解任することが目的になろうとしている今の状況はクラブとしては健全ではない。監督交代を繰り返すことになりかねないし、某チームより金も人脈もない。目的やその後のビジョンを明確にして初めて解任という手を打つべきである。

まず懸念点は後任。この点について論じている人はそれほど目にしない。こういう場合、繋ぎの監督としてOBを添えたり、内部事情を知っている前監督・コーチに任せるのが一番スムーズだが山雅にはそれがない。西ヶ谷監督を昇格させるとなるとここ数年力を入れてきた育成もないがしろにする、まさに「目的のない人事」になってしまう。

加えて今の状況。布監督が巻き起こしたことという面もあるが、どちらかというと大幅な刷新・急な日程変更・怪我人の大量発生による悪循環の影響でやりたいことができていないという側面が大きい。次の監督が来たとして「力を発揮できる環境」「サポートが厚い環境」とは言い難い。

それならばもう半年様子を見て、それと並行して来季に向けて新卒を探すなり、編成を組んだりするほうが有益に感じる。スポンサー離れ、サポ離れは確かに避けたいが、何より最悪なのは来季以降同じことを繰り返すことである。まだ見ぬ監督のためにこの時期に違約金を投じるくらいならクラブは誠意を見せてスポンサーを繋ぎ止め、サポーターはチームを信じて支えることを選びたいと思う。

今後チームがどのような道を選ぶか、続投派も解任派も理解はできるし、どちらに転んでも不思議ではないが、解任という「結果」よりクラブがどのような「ビジョン」を打ち出せるかが重要になってくる。

■後半戦に向けて

ということで様々な意見が飛び交っているがリーグ戦は待ってくれない。サポーターも本当に苦しいシーズンになっているが、同じ山雅サポーターや選手に「ここにいたくない」と思われてしまい、離れ離れになることはあってはならない。「来季こそは!」という気持ちにさせなければ本当に終わりに近づいてしまう。逆にそれさえあればスポンサーも一度離れたサポも戻ってきてくれる。

この成績でみんなで一つの方向をというのは難しいことだが、チームのために何ができるか思考することは大事にしたい。思考するために一度休むのも良い。辛い時期でも1人1人が歩み寄っていくような気持ちは大事にしていきたいと思う。

END

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